- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834081978
作品紹介・あらすじ
寄宿学校で教師をしている「わたし」は、ある晴れた夏の日、学校近くの三日月湖、マッドガイド・ウォーターに浮かべたボートの上で、ふわふわの毛につつまれた、二足歩行するハリネズミのようなふしぎな生きものと出会います。そして、一粒のミルクキャンディーがきっかけとなり、「ヤービ」と名乗るその生きものと「わたし」の交流がはじまります。ヤービの語る彼らの暮らしは、穏やかだけれど、静かな驚きに満ちていました。
感想・レビュー・書評
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ディストピア物を読んだ後なので、本当に癒された。
まだ豊かな自然が残る湖沼地帯に住む小さな生き物たちを取り巻く物語。
こうやって、今あるものを大切に、互いを思いやり、出来る限りを尽くそうとする気持ち。
大きな人(人間)が、忘れ掛けてしまっているものを思い起こさせてくれる。
決して批判的でなく、戒め的な厳しさもなく、優しさで包まれるような物語。
それでも、やはり大きな人たちの経済活動の影響が見え隠れする。
続編も読みたい。
2021.12.19詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ヤービ」という、架空の動物の生態と、マッドガイド・ウォーターの岸辺に棲む、実在する鳥や虫、動物や植物の生き生きとした姿を、見事に同居させながら、薫り高い自然の息吹をも感じさせてくれる、この作品は、さながら、ファンタジーを塗した、「センス・オブ・ワンダー」といったところでしょうか。
それから、小沢さかえさんの画ですが、以前に読んだ「チャーちゃん」とは、全く異なる感じなのが、また印象的で、「チャーちゃん」の哀愁を感じさせる幻想的な美しさに対して、ヤービの画には現実感があり、架空の動物に血肉を与えたような、自然な佇まいには違和感がなく、実在するかのようです。
そんなファンタジー要素を含んだ世界であるのに、現実感の強い本書を読みながら、私自身もマッドガイド・ウォーターの、たそがれ川のボートの上にいて、ヤービとともに、クジャクチョウを眺めたり、湿原の冷たくて気持ちよい風を感じたりと、自然の素晴らしさを追体験しているようで、なんて素敵で心地好い場所なんでしょう。
ただ、そんな場所にも、人間の環境破壊を思わせる描写があることには、胸が痛む思いがしましたが、もしかすると、読者がヤービの暮らしを見ることで、自然保護の大切さを考えるきっかけになるのかもしれませんね。
そうした思いから、是非、多くの子供たちに読んで欲しいです(児童書なんですけど、内容的にはやや渋く、大人も楽しめるのは、梨木香歩さんがこの作品を、「永遠の子どもたちに」 捧げていることからも窺える)。 -
大好きな梨木香歩さんの児童書がでたぁ。箱に入った美しい製本。それだけで心躍るのだ。福音館の創作童話シリーズとか福音館古典童話シリーズだいすきなのよね。児童書はハードカバーがすき。あの大きさ、腕に抱えたときのどっしり感。ページの質感・・・・・・一冊の本を何度も何度も読み返した子どものときのワクワク感が甦ってくる。でも児童書は高いからなぁ。なかなかお家の本棚には並ばないよぉ~
まずは、ストーリーに入る前に。表紙にうっとり。
とっても可愛い表紙のコ(ヤービ)とうっそうと茂る草木の色合いやタッチがすごく好み!表紙をめくると物語の舞台となるマッドガイド・ウォーターの岸辺付近の地図が。あれ?まんなかの湖(三日月湖)なんだか琵琶湖に似ているぞ。(全然違ったらごめんなさい!あくまでわたしの第一印象なので・・・・・)あとで知ったんだけれどこの絵を担当されてる小沢さかえさん、生まれ育ったのは琵琶湖畔みたい。そういえば、梨木さんも滋賀県に住んでおられたことが。うわぁ、なんだか身近に感じる。それだけでわたしにとって大切な物語になる。
児童書なのですぐに読めるんだけれど、もったいなくてゆっくり時間をかけて読んだ。
ヤービというちっちゃなちっちゃなはりねずみのようなおとこのことウタドリさんという大きい人(人間)とのやりとり。ヤービたちクーイ族の生きる術。自然や生物とのかかわり合い。たんなるファンタジーではない。わたしたちの周りでも起きていることがこのマッドガイド・ウォーターでも起きているのだ。この物語から大切な何かを見つけ出せるようなきがするの。とってもうれしいことにこれから物語は続いていくよう。壮大に広がっていきそうな予感。楽しみ! -
岸辺に住む小さないきものヤービたちについてのあれこれをウタドリさん(大きい人)が愛を込めて語っていく。その世界はとても素晴らしく、語られる言葉は丁寧で美しい。
大きい人との出会い、違う種族の女の子との出会い、初めて空を飛んだ時、憧れのほのおの革命家との出会い、ヤービはいつだって優しくて一生懸命、好奇心旺盛で楽しい冒険がいっぱい。だけど、なぜだろう、なんともやるせない読後感。
このまま大きい人たち(人間)が世界を牛耳っていけば、どんどん植物や動物たちは生きていけなくなる…。大きい人たちに出来る事はなんだろう。
ヤービとウタドリさんのようにみんながみんなを思い合えばまだ大丈夫だろうか。まだ間に合うだろうか。マッドガイド・ウォーターを守って欲しい。みんな、がんばれ!続編に期待。 -
舞台はマッドガイド・ウォーターという名の小さな沼地、語り手はこの沼地の近くにある寄宿学校の先生です。
マッドガイド・ウォーターにボートを浮かべ、本を読んでいた彼女が偶然出会ったのは、今まで見たこともない小さな生き物でした。
ふわふわの毛に包まれた体、でも顔の部分は毛がなくて、もぐらかネズミのような長めの鼻面をしているクーイ族の男の子・ヤービ。
好奇心旺盛で素直なヤービは、ずっと見ていたくなる、気持ちのよい子だなぁと思いました。
ヤービの周りは楽しいこともあるけれど、心配なこともいくつかあるようです。
この先続いていく物語の中でヤービたちがどのように成長していくのか、見守っていきたいと思います。
挿絵と文章の優しさが絶妙にマッチしていて、古きよき児童文学を読んでいるような気持ちになりました。
ボート、沼地、岸辺の動植物にふしぎな生き物…などなど、梨木さんの好きなものが凝縮されたような物語で、きっとものすごく思い入れのある作品なのだろうと思います。
身近な自然の中にも生命の循環が営まれていること、そして私もその一部であることを、改めて思い出させてくれました。 -
ヤービは三日月湖の岸辺に住む小さい生き物。主人公がヤービに出会った場所も人間による環境変化で小さい生き物達が住みにくい所となった。へこたれずに自分を取り巻く世界に向かって「がんばれ」と励ますヤービの姿が好印象。
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創作童話シリーズとなっているが、大人が読んでも充分に楽しめる内容となっていると思う。
むしろ子供にはちょっと難しい言葉使いとかも使用しているような気もする。
マッドガイド・ウォーターという三日月湖の岸辺に住む生き物たちの物語。
生き物の中には勿論人間も含まれる。
命あるものを殺して食することの葛藤や、大きい人(人間のこと)による自然への干渉、それに伴う環境破壊、そういった諸問題が随所に出てくる。
勿論、答えは用意されてはいないけれど、それは読者である我々が、本書に登場してくる命ある者たちと一緒になって考えるべきことなのだろう。
いずれ続編が発表されるはずなので、是非そちらも読んでみたいと思う。 -
西の魔女が死んだ」で有名な梨木香歩さんの児童書。海外の翻訳物のような雰囲気を持つ1冊でした。 岸辺に住む小さな生き物ヤービと、人間との交流。そしてヤービの冒険や成長の物語です。 優しくて癒されます。挿絵もかわいくて、全体を通して雰囲気がステキな1冊☺️