ライフ

著者 :
  • ポプラ社
3.80
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本棚登録 : 1238
感想 : 163
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591162903

感想・レビュー・書評

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  • ただ淡々と話しが進んで行き、何の事件も起きずにエンディングまで行く感じ、嫌いではない。
    年々、毒々しい話しが読めなくなって来た自分には丁度良い作品。

  • なんのメリハリもなく、話が終わってしまい拍子抜けでした。

  • 地味な町で地味な人たちが地味につながっていく。よいことだ。ひとり暮らしを含めて30年間、借家住まいを転々として分かった。子どもが小さい時だけは、近所と繋がれるもんだ。

  • 主人公が参列する結婚披露宴のシーンから、
    物語は始まります。
    おめでたいことですが、
    主人公はハッピーな気持ちではありません。
    つつがなく式が終了することだけを考えています。
    彼にとっては新郎も新婦も赤の他人。
    代理出席の会社から派遣され、
    アルバイトとして出席しているのです。
    新卒で入った会社を二年で辞め、
    次に入った会社は半年しか続かず、
    今はコンビニのアルバイトをして暮らしています。
    足りない生活費を補うため、
    時々、代理出席のアルバイトをしているのです。
    副業として金銭的なありがたみはありますが、
    アルバイトの間中、
    どこか居心地の悪さを感じています。

    どんなに豪華な式であっても、
    どれほど温かな会であっても、
    その場において彼は、
    ”何者でもない誰か”に過ぎません。
    数合わせのために、
    ただそこに居るだけの書き割りのような存在です。

    そんな彼が、
    他のだれでもなく自分を必要とする仲間を得て、
    自分が自分で居られる場所を見つける物語です。
    この物語が面白いのは、
    主人公が特別な才能を発揮したり、
    特別な出来事に巻き込まれたりするわけではなく、
    ごくごく普通の日常でそれを掴んでいくところです。
    特別な何かができるから、
    特別な何かを持っているから、
    という訳ではないのです。
    彼という存在そのものを認めてくれる人、
    発揮できる場所に出会う物語です。

    主人公が偉いと思うのは、
    人生のちょっとしたつまづきに対して、
    無闇に慌てふためいたり、
    焦って無謀な行動に出ないことです。

    誰しもちょっとしたつまずきをすることがあります。

    転職先や異動先の同僚と馴染めない。
    思っていた仕事と違っていた。
    楽しそうだと思って始めたのにそうじゃなかった。
    お金を損しちゃった。

    そんな時、つい自暴自棄になったり、
    あるいは自分はダメな奴だと卑下したりしがちです。

    主人公は淡々と日常を送っているように見えます。
    いつまでもアルバイトのままではいけない、
    という想いを抱えながらも、じっとしています。

    そこにチャンスがやってきます。
    変化のきっかけです。
    幸運の女神が手を差し伸べてくれるのです。

    ここでも面白いのは、
    そのきっかけは一見、女神の顔をしていないことです。
    むしろ逆の顔でそっと近づいてきます。
    普通なら見逃してしまうかもしれませんが、
    彼は自然体でその流れに乗ります。
    少しずつ少しずつ彼の世界は変わっていきます。
    心持ちが変化していきます。

    苦しい時こそ、辛い時こそ、上手くいかない時こそ、
    「日常力」とでもいうような力が試される気がします。
    日々を変えるために、
    必死であがくことも必要だと思います。
    ただ人生は長期戦。
    ひとつずつ積み重ねるしかないようです。

  • 4.1

  • 大学を出て新卒で入った就職先は2年で辞めた。すぐにみつけた次の転職先も半年で辞めた。以後コンビニでフルタイム、時々結婚式のサクラと、アルバイトで糊口を凌ぐ井川幹太はもう27歳になった。江戸川区平井のワンルームアパートに大学時代から住み続けて8年半。かつて同じアパートに住んでいた大学の同級生たちは、みんな転居していった。「またいつか集まれる」とみんな言うけれど、そのいつかはたぶん、もう来ないと思う。
    誰かの彼氏や夫、父親、息子、どこかの企業の人、何かを成し遂げる人、夢を追う人。どれにもなりきれず茫洋と生きる幹太。しかし彼の周囲は、静かに確実に変わっていく――。

    大事件は起きない。小さな事件も起きない。不条理な悲劇もない。価値観をがらりと変える刺激もない。自分に合う会社や仕事に巡り合えず、アルバイト生活のまま20代の後半を迎える青年の生活を淡々と描き出していくこの作品、それでも、それだからこそ、読んでいて思わず頷く、共感してしまうエピソードが満載だ。
    幹太は就職先を決めるにあたって、とりあえず「パンが好きだから」という理由で第一志望の大手製パン会社に就職したものの、配属先でキツい上司にあたり、それが原因で辞めてしまう。もう好きなものに関わるのはよそうと、すぐに見つけた次の就職先は家電量販店だが、そこの上司には「普通、興味のない会社には入りませんよ」と言われ、「好きなものを仕事にしたくない」とも言い返せずに半年で辞める。
    一度目は上手くいかなかったからと、考え方を変えて間を置かずに動いたことが裏目に出て、二度目の退職の後は身動きが取れなくなってしまう。
    どうすれば良かったんだろうね。会社は何を求めて労働力を採用するんだ、何を基準に人を選んでいるんだ。わからないまま自信も気力もなくし、気がついたら年を取ってる。あるあるです。しかしまだ27歳で何を言ってるんだ小僧! 30代40代でそんなんなってるやつは今の日本にいっぱいいるのだ。
    それはさておき、そんな幹太君、8年半も同じ場所に住んでいると意外に顔見知りになる人も現れる。同じアパートの上階の人、両隣の住人、近所の高校生、たまに行く喫茶店のおばちゃん。それはみんな良い人たちで、でも、そうやって他人を知っていくほどに、幹太の生活は穏やかながらも揺さぶられて、やがて新しい一歩を踏み出していく。その幹太君の背中がリアルに感じる、気分はもう近所のおばちゃんである。
    私なんてスパイものとかハードボイルド・アクションとか、ミステリとか、歴史ものや戦記物ばっかり読んでるから、何も起きない日常系の読み物なんてつまらないと思っていた。けれどそれは間違いだった。何も起きない、ごく普通に見える人生のなかで起こるいろいろな出来事――子育て、夫婦や友人の間の関係、彼氏彼女の事情、そして仕事でおこる様々な問題はどれもこれも結構ヘビーなものなのだ。普通の人生、実は相当ハードモード。この『ライフ』に出会って、気づいてしまった。

  • 2019年本屋大賞第2位

  • 平和なんだけど、なんとも言えない感じの小説でした。
    やっぱアパートの一階にも二階にも住みたくないな?とは思ってしまう、騒音問題。

  • 人は他人には一般論を言う。

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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