ライフ

著者 :
  • ポプラ社
3.80
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591162903

感想・レビュー・書評

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  • 「タクジョ」が面白かったのでソッコー別タイトルをリクエストした。今回もめちゃくちゃ面白くて、イッキ読み。

    「めちゃくちゃ面白い」というのとはまた違うというか…。笑
    面白いんやけど、破天荒やったり奇想天外やったりして
    「続き、どうなるん!?」
    と、ページをめくる手がはやる、てわけではないねん。

    んもうひたすら、じわりじわりとページをくっていく感じで、もちろん面白いし着地点が気になるし。
    文章が読みやすいからまたそれもいいのよね。文章もめっちゃ癖になる。ツイートするときとか、モロに影響を受けちゃうけど、いいわあ。著者の文章。書いてて気持ちがよさそう。歯切れがいいというか…。

    そんな具合にじわじわはまっていって、結局この本のテーマは何なのかっていうのが終盤で明らかになったときに
    「これかーッ!」
    ってそれはそれで、じわじわきた。

    変な話、「何もない」のがテーマなのよね。いやいや、それも奇をてらっているわけではなく、「何もない」のが悪いわけでもないし、他人や一般的な評価で「何もない」からってほんまに「何もない」わけではないねんな。

    この本が刺さる年代ってどのあたりなんやろう。
    44歳のわたしは、「ははあなるほどなあ」と思ったし、いいなとも思ったし、穏やかな生活も人もめちゃくちゃ憧れるからなあ。

    しみじみ、自分のペースと正義を大事にしていこう(それらがちゃんと受け入れられるものであるということが前提やけど)と、思った。

    こういったじわりじわりくる内容の本って、わりと流行ってるのかな。
    わたしは好きよ。穏やかに読めるし、いいなと思う。

    さらに著者の何がいいかって、主人公が不必要に尖ってないのもいい。矜持はあるけど、不必要に尖ってはいない。

    もしかして今の若い子って(10代後半ぐらい)こんな感じなのかなあと思う。そうやったらとてもいいなとも思う。

    人生が長くなったのに、すごく急かされてる気がする。
    それはうちの子どもらを見て思うことやけど、わたしらの尺度で子どもらをはかるから、いろんなことに振り回されてる。

    わたしらはわたしらが子どものころよりも情報量が多くて、だから少しでも子どもがよりよく生活できるように、早くやりなさい、決めなさい、やるなら極めなさいってつい思ってしまう。

    でも、わたしらが子どものころはそんなことは言われなかったし、最近ふと思うのは、わたしが20代の社会人になりたてのころに要求されていたことも、今は子どもに要求してる気がするなあと。

    もう少し、子どもらに自分で考えさせる時間を与えてあげたいな。
    やりたいことなんてなくてもいいし、わかってなくてもいいのよ。でも今の子どもって、そんなの許されていない気がする。

    それだけに、この本はかなり「ぐっ」て刺さったなあ。

    これはわたしじゃなくて、わたしの子どもに対して刺さったわけやけど(もうわたしは、やりたいことに追われることも、自分を特別にする必要もないので、気楽な身分なのよ)、どの年代の人が、この本を読んで
    「せやなあ」
    って思うんやろ。

    せやなあ、って刺さるのなら、(いい意味で)まだまだ若いってことやと思う。いいと思う。大人が決めた「やったほうがいいこと」や「ここまでできたほうがいいこと」なんか早く見限って、自分は何をやりたいのか早く考えられるようになったらいいと思う。

    それがどのくらい生産性があるのかとか、それをしてどうなるのかとかは、意味とか理由なんか、やってみてからの話やと思うのは、まあ、わたしも昭和な人やもんな。笑

  • 人生だな。アパート住まい、コンビニバイトの井川を軸に
    上の階の戸田さん一家や隣人、ご近所さんと知り合っていく。自分の生活や親のことなんかを考えるようになったり。
    そして新しい一歩を踏み出す。
    アパートの一室にいながら、人は支え支えられ生きていくものなのだ、と、しみじみ感じる。
    特別大きな出来事が起こるわけではないけれど、人生の断片を読んだような感じ。
    作中、人の名前を細かに表現しているけど、それは一つのシンボルというか、名前の紹介で本書の登場人物うの一人一人に存在感…命を吹き込んでいるのだろう。
    すっきりとした読了感。良い本でした。

  • 白い心の幹太くんの今後に幸あれと祈ってしまう。
    人はただ淡々と真面目に生きているだけなんだけどそれでも小さな(大きな)ドラマチックな日々を送る。

  • なんか、よかった。
    何者でもない、特別な人間でない、それでもいいんだ、って素直に思えた。

  • 読みやすい文章と理知的で感情の安定した主人公に安心して読み進めることができる。
    こんなふうにしっかり生きていければ。

  • 「ひと」に続き二作目。淡々としたストーリー。大きな展開もない。なのに惹きつけられる。小野寺さん好きだ。

  • 何かを頑張っている訳でもなく、頑張りたい訳でもない。それでもライフという時間は流れ、周りの人も流れていく。
    そんな中に身を置く青年に、読んでいて何故か好感を持つ。
    特別な事はなくても普通の時間を過ごせる大切さかな。
    なんか心の癒される一冊。

  • 永井寛哉、という名の「新郎の中学時代の友人」という役で結婚式に出席中、新婦友人席から高2のクラスメートに声をかけられた。周りにバレては困るから外へ出て一応事情を話し、後で二次会なしにお茶して話す井川幹太の近況はー

    ◆仕事続かないからよほどブラックな会社に当たったか人嫌いかと思ったら井川幹太、なんて天然人たらし!明るいばかりの過去ではないけど。住み始めた時は同じ大学の気心知れた友人ばかりだったアパートも、住む人が変わり自分だけがそこにいるけれど、44歳パートの大下さんと仕事するのは楽しいし、2階の住人の足音のうるさいがさつさを1年半も耐えたかと思えばたまに来ていた子供がドアにぶつかったのをきっかけに別居の事情や子供預けられるまでに信頼されるし。時間外のゴミ出しで隣の中条さんとも知り合うし(←むしろなんで今まで知らなかった(笑))大家さんの隣の一軒家の高校生とも仲良くなっちゃう。何この人たらしスキル!

    観劇のあとの感想が刺さったな。「やりたいことが特別なことでえる必要はないんどよなぁ、そうなるわけもないよなぁって」 「それは要するに、やりたいことがないのはダメだと思ってたってことなのよね。やりたいことが何もない自分はダメだと思っちゃうっていう。で、それは要するに、人から見て特別なことをやりたいと思ってなきゃダメだってことなの」全人類は全力で生きなきゃダメって思いつめちゃうとねー…

    「いや。自分で気づいてないだけで、たぶん、もう切ってますよ」っていう郡くん。「カンちゃん、パパに雇われてんの?」って背中押された藍奈さん。最も身近にいた人たちのことを知らなかった、とまさかそこに聞きに行くとは思わなかったけど。お父さんのこと、お母さんのこと、その時のこと。結婚式で貰った男気ある言葉。マジカッコイイ。幹太くんのこれからが楽しみだな!

  • いやぁ、いいねぇ、『ひと』もよかったけど今回もよかった。
    なんていうのかな、家族的にはあまり恵まれない主人公が、ご近所との飾らない付き合いの中で、少しずつ成長していく姿に親戚のおばちゃん目線で見守りたくなる。
    「ちょっと、あんた、もっとしっかりせにゃ!」と言いたい気持ちをぐっとこらえて「ちょっとお茶でも飲みにおいでよ、おいしいおせんべいあるしね」なんて言いつつよびよせたくなる。
    淡泊でがつがつしてなくて、周りに流されがち。でも根は素直でいい子。ついつい世話を焼きたくなるし逆にいろんなことを頼みたくなる。そんなイマドキ男子のカンちゃん。どこにでもいそうな彼の、一見平凡でつつがない毎日は、実は父の浮気と病死、という心のひっかかりから足踏み状態だったのだろう。その足踏みを、前に押し出してくれた、やんちゃっぽい戸田夫婦と可愛い子どもたちとのご近所づきあい。こういう下町っぽいやりとりは、日常のようで実は今や絶滅危惧的貴重な関係なのかも。
    はぁ…、良いモノ読んだ。じわじわと涙が流れ続けちゃう読書体験。楽しくておかしくて、なのにグッとくる。いいねぇ、小野寺小説。好きだ。

  • 20231130

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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