- Amazon.co.jp ・電子書籍 (200ページ)
感想・レビュー・書評
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今起きていること、起きようとしていること。
統計データとともに論じています。
総じて仰るとおりと思います。
時代が変わり、情報(知識)は人脈や伝承、書物等で調べていたものがその必要がなくなって、Google等で簡単に得られるようになりました。
さらに今は進んで、ググることすらしなくても済むように(ChatGPTを言っています。今まではGoogleで検索、得られた結果から自分で最適と思われるものをピックアップしていました。でも、ChatGPTを使えば、「風呂の鏡のうろこをとる方法を教えてください」、の回答を読むだけ)なりました。
これからさらに進んで、仕事もしなくてよくなってくるでしょう。
すでに仕分け、配達、梱包、運転、診断、、、等、人がする仕事が置き換わってきています。
これは(ひとさまの仕事を奪うことなので)よくないことだ、と言っているわけではなく、巻末にあるシンギュラリティに繋がっていくのだと思います。
それは、徐々に、ではなく突然、加速して訪れ、止めることができないものかもしれません。みえないところでコンピュータ、クローンが生まれ、進化し(人々を助けるかどうかはわからない)、世界が変わります。
本書では、上級下級の2つの世界といった論点ですが、実際には1%の悪魔のような生き物が君臨、その下に数%のエリートがいて、あとは奴隷、なんてことはよく知られるところです。その論点が本書にはありません。
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131頁
なぜそのようになるかはとてもシンプルで、「他社の自由を認めなければ自分の自由もない」からです。これが「自由な社会」の根本原理です。
リベラルな社会では、ひとびとは「私が自由に生きているのだから、私の利益を侵さないかぎり、あなたにも同じように自由に生きる権利がある」と考えるようになります。
155頁
中国やインドはかつては世界の最貧国でしたが、わずか数十年でグローバル企業がいくつも誕生し、大きな中間層が形成されました。
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ただし、ここには問題がひとつあります。世界が「全体として」ゆたかになった代償として、先進国の中間層が崩壊したののです。これが私達が体験していることです。
190頁
もしかしたら遠い将来、なんらかのとてつもないイノベーションによって、全世界のすべてのひとに「健康で文化的な生活」を保障するだけのお金を配ることができるようになるかもしれません。
194頁
人工知能が人間の知能を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)は2045年とされています。もしかしたが私達の令和の時代のあいだに、臨界状態から相転移に至る「知識社会」の終わりを目にすることになるのかもしれません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書を読むことで社会の変化の外観をつかむことができたというのが第一の感想である。オリジナリティは少ないものの、『言ってはいけない』などで社会問題のタブーをはっきり指摘する著者の情報編集力を目の当たりにすることができ、世の中のニュースやSNSで話題になっているトピックを客観的に、半ば傍観者的に見られる人であれば「なるほど」と納得のいく論が展開されている。
ではどうすればいいのか?という点は非常に難しい。社会の流れを個人の力で動かすことは難しい。個人としての最適化は現状を所与としていかに知識社会に適応するか、という観点から自分に投資することだろう。自分磨きとかいう生半可なものではなくサバイバルのための自己投資である。
結局それが社会全体を変える方法なのかもしれない。本書でも引用されている学問のすすめの本質は「教育は格差を拡大させる装置である、だから学べ」という点にある。多くが知識社会に適応できるならば社会の構造が変わるのである。未来はそこにしかないように思う。
ー要約ー
池袋の事故から始まる上級国民という言葉は一部の特権的エリートを指していっているのかもしれないが、社会では実はもっと大きな流れで「上級/下級」の分断が起きている。
国内の分断としてまずは団塊世代と氷河期世代以下の分断が描かれる。正社員が減少し非正規雇用が増えたという一般論に対して、実際に中高年の正規雇用に変化はなく、割りを食ったのが若年層であり、非正規の増加は女性の労働参加の促進の結果であることが神林龍氏の著作を引用して明らかにされる。
さらにグローバルに進行している分断という観点から、マイノリティに対するアファーマティブアクションなどの措置に隠れて、マジョリティに属しながら救済の得られないアンダークラス(下級国民)の存在を指摘する。
なぜそのような分断が進むのか? 著者は「知識社会化 ・リベラル化 ・グロ ーバル化lに適応できるかどうかが鍵だと論ずる。テクノロジーの進化によって個人が共同体の縛りから放たれて一人一人の自由意思によって自己実現をする。その行動は国境に縛られない。
この変化に適応できない人が多数いることが問題の本質である。テクノロジーの進化によりブルーワーカーが不要になる。資産を持つものと持たないものの差が歴然となる。国籍や人種などにしかアイデンティティを見出せないものが増えヘイトが膨らむ一方で知識層はその垣根を超えて仮想的コミュニティを築くようになる。
このような流れに対する反動がトランプ現象やブレグジット、イエローベスト運動に代表されるポピュリズムであるという。この分断に対する希望はkテクノロジーによる設計主義」というテクノロジーの驚くべき進歩が社会の難題を解決するという理想主義的な楽観論であるというのが著者の見方である。 -
現代社会の潮流は「知識社会化」「リベラル化」「グローバル化」であることを認識できる本。
- 生産性と賃金の間には強い正の相関がある。
- 新入社員の3割はやめる。しかし、30代のほとんどはやめない
- 日本ではIT革命が到来しても、雇用対策を優先→業務のアウトソースができない
- 若者の失業率が急激に上昇したこと、低学歴の中高年が失業することは注目されない。それはホワイトカラーの正社員たちには関係ないから。
- 高齢世帯は多額の金融資産を持つ3割とほとんど持たない3割に分かれる。
- 思春期になると女性が冒険的になるように設計されている。
- リベラルの社会の負の側面は、自己実現と自己責任がコインの裏表であること、自由が共同体を解体すること
- 現代では自分を規定していた属性がなくなる。その中では再帰的になる。つまり自分を定義するにあたって自分を参照する。自分らしさにこだわり本当の自分を探し続ける。
- 社会から個人へと視点が変わる再帰的近代では、自己を正しく把握・管理することが重要になってくる。 -
言わずもがなタイトルにある「上級国民」と言う単語は、池袋で元高級官僚が起こした事故からきている。
先日読んだ「無理ゲー社会」と被る部分は多い。
現代社会は、上級国民/下級国民、正社員/非正規、モテ/非モテなどの分断社会である。
面白かったところをいくつか。
・団塊の世代を守る
平成は、団塊の世代の雇用を守る30年
バブルが崩壊しようがリーマンショックがあろうが、正社員の割合は変わらなかった。
割を食ったのが若者で、職にあぶれ、非正規雇用に流れていった。
正社員を過剰に保護し、労働市場に流動性がなくなる。
会社は「いったん入ったら出られない」タコツボと化してしまう。
これにより新卒でたまたま入った会社の業績という「運・不運」で人生が左右されてしまう。
平成が終わり、団塊の世代が労働市場から退場したため「働き方改革」が進み始めた。
令和は、団塊の世代の年金を守る20年になる。
年金問題が改革されるのは、団塊の世代がこの世から退場してからとなる。
・アメリカは黒人とプアホワイト(白人なのに貧乏)の対立
アメリカには、アファーマティブアクションと言う制度がある。
たとえば医学部の入学試験では、黒人は白人やアジア人よりも低い点で入学できる。
これはアメリカ国民の周知の事実。
そのため重篤な病気にかかった際に、黒人医師は避けられる。
黒人患者ですら黒人医師を避けるのだとか。
実力で医師になった黒人は災厄以外のなにものでもない。
そして、プアホワイトは自分たちも貧乏だと言うのに、白人であるがため一切優遇されない。
ここに対立があるのだとか。日本にも似た構図がある。
・ベーシックインカムが破綻する理由
世界には年収8万円で生活できる国もある。
そんななかで、日本がベーシックインカムを導入し、「日本人」であれば無条件に月額20万円が支給されるとする。
現在の日本の法律では、日本人から生まれた子供は無条件で「日本人」として認められる。
日本男性が海外で婚姻し、子どもができた場合、大使館・領事館に提出するだけで子どもは日本国籍がもらえる。
アフリカなどの新興国で、女性は生涯に10人前後の子どもを産む。
そんな女性が日本人男性と結婚して、子どもを10人産めば、年収2400万円になる。
そうなれば男は海外で子どもだけ作り、楽して暮らそうとするだろう。
こうした事態を避けるには「日本人」を厳密に定義する必要がある。
しかしこの考えは「優生学」そのもので、世界から人種差別国家とみなされてしまう。 -
さっと読める本。刺激的な言葉が並ぶが、本質的なメッセージは「自己責任社会の危うさ」。意味は分かるけど、じゃ共産主義?うーん、やはり一度お金とは正面から向き合っておかねばいかん。自分が「生きるために食べたい人」か「食べるために生きたい人」のどちら寄りかでお金の意味って変わってくると思う。
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表題が「上級国民/下級国民」と池袋で母親と3歳の娘がはねられて死亡した乗用車の暴走事故を機にネットで飛び交った「上級国民」を使っているのでもう少し「上級国民」たる日本の支配階級を弾劾するような内容かと思ってましたが、各種データや多様な文献の引用を用いて、日本の格差問題を論理的に分析しています。
リベラルは自由であることを選択する。そして、人種、性別、性的思考などでは差別することなく、自身の努力で大切であると主張する。その結果として、数億人が貧困から脱出したことで世界全体の不平等は縮小しているのだ。
だがしかし、日本や米国そして旧西ヨーロッパなどの先進国では一様に中間層が没落している。没落した中間層は努力が足りなかったというのがリベラルの見立てである。その没落した中間層がトランプ大統領を誕生させ、ブリグジットを引き起こし、黄色いベスト運動を展開したのである。
一部からこのような人を救うのはベーシックインカムであるとの声も上がっているが、著者は完膚なきまでにこれを否定して見せる。現在はテクノロジーが平均的な人類の適応力を越えているから適応できる人とできない人で格差が広がるが、すべての人類を越えてしまうと格差は無くなるのかもしれないと結んでいる。
あと少し驚いたのは日本は学歴格差が格差社会の源としている点です。たしかに有名大学を出て一流企業に入る人は上級国民のパスポートを貰ったようなものだし、優秀な人は多い。中小企業などでも学歴(大卒と高卒)で差別されること多いのだろうか。少なくともIT業界では学歴は関係なく実力でのみ評価されるのだが。。。 -
なんとなく手に取ったが、非常に刺激的な一冊である。過激な言動が多そうで、本著者のものは、これも何となく敬遠してきたが、至極理路整然と持論を展開されているのには驚いた。
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「朝日ぎらい」の中の知識格差による社会の分断に焦点を当ててかかれた本。
こっちの方がわかりやすいのかどうかは、正直「朝日ぎらい」を先に読んでしまったのでなんとも言えない。
深く掘った部分は良かったが、プラスアルファのモテ・非モテの格差については、わからなくもないが腹落ちはしなかったかな。
シンギュラリティがきて、知識社会が終わるというのはなんかゾクゾクするね、その時に生き残るのは知識社会の勝者よりも、Vloggerとかになるんだろうね、 -
危機感を持たせてくれる本
自分の老後心配