- Amazon.co.jp ・本 (63ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582833621
感想・レビュー・書評
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「ルリユールおじさん」「大きな木のような人」「絵描き」に続いて読みました。
これらは作り話ではなく、どれもが伊勢英子さんご本人の体験から湧き出てきた物語だったのですね。
絵本だけでは描き切れなかったルリユールおじさんの話が満載です。
どれだけルリユールおじさんに魅了されたかが伝わってきます。
最近出版された「旅する絵描き タブローの向こうへ」も読もうと思いますが、しばらく楽しみに取っておきます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大好きな伊勢さんのエッセイ風物語。登場する主人公は男性の想定になっていますが、伊勢さんそのものでしょう。絵本になっていないスケッチも多数掲載されています。手紙の相手Yとは誰か?
伊勢さんはフランスの街並みを舞台に、多くの作品を描かれています。「ルリユールおじさん」「大きな木のような人」「あの路」これら作品の背景が旅人の物語として、絵本のシーンとともに描かれている。
伊勢さんを魅了したアカシアの木はどんな姿なのだろう。街角に佇む3本足は実際に伊勢さんが出会った存在なのだ。「にいさん」で描かれるゴッホの暮らした世界もそこかしこに見えてきます。
Relieurおじさんから言われた「いつか君もここで展覧会をやりたまえ」、この言葉通りに伊勢さんは、柳田邦男の企画協力で絵本の作品展を開催している。
絵本の創作過程を描いた「Pocess」も素晴らしかったが、本書もまた別角度で創作過程の心象に触れることができ大変面白い。一度はフランスを旅してみたいなあ。アカシアの木はずっと待っていてくれるだろう。 -
「ルリユールおじさん」の作者の伊勢英子さんのエッセイのようですが、主語は「ぼく」であり、Yへの「パリからの手紙」の形式になっています。
直接的な語り口調ではないからか、実体験が元になっているとはいえフィクション的な感覚でこの本を愉しむことができます。(ノンフィクションに近いフィクションということです。ややこしくてすみません。笑)
画家ドラクロアの「ヤコブと天使の闘い」、その作品と同じテーマで描いたゴーガンの作品に対し「観察がない」と怒ったゴッホ。ショパンや画材屋のおやじのタンギーじいさん、画家の視点で切り取られたパリの空気が便りにのって届いてくるようです。
巻末の「ルリユールおじさん」のエスキス(スケッチ)に、とても和みました。 -
(あっ…)
と、心をつかまれた瞬間、
人は誰もが画家になっているんだと思う。
ただ、
そのときめきを白いキャンバスの上に描くだけの技量があるか、どうか。
それがある人は『絵描き』と呼ばれ、
形にも、言葉にもならない天使達を捉える使命を担っている。
本書の中の絵描きを、
私は良く知っている。
パリを旅するその絵描きの心を捉えた天使達とは、
以前にも彼(?)の画集の中で見かけた様な気がするからだ。
古い窓越しに見たその風景。
美しい本が並べられたその奥で、
一心に本をかがっている白髪の老人。
アカシアの樹の絵、
三本足の黒い犬。
何を美しい、と感じるのかは、
人それぞれであるが、
私はこの絵描きさんが大好き。
久し振りに出会えてとても嬉しかった。 -
絵本作家、いせひでこさんのエッセイ。
ルリユールおじさんの仕事ぶりに魅せられ窓の外から店を眺めていた僕。
そんな僕におじさんは扉を開け優しく「見るか?」と言ってくれた。それが二人の出逢い。
フランス語の発音が難しいため自己紹介がうまく出来ない僕が旅のスケッチ帖を見せるエピソードが好き。言葉は通じなくてもその絵はきっと僕の気持ちを伝えてくれたはずだ。
優しいおじさんとの交流、ドラクロアやゴッホへの憧れ、背中を押してくれた3本足の犬、日本とフランスの美術や文化に対する考え方の違い、未公開スケッチ等、大満足の1冊。 -
〝どこにも属さない〟ために旅を続ける若い画家が、パリの裏通りの何の変哲もない一つの窓に魅せられ、しばらくの間アパルトマン暮らしをはじめ、その日常を綴ったお話です。窓は本の製本を生業とするおじいさんの工房のものでした。
物語は画家である〝ぼく〟から友人Yへの手紙という形式をとっています。手紙に添えられた水彩スケッチは、パリでの日常を淡々と綴った詩のように美しい文章にぴったりでした。
同じ場所で何十年も古書と向き合う老人、前足を失った三本足の野良犬、スケッチブックを抱え、あてのない旅を続ける若い画家・・・簡潔な文章に人生の機微が垣間見えました。
べそかきアルルカンの詩的日常 http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2 -
美術史を専攻した姉がある日、この本をプレゼントしてくれた。「きょう、リブロで買った本です。」とのカードと共に。「イセヒデコさんという画家が好きなので買ったのですが、ルリュールのことがちょっと出てくるのであげます。少し心が静まる本です。お茶の時間に紅茶といっしょにどうぞ。」と書かれていた。嬉しかった。大切な1冊になった。姉にはどんな本がいいだろう。選ぶのが楽しみ:)
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10代の頃のパリへの憧れがまた強く胸に迫ってきてしまった。
サンジェルマンデプレを、セーヌ河岸を、カルチェラタンの街を歩くぼく。
Yよ、元気かい。と、まるでゴッホのテオへの手紙のようにつづった日記。完成された挿絵、スケッチ、エスキス、あの大きな木。いせひでこさんの絵本の世界が、こうした旅の中から生まれたんだと胸が熱くなる。
パリの美意識。ショパンは「フォルテッシモで悲しみを打つ」 -
絵本「ルリユールおじさん」のルリユールおじさんとの出会いを書いたエッセイ。時々挿絵もあるが、ないシーンについても言葉から伊勢さんの絵で風景が頭に浮かんでくる。