銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794210067

感想・レビュー・書評

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  • 2020/1/5読了
    大陸間の文明・技術の差は、そこに住む人種の優劣ではなく、その大陸の環境の違いに依るものだという論旨は、約10年前の初読当時は目からウロコの思いだったが、刊行は’97年でなんと20年以上前。この間、異論反論も色々出ているのかもしれない。

  • EVERNOTE登録済

  • 第3部では、大陸の形や地形が農作物だけでなく文字や技術の伝播にも影響を与えていたことを確認。

    第4部では、各大陸ごとに、大陸の位置・大きさと文化の伝達、気候とそれに適した動植物種、ヨーロッパ人の進出上の障害(気候の違いや伝染病)の有無、人々の移動について説明。ヨーロッパ人が南北アメリカやオーストラリアに進出する前、中国南部の人々が東南アジアやオセアニアに、バンツー族がアフリカ南部に進出していた。

    エピローグでは、ユーラシア大陸内においては、肥沃な三日月地帯や地中海東部では降雨量が少なく、ヨーロッパでは多かったことが繁栄の継続時間に影響を与えたことを説明。中国については、国の統一の歴史が古いことが悪しき影響を与えたとしているが、この部分だけは科学的な分析でないと感じた。

  •      ―2008.03.20

    下巻ではとりわけ言語表記の問題を軸に人間の歴史における各大陸間のさまざまな差違とその成り立ちを明らかにしていく。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18451

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA48534121

  •  下巻。
     上巻では、文明が興っていった原因をひとつひとつ探っていたが、下巻の第4部からは大陸ごとにその仮説を検証していく。
     文明がいち早く花開いたユーラシア大陸と比較して、オーストラリア大陸や南北アメリカ大陸、アフリカ大陸がなぜ出遅れたのかを考察している。結論から言うと、地理的特性によって食料となる植物の栽培や家畜の飼育がユーラシア大陸ほど進まなかったために人口が増えず、社会も未発達のままで、病原菌への抵抗性も持たなかったことが理由とされている。

     このあたりは上巻での考察とほぼ同じだが、興味深かったのは同じユーラシア大陸で古くから文明が興ったにもかかわらず、「中国」がヨーロッパを侵略して支配しなかったのはなぜかということだ。
     いまだに不統一なヨーローッパの国々と比較すると、中国は何度も興亡を繰り返してはいるが、長きにわたって政治的にも文化的にも言語的にもほぼ統一されているのはあらためて考えると特殊に見える。そして、この特殊性ゆえに徐々にヨーロッパにリードを許してしまったという。
     著者の考えでは、中国は政治的に統一され過ぎていたために競争が生まれにくく、内部の権力闘争の結果、ただひとつの決定によって技術開発が禁止されてしまったという。真相はわからないが、ひとつの仮説としては大変面白いと思った。

     上下巻を通して、多くのデータや考察をもとに導いた結論は、単なる居住環境の差によってその後の文明の発達スピードが異なったということであり、人種などの生物的な差でないのはわかった。
     歴史学や人類学的に考えるとまっとうで受け入れやすい結論なのだが、いま我々が生きている日々の生活を冷静に考えると、いわゆる”親ガチャ”ではないが、人は持って生まれた才能やその後の努力よりも、生まれ育った環境によって運命が決まってしまうということを示唆しているようで、少し引っかかる部分が残った。

  • ためになりました。

  • 技術は、非凡な天才がいたおかげで突如出現するのではなく、累積的に進歩し完成するものである。

    こういった考えを持てれば、個人を過大評価することを避けられるんじゃないかなぁと思った

  • (2022年2月)
    読み始め。
    第12章「文字をつくった人と借りた人」からいきなり面白い。言語学的なアプローチで人類史を紐解いている。
    お世話になった言語聴覚士の先生は「表形文字的な漢字は覚えやすいんだけど、小学校の学年が上がると表音文字的なものが多くなってきて覚えにくくなる」というような内容のことを話してたなーとか思い出した。

    ・p60 日本人が、効率のよいアルファベットやカナ文字でなく、書くのがたいへんな漢字を優先して使うのも、漢字の社会的ステータスが高いからである。
    →そうかなあ…。単位文字当たりの情報量が多いっていうのもある気がするんだけど…。

    (2022年3月)
    読了。飛び飛びで読んだり、なんかもうボリュームがすごくて私の頭では未消化。
    とりあえずタグ付けしよう、と思ったけど、いろんなキーワードが出てきて、「いったいこれは何の本なんだ…」といまさらながら呆然とするなど。
    巻末の索引は便利そう。興味のある事柄を振り返りたくなったら使おう。
    ・p111 国家の成立の説明としてもっともよく知られる理論は、フランスの哲学者ジャン=ジャック・ルソーの提唱した社会契約説である。
    →学校の社会科では「社会契約論」って学んだなあ。筆者はルソーの説とは異なり、「歴史上の記録を見る限り、冷静に先見の明をはたらかせて国家が形成された事例は一つとしてない。小規模な人間集団に属する人びとが、自分たちより大規模な集団に併合されようと自発的にみずからの主権を放棄することはないのだ。主権の蜂起は、征服または外圧によってのみ起こっている。」と書いている。ウクライナで戦争が起こっている現在、この意味をちょっとかみしめたりしている。

    ・第16章 中国はいかにして中国になったのか、
    →中国ってそんなに特別な国かな?思想とか、国土の広さとか、漢民族と少数民族の対立とか、そういうのってほかの国でも起こってない?と思っていたのだが、
    「人種のるつぼでありながら、近年になって政治的に作り出された国ではない、いわば例外的な存在は、世界でもっとも人口の多い中国である。今日の中国は、政治的には、文化的にも、言語学的にも、一つにまとまった国である、と、少なくとも一般に思われている。」(p172)


    ・帯に「なぜアメリカ先住民のほうが逆に旧大陸を征服できなかったのか?各大陸の住民の運命を決めたものとは?」と書いてあるのだけど、その答えらしきものはp296、「ヨーロッパ人がアフリカ大陸を植民地化できたのは、白人の人種主義者が考えるように、ヨーロッパ人とアフリカ人に人種的な差があったからではない。それは地理的偶然と生態的偶然のたまものにすぎない――しいていえば、それは、ユーラシア大陸とアフリカ大陸の広さのちがい、東西に長いか南北に長いかのちがい、そして栽培化や家畜化可能な野生祖先種の分布状況のちがいによるものである。つまり、究極的には、ヨーロッパ人とアフリカ人は、異なる大陸で暮らしていたので、異なる歴史をたどったということなのである。」

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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