- Amazon.co.jp ・マンガ (103ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575297447
感想・レビュー・書評
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8月に入り猛暑が続きます。今も外は雷と大雨。
70年前の昭和20年8月6日、その日も暑い日であったと聞きます。戦局は既に大勢が決まり、何のための原爆による無差別な破壊であったのか。戦後の体制を見据え、終結をただ急ぐための惨禍。多くの人が今も苦しむ歴史の事実を忘れてはいけない。
随分前に読んだ、こうの史代さんの作品。戦争当時から2世代の家族のそれぞれの人生。戦後広島の夕凪の街に生きた皆実と、今の東京、桜の風景に暮らす七波。広島出身のこうの史代さんが、独特のペン画の細いタッチで描いています。「この世界のかたすみで」と同じく、視点は過酷な人生にも、生きることに正直な人々の姿。
「荒神」も今月末には出版されるようです。こうのさんのカットが入ってることに期待!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私の中で、何度も戦争はいけないことだと思っていたが、ここまでそれを強く思わせてくれた作品はありませんでした。また、私の思いが、実は遠い過去の出来事であることから、逃げていたことも実感いたしました。
「夕凪の街」を読んで、想像を絶する恐ろしさを感じ、一瞬でも読まなきゃよかったと思った自分に不快感を抱きながらも、「桜の国」を読んだ後は、少し落ち着いて、あれこれ思いを巡らせる自分がいました。
原爆投下については、自然現象ではなく、あくまで人間が引き起こしたものであることを再実感したときの絶望感は、なんとも筆舌に尽くしがたい、哀しくてやり切れないものがあり、生き残った人たちも、それの影響を間接的に受けて生きていかなければいけない思いは、如何ばかりだったのだろうか。それを、この作品では、登場人物たちの一見、明るい雰囲気を見せながらの、内面での葛藤や思いを吐露する形で、教えてくれます。
ただ、その後の世代における辛い中でも、ささやかな和みや幸せを感じさせたエピソード(特に、七波の両親の結婚へのやりとりは涙ものでした)や、ヒロシマとの向き合い方には、家族という、思いを受け継いでゆくものの生きる姿を、まざまざと見せられた思いでした。
以下、印象に残ったというか、心に刻もうと思ったフレーズを掲載しますが、ネタバレを気にされる方はご注意下さい。
誰もあの事を言わない
いまだにわけがわからないのだ
わかっているのは
「死ねばいい」と誰かに思われたということ
思われたのに生き延びているということ
嬉しい?
十年たったけど
原爆を落とした人はわたしを見て
「やった! またひとり殺せた」
とちゃんと思うてくれとる?
あんた被爆者と結婚する気ね?
何のために疎開さして養子に出したんね?
なんでうちは死ねんのかね
うちはもう知った人が原爆で死ぬんは見とうないよ
母からいつか
聞いたのかも
知れない
けれど こんな風景を
わたしは知っていた
生まれる前
そうあの時 わたしは
ふたりを見ていた
そして確かに
このふたりを選んで
生まれてこようと
決めたのだ -
広島における、被曝者とその周辺から始まる物語。
やさしいタッチで、穏やかな日々が描き出されていると、思います。
それだけに、どうしようもない成り行きが、
どうしようもなく、せつなく伝わってきます。
物語の軸は二つの時代、被爆者とその次の世代。
被曝されて、早逝した人も、長生きした人もいる。
その生き方や在り様を、一つの枠組みだけで語ることはできない、
そんな風にいったら、戦争を知らない世代の傲慢でしょうか。
子どもに読ませるのであれば、こんな優しいけど哀しい、
まっすぐに伝わってくる物語がよいと、そう感じます。 -
読み出すと…息を吸うのを忘れ…ただただ幸せを願う気持ちになる。
年月が過ぎると表面ばかりが残る…忘れてはいけないのは中身である。
一瞬に当たり前がなくなり蓋をされ無理やり消されそうになる。蓋を外して捨てて光をあてないといけないものもあるのだ。
何度も読み返す必読本。
ぜひ〜 -
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こうの史代「ヒジヤマさん」新作公開&旧作の新装版がコアミックスから刊行決定 - コミックナタリー
https://natalie.mu/co...こうの史代「ヒジヤマさん」新作公開&旧作の新装版がコアミックスから刊行決定 - コミックナタリー
https://natalie.mu/comic/news/4671112022/02/26
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『この世界の片隅に』を読んだ後に読みました。描かれたのは、『この世界の片隅に』よりも前のようですが、『この世界の片隅に』のエピローグ的な時間軸の話です。
広島や原爆の話は、日本人であれば誰しも学校で教わりますが、本当に「知っている」かと言えば、疑問があります。
「あとがき」に書かれているように、広島以外に住んでいる人や、広島にいても身近でない人にとっては、それは「よその家の事情」だったと思います。私自身も、今までの人生で関わることはなかったので、実際に他人事でした。
しかし、世界の中で見た時、日本人として、唯一の被爆国の住人として、それは知っておくべき物語だと思いました。
特に、原爆が落とされて何年も経ってから始まる物語もあります。
本作品としては、『この世界の片隅に』よりも前に描かれていることや、ボリュームも少ないことから、日常の風景やストーリーの描き方としては、若干、『この世界の片隅に』の方がよい気がしました。
それでも、「夕凪の街」と「桜の国」の関係や、人間一人のどうしようもなさなど、「社会」の中で生きる人間が「世界」と直面した時の体験が伝わってきます。
日本人であれば、『この世界の片隅に』と合わせて読むべき本だと思いました。 -
ヒロシマ・ナガサキ。。。忘れてはならない記憶。それでも一生懸命(時には軽やかに)生きる人々。もっと何回も読み返したいと思った。
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のんびりとした空気の中進む物語に、すごくリアリティがあって、悲しかった。先の大戦での悲劇が、今後二度と繰り返されないことを切に願います。もう、当時を知る人は本当に少なくなっていて、語り継ぐことはむつかしいと思うけれど、こういう物語をとおして、次の世代の何人かでも忘れないでいてくれたらと思います。
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第二部の主人公の明るさと前向きさ、父親のとぼけたさまがなんとも良い。作品中で断片的に描かれるこの父親の物語こそが、静かで真摯なお話の真ん中にある。