岩波文庫的 月の満ち欠け

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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000014113

感想・レビュー・書評

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  • 愛する人に再会するために、女は何回も生まれ変わり、周囲の人達が翻弄される話。

    内容的には真新しいストーリーではないと思うけど、書き方が巧みで最後まで不思議と惹きつけられた。
    というのも、主人公の男性が妻に娘の異変を相談される場面で、私は男性と同様妻が変になったという印象を持った。しかし先を読み進めていくうちに、あのときの妻は正しく何も気づいていなかった自分こそ愚かだったとこれまた男性と同じ心境になっていた。心から。フィクションの、しかも自分と全く異なる境遇の人物と気持ちがシンクロするのも珍しい。

    ただやっぱり展開には引っかかる。いくら大切な人に会いたいからといって、生まれ変わるたびに年の差がどんどん開いて、最後やっと再会できたときには、自分は小学生、相手はおじさん。もう恋愛は無理でしょう。一緒にいられるだけで幸せってなるかなぁ。まあそこまで思い合えてロマンチックと捉えるべきか。

    自分の子どもが前世の記憶をしっかり受け継いでてその人として生きていかれたら、親はたまったもんじゃないわ。笑

  • 構成の妙。淡々とした筆致と時折現れるインパクトある一文の抑揚は見事。受け側に立つと、あまり感情移入出来なかったが、満ちるためには欠けるものが出来るということでもあるのか。

  • ずーっと読んでみたかった本。

    三角哲彦(アキヒコ)の純愛が、淡々と描写されているのにもかかわらず最後まで強く心に残ります。その彼を一途に追いかけた4世代の少女の話があるからこそ余計にそう感じられるのかもしれない。彼女たちの話はほんの付け足しのような感じでしょうか。一方で正木竜之介の狂気も丁寧に描かれる事によって醜聞や転落がズンと胸に突き刺さってなんだか苦しい。

    この本だけだと佐藤先生がどんな作風なのかは謎だし、他の作品も気になります。

    しかし、岩波文庫から出てるとてっきり思ってたんですが、読後表紙をよくみると小さく岩波文庫的って書いてあり、え?なになに????
    この仕掛けはスッゴい面白いです!
    完全にまんまと騙されました笑

  • 何人の女性に生まれ変わろうが、彼の歳月は流れようが、たった1人を探す。
    えーー!?

    大切な人とは、合言葉を持つことを推奨します。
    「ずっと待ってたんだよ」って言われる人生があるかもしれないしね。ずっと探してたんだよ、じゃなくて、待ってたんだよ、って。
    えーー!?
       
    強く印象に残っている部分は、
    中西が教えてくれた短歌のチョイスです。
    中西くん、あなた…すっごくいい仕事したと、私は思うよ。

  • 時空を越えた愛。生まれ変わり別の姿になっても、必ずあなたに会いに行く。そして
    姿かたちは違っても私たちはきっとお互いを認識できる。といった想い伝承ストーリー。登場人物と時系列で把握が難しいが
    話は面白くサクサク進む。しかしながら何か腑に落ちない。物語同様、サクッとした恋愛に感じ、あまり熱量を感じられなかった。とはいえ、映像化は楽しみ。

  • 2017年上期の直木賞受賞作。目の前にいる七歳の娘が、今は亡き我が娘…?

    「生まれ変わってもあなたに逢いたい」

    三人の男と一人の少女の三十余年におよぶ人生。その過ぎし日々が交錯する、数奇な愛の軌跡。2022年12月2日に映画公開予定の本作。「月の満ち欠け」は繊細で美しい小説でした。

    重要なフィクション要素が含まれてはいますが、全体を通して物語は穏やかに心地良い空気感で進んでいきます。

    あり得ない話なのに、どこかあり得そう。

    いや、ほんとにあり得るのでは…?

    だとしたら、素敵だなあ。そうあって欲しいな...。なんて思わせてくれる作品です。不思議な気持ちになります。奇想天外な展開を望む方に取っては退屈かもしれませんが

    「ひとを愛する想いの強さ」

    後味の良い読後感を得たい方にはおすすめです。また本作の解説はみんな大好き(?)伊坂幸太郎さんです。ぜひ、そこまで楽しんでくださいね。

  • もしかしたらあなたの前にいる子どもも実は?なーんて思わされる一冊。全体の色としては薄曇りのイメージです。なぜなら初めは話が見えないし、中盤は過去の最終的には暗めな思い出で、後半は小山内さん同様何が何だかの気持ちになり、最後だけ晴れ間が見える。そんなお話だからです。有名な伊坂幸太郎先生が著者の技量を褒めるくらいなのでそんな内容でも途中でページの手を止めることなく最後まで読み進められました。

    ●わたしも思い当たる節があるんです
    いきなり気持ち悪いですね。娘の目を見てどこかで見覚えがあるような気がしたことがあるんです。よく思い返すと子供の頃に飼っていた犬と見つめあった時の感覚と似ているなと思いました。しかし今は娘も成長したからかその感じはなくなりましたが。

    ●この話で幸せになった登場人物が少ない
    直木賞の審査会で宮部みゆきさんが指摘されたそうですが、確かにるりさん関係で言えばるりさんと男性の二人。しかし小山内さん関係といえば、小山内さんを待っている女性3人はこの小説の範囲内では幸せかもしれません。

    ●2022年冬に映画化するそうですが
    わかりやすいただの純愛映画にはしてほしくないなと思います。この小説のぼんやりさ、話は分かるけど何かわからない、そんな感じを残したまま映像化するのは難しそうです。

  • まさか直木賞受賞するとは思わなかったが、月刊競輪にエッセイ書いてた時から好きだった作家。今回は面白くてドキドキさせられた物語。流れからすると、小山内は八戸に帰れなかったのではないか。解説が伊坂幸太郎なんてすごい。

  • 月のように死んで生まれ変わるー瑠璃。
    瑠璃も玻璃も照らせば光る“

    結構ドキドキさせらた。怖い。
    ラブストーリーとして心に染みる。

  • 私は本当に面白いと、読んでいる最中に先が気になりすぎて読むスピードが頭の中で理解するスピードを上回るという現象が起こるのですが、この作品はまさにそれでした。

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著者プロフィール

1955年長崎県佐世保市生まれ。『永遠の1/2』ですばる文学賞、『鳩の撃退法』で山田風太郎賞受賞。おもな著作に『リボルバー』『Y』『ジャンプ』など。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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