ライフ

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591162903

感想・レビュー・書評

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  • 私が読んだ小野寺史宜氏作品の6冊目。
    またも読む順番を間違えてしまった。
    ちゃんと『まち』の前に本作を読んでおきたかった。

    『まち』でチラッと出て来た井川幹太が本作の主人公だし、高校生の郡君も『まち』で出て来た子だ。
    つまり、本当なら本作の登場人物達の「後日譚」を私は知っているはずなのだけれど、そこは全く覚えていない。
    『まち』から『ライフ』に至るまでに小野寺氏の他の2作も含めて54冊も間に挟んでしまっているから。
    ああ、また『まち』を読みたいなぁ。
    でも常に並行して読んでいる本や図書館に予約してある本が山積みだからなかなか再読まで手が回らない。

    『ライフ』やっぱり凄く良かった。
    全く手に汗握らない展開なのに、心惹かれて一気読み。
    本当は作者の小野寺氏が、ってことなんだろうけれど、登場人物達がみんな相手の名前、きっちりとその漢字までに、ものすごく拘って知ろうとする傾向にある。
    くすっと笑ってしまう所も沢山あるし、「カンちゃん、何が白いの?」と幼子が尋ねた時の父親のひとことには、鼻の奥がツンッだ。
    実在する場所が書かれている場合には、私は主人公と一緒にスマホの地図上で辿りながら読む癖があるので、工場に併設されたパン屋さんも見つけてしまった。
    そこのホームページも見たら、まさに本作と同じ文言の求人情報が出ていた。
    私は知らずにここのパン(出荷されたもの)を食べたことがあるかもしれない。

    主人公はドアを静かに閉める人。
    もう、それだけで私はこの小説が好きなのかもしれない。
    作中に「凡人であることに自信が持てたよ」や「生きてさえいれば、人は何者でもあります」というセリフが出て来るが、私が小野寺氏の『まち』『ライフ』が好きなのは、正に「凡人であることに自信が持てる」からに他ならない。

  • 読みやすく無駄のない文章で一気に読める作品。日本のどこかで同じような青年がいて、同じような生活をしていても不思議ではないリアル感のある。だから先が気になり、サクサク読める理由かもしれない。そしてなんとなく心も温まる。進路や転職で悩んでいる人たちにはぜひ読んでほしい。肩の力が抜け、少し気持ちは楽になるのでは?

  • やりたいことを仕事にするのはとてもいい事だけど、実際は、やりたいことが見つからないまま就職を決めたりするのがほとんどだと思います。
    この本の主人公も、やりたいと思って入った会社を2回やめてます。
    やりたいことがなければ無理して作らなくてもいい。そのうち、見つかるからその時に考えればいいと、言わたような感じがした本でした。
    「まち」にでてきた共通部分があり、そこが出てくると、ああっ!ってなって、読むのが楽しかったです。

  • 受かりたい。でも落ちても大丈夫。_φ(・_・

    2020/10/30 ★4.4

  • 小野寺さん3冊目。
    久々にはまる作家さんに出会ったなと。

    淡々と語られる日常がほっこりしてすき。

  • 26歳男・職業コンビニでバイト・彼女なし・都内アパートで独り暮らし・・・
    プロフィールだけ読んだらやっぱり、主人公の幹太君は
    冴えないフリーターってことになっちゃうんだろうな。

    幹太君の生きるスキルはすごい。
    子どもからお年寄りまで、きちんと会話して仲良くなれる。
    頂き物をしたりおすそ分けをしたり大家さんにお礼をいったり、ご近所づきあいも軽々とこなす。
    当たり前のことをきちんとこなして生きるって、
    できそうでなかなか難しかったりするのに。

    幹太君の日々は、確実に前に進んでいく。
    一歩ずつ・・・いや半歩ずつかもしれないけれど
    幹太君の心の隙間が埋まっていく様子を、
    ずっと読み続けたいなと思ってしまった。
    これはもう母心だな。

  • この手の雰囲気の作品は好き
    何も起こらんことにどれだけ価値を見出せるかが人生

  • 読了した「ひと」と、似たような雰囲気の小説。
    舞台となった場所に興味があったので、読んでみた。
    人生というのは、日常生活の積み重ね。
    一人で生きているようでも、絶対に誰かと関わって、
    多かれ少なかれその影響を受けている。
    そしてそれは、「素晴らしい」とまではいかなくても
    「いいこと」なのではないかな、とこの小説を読んで思った。
    人に名前を聞くとき、必ずどんな漢字なのか聞くところが、
    この作家さんらしく興味深い。(私自身も、漢字で名前を聞かないと、なかなか覚えられないので共感しているのです)

  • 大学時代から住む川の近くのワンルームアパートで一人暮らし中の27歳フリーターの幹太は、上の階に越してきた男の人の騒音に悩まされていた。…

    毎度の事ながら、情緒の安定した、温度感の低い主人公。
    家族や周囲の人とも距離を置くものの、積極的に一人でいる訳ではない。そんな幹太が、上階の戸田さんファミリーと関わっていくうちに、少しずつ変わっていく。
    朱奈ちゃんと風斗くんが可愛い。
    そして、戸田さんも人情味溢れるいい人でした。
    足踏みしていた幹太も、最後は一歩踏み出すようになり良かった。
    でも、結果的には、みんないなくなってしまったんですね。
    新たな隣人を迎える続編に期待したいものです。

  • どこか先日読んだ吉田修一の『続・横道世之介』を思い出させます。
    どちらも大学を出てバイトで暮らす頼りないけれど善良な青年が主人公。彼を取り巻く人も大学時代の友人や、寿司職人(=横道、本作では役者)を目指す女性、そして主人公に懐く子供など似ている。特に大きな事件が起こる訳でもなく、いや、実際には起きるのだけど主人公が淡々と受け止めるので、大きく見えない。そんな主人公の日常が丁寧に綴られる。

    善良の人・世之介を描き、受け止めは徹底して読者に預けたような『世之介』に対し、この作品では最後に主人公自身に決着をつけさせようとします。そこは吉田さんの方が一枚上手かな。とは言えこの小野寺さんの作品もなかなか良い。
    歯切れの良い文体と優柔不断な主人公、その舌触りの差の様なものが面白い。良い作品でした

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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