- Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
- / ISBN・EAN: 9784833416948
作品紹介・あらすじ
手本と解答がない今、成功へのプロセスは自らが考えださなくてはならない。オピニオンリーダーとして、常に最先端で活躍を続ける著者の最善解を導きだす思考法を全公開。
感想・レビュー・書評
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企業参謀 (講談社文庫)
著:大前 研一
企業や公共機関には、戦略的問題解決者のグループが必要である。このグループは、問題をいかにしてとらえ、いかに解決してゆくかということに対する専門家である。問題の解決ではなく、評論家の集団に成り下がってしまった今日のスタッフ部門にたんにとって代わるだけでなく、組織の最高意思決定者のための真の戦略参謀である。
こうした機能は、ほとんどの組織に欠けている機能である。日本をとりまく客観情勢の変化は、「おみこし経営」から「コントロールタワー経営」への変革を迫っている。著者の意図は、この遷移の一助となるような戦略的思考家の像を描いてみることであった。
本書の構成は以下の5章から成る。
①戦略的思考入門
②企業における戦略的思考
③戦略的思考方法の国政への応用
④戦略的思考を阻害するもの
⑤戦略的思考グループの形成
数年前に読んだものの、非常に難解であったため、時間をおいて再読。やはり難しい。しかし、その難しさの中に本質を垣間見れ、光を感じる。
本書が記されたのは1985年。インターネットはもちろんスマホもない時代にこれだけの「知」が入り乱れ、飛び交い、著者の中で体系的に持論として展開されている。
時代は違えども、芯を食った歯に衣着せぬ物言いそのままの文体は、今でも輝き、今だからより輝いている。今の日本にない、今の日本に求められている、言い切る。そんな、力強さが文字からもその熱量として伝わってくる。
難しいがまた触れたくなる。
数年後にも再度読み直し、再度教えを請いたくなるような病みつきになりそうな一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
・マーケットサイズは再び増大することはないか
・当製品市場におけるシェアの決定要因は何か。当社がその決定要因を十分持っているか
・プロフィットツリー
・現状の延長線上に解がない場合の戦略的代替案
1) 新規事業へ参入:多角化
2) 新市場への転出:海外進出など
3) 上方、下方または双方へのインテグレーション(垂直統合):石油精製から上方に行けば輸送、採掘などがあり、下方へいけば有機合成化学、ガソリンスタンド業などがある
4) 合併、吸収:3)の統合の目的のためだけではなく、単に製品系列を拡充したり、マネジメント力の強化を図るために行う場合もある
5) 業務提携:販売網の共有化、部品の共同購入、技術提携など
6) 事業分離:別会社設立による専業化による効率経営など
7) 撤退、縮小、売却:事業の切り売りから退却まで、全体のために部分を放棄する
・たとえば耐熱ガラスは、用途から見るとアルミ鍋などと競合しているし、贈答品としてみれば化学調味料や角砂糖と競合しているのである。だからこの場合には500円から1万円までの贈答品市場を関連マーケットとしてとらえなくてはならない、そして砂糖ではなく、耐熱ガラス製品を購入する決定的要因を分析し、この要因に影響を及ぼすような販売方法や製品開発をしなくてはならない
・業種の付加価値マトリックス
国内付加価値率/国内付加価値率に占める単純労働人件費の割合
・アプローチ
第一段階:必要性の確立
第二段階:潜在力の評価
第三段階:代替案の選考
第四段階:実施計画を立案、実行
・この業界で成功する秘訣は何か = KSF
・戦略家は頭脳の明晰さではなく、結果のみを問われる淋しい職業である。しかも将軍であれば臨機応変にアドリブで切るのであろうが、参謀は将軍のアドリブが少なくて済むように考え抜いてあげなくてはならない。将軍と、その兵の力量と判断力を評価できなくてはならない
・状況が悪くなるほど、広く見なくてはならないのに、余計狭く見て、もう選択の余地はない、と思い始めてしまう。しかし、万一、目標を「成功」から「最悪の事態を避ける」ことに置換した場合には、様々な選択が自ら出てくる
・大企業で事業部制を取っているところは、形態的に官僚組織を持っている。一方、自由体としての私企業の本来の特徴は、“組織よりは発想”が重視され、予算のうちの可変部分が著しく大きく、状況変化に迅速に対応するという特質を持っている
・戦略という言葉は、戦争における勝利に至る計画をさしているのであろうから、第一に相手がいなくてはならない。したがって企業における戦略計画においても、当然その大前提は競争相手が存在し、その競争相手に対し相対的に有利になるような、かつ、その有利になり方が最も効率的であるような方法を模索しなくてはならない。
・お客様の要望に沿って製品系列を拡充し、少ない経営資源をさらに薄く広げてすべての前線で敗退することは極めて常識的な帰結なのである
・インスタントカメラのフィルム数を20枚から24枚に増やすことにより「なんとはなしにフジ」のイメージに対して少なくとも一瞬のためらいを注入することになった
・戦略的自由度(強化できるオプションの軸)を整理し、打ち手を実現するための費用とその効果をプロットすることで、単細胞的に一つのことばかりを考えずに、それぞれの方向に対して対策ができる
・戦略事業ユニットの究極の姿は、戦略的自由度に沿って存在している既存の組織の軸を、すべて束ねた形でくくってしまうこと。逆にいえば、戦略的自由度が最も大きくなるように事業単位を包み込んでやる必要がある
・いかなる勇者といえども、市場の構造変化を予知し、対処するためには、己の強さと弱さを常に知り抜いていなければならない
・どんなに成功している事業でも、かならずその由ってきたる理由というものがあるはずで、これを見失って経営者の欲望の赴くままに進み始めれば崩壊は疑いない。このため、先見性のある経営者なら、自分はどのような顧客のために、どのようなサービスを提供し、どのようなメカニズムで収益を上げているのか、ということを寸時も忘れることはしないだろう -
・参考図書指定科目:「経営戦略論」
<OPAC>
https://opac.jp.net/Opac/NZ07RHV2FVFkRq0-73eaBwfieml/cZSQplUz61n9jgUjswjXy2xFvPh/description.html -
〈書評〉
戦略とは何であるか、参謀とはどうあるべきか、企業はどのような体制で企業戦略を作り実行していくべきかというテーマについて、考え方のエッセンスと、エッセンスを具体的なケーススタディに落とし込んだノウハウが書かれている。しかし、著者も言及しているように前者(エッセンス)が重要であり、後者はケースバイケースのため枠組みとしては利用できるが、紹介している型をそのまま当てはめる既製服のよう使い方は想定されていない。
本書が書かれた時代と今では社会背景などは大きく異なるものの、問題解決/戦略的思考の手引きとしては、現代でも充分に活用できるエッセンスが散りばめられていると思う。
〈メモ〉
・「戦略的」=事象を本質的な境界線を頼りにバラバラに分離させ、自身の目的達成に有利になるように組み直し、攻めに転ずること。
→「本質的」な分解と再構築とは何かを考える
・企業戦略の立案において、自社状況などの内部に目を向けるのはもちろん、市場や競合他者などの外部にも目を向けて、分解と再構築の見通しを立てる必要がある。
・特に、市場における「KFS」が何にであるかを掴むことが最重要事項の一つである。
・参謀心得
→「If」を恐れない:常に代替案を探り、どんな状況にも対応できる構えを取るべき。(※日本人は古くは中国、近代では西洋などの先行事例への依存、そして言霊的なシャーマニズムに由来して、「もしも」に対する準備をする慣習が薄い)
→完璧主義を捨てる:完璧な戦略は存在しない(無限の資源が必要)。競合相手より一枚上手を行くだけで充分。
→KFSには徹底的に挑戦する:二項の完璧主義を捨てるに反するように見えるが、KFS、戦争におけるセンターピンが何であるかに関しては、妥協せず試行錯誤を繰り返して探り続ける。
→制約条件に制約されない:「何ができないか」ではなく、制約条件を取り払った状態で「何ができるのか」を考えた上で、制約条件を突破するためにはどうしたら良いかを考える。
→記憶にたよらず分析をする:惰性や常識にとらわれず、本質的な分解と再構築に向き合う。 -
1975年出版てすごいな。32歳だったらしい。
なにかで「コンサルをセールスするための営業資料」を狙ってたのじゃないかと読んだが、そんなに胡散臭さもなく、大前健一節みたいなものも胡散臭くない程度に入っていて、とても面白かった。(料理に物を例えるケースはよく見るが、食品の腐敗を未回収投資と呼んだり、償却損と呼んだりする、異様な具体性に笑った)
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基礎知識は中小企業診断士の内容と一緒だけど、実際に理論を使ってたひとの話だからわかりやすい。
冒頭のppmらへんは面白かった
後半は流し読み -
経営者として、企業戦略の定義(他社と差別化できる目的地から逆算した、競争力を活かした攻め方)を顧みたのと、改めて自社の分解とKFSの言語化をしたくなった本。
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戦略についての古典的な本
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☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA44713311 -
オリジナルの本は40年以上前に書かれたものであるが、それでも今なお、変わらない企業戦略の本質が描かれている。 企業がどういう戦略を取るかを考える上での考え方についてまとめられている。