夜行観覧車

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575236941

感想・レビュー・書評

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  • 高級住宅地「ひばりヶ丘」
    娘の狂ったような癇癪で内側はボロボロになっている遠藤家。
    整った外見と素晴らしい内面を持ち合わせた高橋家の人々。

    ある日、高橋家で殺人事件が起こる。犯人は母親。被害者は父親。

    高級住宅街で起こった事件に、マスコミは盛り上がり、高橋家に嫉妬していた遠藤家も興味津々。
    遠藤家の隣人、小島さと子もおばさんパワー全開。

    残された高橋家の子どもの出した答え。
    高橋家に便乗して答えを出した遠藤家。
    自分の価値観に従う小島さと子。

    ひばりヶ丘でそれぞれの夜が明ける。

    --------------------------------------------------------

    遠藤家にすごく人間味を感じた。
    家のなかで暴れることで自分を保つ娘、彩花。
    ステータスに執着する母、真弓。
    壊れる家族の前に無力な父親、啓介。
    自分よりものしか叩けないし、自分より優れたものが壊れていくのが気になってしょうがない。これぞ人間の嫌なところ!と言った家族。

    家族内での殺人事件、最終的に高橋家の出した答えは単純にすごかった。
    生きてる者を優先させる行為。
    母親を減刑させるために、父親に汚名を着せるのはなかなかの発想力。

    小島さと子は結果的に遠藤家を救ったけど、高橋家への対応がふわふわしていて一貫性がなかったように思ってしまった。

    なんていうか、出てくる家族みんな狂っている。

    遠藤家が全然救われないのはよかった。
    壊れてしまったものが簡単に直るはずがない。

    読み終わってからずっと考えてたのは、当事者である高橋家の母親が捕まっているので、全て推測にすぎないということ。
    息子の教育方針についての夫婦の意見の違いも、息子と遠藤家の父親の証言でしかない。

    きっとこうだよ!信じられないけど、そうかもしれない‥‥間違いないよ!と推測で話を進めていく、登場人物が一番怖かった。滑稽にすら思えた。

    この小説のMVPは高橋家長男の彼女、明里。
    圧倒的に狂った価値観で物語のなかの異常な世界観をリードしていたように思う。最高に狂気。

  • 『告白』以来の湊かなえさんの作品を読了。

    エリートという設定、血がつながっていない家族の関係性や
    「手術室」などという単語が出てくるあたり、
    きっと元ネタは2006年に起こった『奈良自宅放火母子3人殺人事件』だろう。
    この事件では、放火事件の他にも、
    原則非公開の少年審判や、少年の供述調書が外部に漏洩し、
    それが出版されたりして騒ぎになった事件でもある。
    どこにでもある一家の詳細なプライバシーがズタズタに暴かれ晒され、
    あることないことを書き立てられた事件として記憶している。

    あと、著者は2007年に発生した
    『渋谷区短大生切断遺体事件』も参考にしたのではないかと思った。
    この事件は、身内をバラバラに切断するというその猟奇性もさることながら、
    両親が被告である次男をかばって、
    被害者である長女を批判したとも取れる手記を発表して物議を醸した事件でもある。
    両親は裁判でも検察側証人ではなく、弁護側証人として出廷して当時話題になった。
    この事件もまた、こぞって騒ぎ上げられた痛ましい事件である。

    登場人物の醜悪な内面の描写が剥き出しにされるのに加え、
    今作はミステリー要素の部分は少なく、
    代わりに家族の崩壊と再生が大きなテーマになっている。
    著者の作品に頻繁に登場する謎解き要素もどんでん返しもないため、
    肩透かしをくらったように感じる人もいるかも。

    ある出来事をきっかけに、
    家族をめぐる人々の本音と真実が暴かれてゆく展開は、
    サム・メンデスの『アメリカン・ビューティー』を連想させた。

    正当化、責任転嫁、コンプレックス、恥、世間体。
    登場人物は自分で処理しなければいけないことを己の弱さのために、
    すべて他人のせいにして受け止められずにいる。
    そういった自己中心的な登場人物の心理や行動に嫌悪しつつも、
    自分が同じような状況におかれた場合、絶対にしないと誓えるかというと、
    そうとも言い切れないところに己の心の弱さを自覚する。

    最後の記事は、裁判で証言された部分をもとに書かれた記事だと思うし、
    それから推測できることは、裁判で世間に真実を明らかにするよりも、
    残された家族で力を合わせて生き抜いていくほうが大切だと決断したということに
    著者の作品では珍しい、かすかな希望が描かれている。

    「どんな感情を持っていても、家族であり続けなきゃいけないんだから」
    「そうだな。家庭内の事件に、他人の裁きはいらない。
     事実のみ、俺たち家族だけが知っていればいい」(p.326)

    帯にあった松たか子さんの言葉、
    『息もつかせぬ展開の連続だった。家族が摩擦を起こしながら、
     それでも家族であり続ける姿は、胸が痛むほど美しい。
     家々に灯るあかり、それは希望そのものだ。』は、素晴らしい感想だと思った。

    「ラメポ」はドラマでは夏木マリさんが演じているんですね。
    自分は白石加代子さんをイメージしながら読みました。
    あと、装丁がいい仕事してますね。家族の繊細さがうまく表現されていて。
    スピンが2本あった理由は、最後までわからずじまいでした。

  • 正直そこまでめちゃくちゃ面白いわけじゃない。
    むしろ。

    劣化版告白なのか?

    とか思う気もする。
    それでも。
    でもでも。
    続きが気になりまくって。
    移動中もずっと読んでた。

    時間が開けば。
    手が開けば。
    目が開けば。
    気がつけば。

    読んでた。

    そして家族についてとか。
    他人についてとか。
    色々考えさせられたんです。
    ただ単に家族が大事とか。
    そういうことじゃなくて。

  • 登場人物すべてに嫌な感情を持ちながら読んだ作品。

    絶対、自分の家族はこうなってはいけない! と思わざるを得ないストーリー。

    小説としては、湊かなえ調全快の面白い作品です。

  • 本の内容
    父親が被害者で母親が加害者—。高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と、向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。『告白』の著者が描く、衝撃の「家族」小説。

  • 記憶にない

  • 「告白」の次に読んだ湊かなえさん。物語に連れられながら気付いたら一気読みでした。スッキリという感じの終わりではなかったけど、小説としての満足感が高かったです。でも父•啓介の終盤はなんか良かった、、、

  • 冬休み10冊目
    読む手が止まらへんかったさすが湊かなえさんドロドロしてた

  • 『告白』『白ゆき姫殺人事件』以来、3冊目の湊かなえさん。

    坂の上にある高級住宅街、ひばりヶ丘に念願の一戸建てを建てた遠藤家。中学受験に失敗した一人娘の彩花はたびたび手のつけようもないほどの癇癪を起こすようになっていた。そんなある夜、遠藤家の向かいの高橋家で、ご主人が奥さんに殺されるというセンセーショナルな事件が起こる…。

    イヤミス、苦手なのに装丁に惹かれてついうっかり借りてしまいました。出てくる登場人物それぞれに人間の嫌な面が描かれていて、読んでいてかなり胸が悪くなるんですが、事件の真相が気になって一気読み。

    遠藤家も高橋家も普通の家庭で、ただちょっとだけ歯車が噛み合わず、そこからじょじょに歪んでしまい、ついに決壊してしまう…。フィクションですが、完全には他人事とも思えない、きっかけさえあればどこの家庭に起こってもおかしくはないんじゃないか、そんな風に感じてしまうほど生々しかったです。

    イヤミスが癖になる、という人たちの気持ちもわかりますが、やっぱり私は苦手でした。でも物語の展開としては魅力があり惹きつけられてしまったことも確かなので、また懲りずに読んじゃうかも?

  • 高級住宅での新しい生活での閉塞感。ご近所問題、親子関係、学校、主婦の付き合い、父親の仕事の上下関係、全ての人間関係が絡まり、息苦しさすら感じますが、ラストは作品名の観覧車が大きな意味を表しています。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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