- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041304082
作品紹介・あらすじ
一柳家の当主賢蔵の婚礼を終えた深夜、人々は悲鳴と琴の音を聞いた。新床に血まみれの新郎新婦。枕元には、家宝の名琴”おしどり”が……。密室トリックに挑み、第一回探偵作家クラブ賞を受賞した名作。
感想・レビュー・書評
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「横溝正史を1,2ヶ月に1冊のゆるいペースで読み返していこう」と決意しての記念すべき一冊目は金田一耕助最初の事件『本陣殺人事件』他中編2編でございます
まぁ、話の中身については淳水堂さんや地球っこさんが素晴らしいレビューをあげていますのでそちらを読んで下さいw
あとおそらく近いうちにおびーが良いのあげんじゃね?(鼻ホジホジ)
もう私のレビューなんて淳水堂さんへの中継地点で十分です
むしろ使命感を持って中継地点の任を果たしたい
あーでもさすがに最初の事件だけあって、まだ金田一耕助のキャラクターがふわふわもこもこしてたかなくらいは書いておこうかな
いやもこもこはしてないわ!
それにしてもやっぱ横溝正史は角川文庫やわ〜
角川文庫がしっくりくるわ〜
まぁできれば杉本一文氏の表紙が良かったんですがね
横溝正史ファンの方たちには絶対同意して頂けると思うんですが、横溝正史と言えば杉本一文氏の表紙ですよね
まとめサイトとかあるんで懐かしく眺めたりしております
というのも、わい全部持ってたんよな〜
横溝正史の角川文庫
100冊くらい?
プチ勘当中に親父に全部捨てられちゃったんだよね〜
惜しいことしたな〜
凄い数の海外の古典の探偵モノとか秘蔵のエロ本コレ○○ョンとかも全部捨てられちゃったんよ(伏せ字が意味ないとこ!)
ほんともう犯罪だわ
ハヤカワのクリスティ文庫とかも全部揃ってたのに!
うん、ゆっくり読み返していこう
先は長いぜ! -
『本陣殺人事件』
日本家屋には不向きとされた「密室の殺人」を描いた『本陣殺人事件』は、金田一耕助の初登場作品。
旧家を舞台に登場人物が皆曲者揃いとは、(まだ数冊しか読んでいないが)これぞ横溝作品だ。これで面白くならないわけがない。
金田一はアメリカで出会ってから、世話になっている久保銀造おじさんによって事件の現場に呼び寄せられる。
トリックが金田一の実験によって見破られる瞬間は、当時の読者には圧巻だったに違いない。
明らかになった真相は、時代のせいだけには出来ない狂気を孕んだ理不尽なもので、憤りさえ感じてしまう。なんともやりきれなさが残る結末だった。
『車井戸はなぜ軋る』
金田一は直接関係ないものの、明敏な頭脳の持ち主によって、書簡というかたちで事件の真相が明らかになる。切羽詰まった書簡の文章が自然と頭の中で映像化され、思わず「ギャッ」と叫んでしまいそうになる。
心理的に追い込まれていく感じが、サスペンス調で3作品のなかでは1番どぎまぎ。
『黒猫亭事件』
『本陣殺人事件』を小説として書きつづっていた作家Yは、金田一耕助と初めて対面したときに「顔のない屍体」の事件を書きたいと伝える。
その後、金田一より顔のない屍体事件である『黒猫亭事件』の書類が送られてくる。
犯人の生への執着、新しい人生への渇望というものが、絡まった糸のようなトリックを作り上げたのだろう。
二転三転しながら事件の真相が暴かれていく瞬間は快感。
金田一を「耕ちゃん」と呼ぶ、中学時代の同窓生風間俊六が登場。誰もが(特に女性)が惹きつけられる悪い男。これからも、もっと登場してくれないかな 笑
どの事件も真相が暴かれていく展開は、文句なしに面白かった。
ただこの時代だからこその、そして閉塞的な田舎という環境、封建的な家族制度だからの動機は、事件が解決されたとはいえ残された者の心に影を落とす。
ややもすると、事件のおどろおどろしさのみが際だってしまいそうなところを、金田一の頭脳とキャラが探偵小説の醍醐味、面白さへと導いてくれた。
愛嬌があって、勢いづいて吃ったときにも周囲を笑わせるようなおおらかさを持っている金田一耕助。服装にも頓着しないし、かっこよさなんてものからは程遠い。
それでもスズメの巣のような頭をかき回す姿には見守ってあげたくなるし、ひとたび事件を解決するとなると何とも頼もしい。
ハードボイルドな探偵もいいけれど、ときには彼のような母性本能をくすぐるタイプの探偵さんもいいんだよね~ -
【本陣殺人事件】
これが…噂の本陣殺人事件……⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅ )⁝
なるほどなるほど…!!
横溝正史と言えば……!?
『犬神家の一族』
『悪魔の手毬唄』
『八つ墓村』
と並ぶほど有名な『本陣殺人事件』
アメリカから帰国した金田一耕助初登場の作品である———。
……アメリカっ?!((( ;゚Д゚))
金田一耕助はサンフランシスコのカレッジを卒業していたのですね〜。
シリーズ6冊も読んでて知らなかった…(^▽^;)
刊行順に読まないのは如何に恐ろしいことかが分かりますね笑笑
そしてお恥ずかしながらググる。
本陣とは……江戸時代以降の宿場で、身分が高い者が泊まった建物。大名や旗本、幕府役人らが利用した。
原則として一般の者を泊めることは許されておらず、営業的な意味での「宿屋の一種」とはいえない。
宿役人の問屋や村役人の名主などの居宅が指定されることが多かった。(Wikipedia)
ふむ。
とにかく格式高い家柄での殺人事件てことで。笑
当主(賢蔵)の元に嫁入りしてくる女は、小作人の娘。
明るく教養があり、女学校の教師である彼女に惹かれ、周りからの反対を押し切り結婚を決める。
しかし婚礼の夜、事件が起こる。
3本指の指紋が残る現場。
嫁の叔父(久保銀蔵)とアメリカで知り合った金田一耕助が現場に赴く——。
この作品は読んでおきたい作品。
ミステリーを読む上で、知識としてよく挙げられている。
読んでみて理由がわかった(。-∀-)
これはすごい。
何がすごいって——って書きたいが、書けない笑
1箇所ものすごく気に入った点が……♡
書けないけど笑笑
他作品にはない魅力が満載。
【車井戸はなぜ軋《きし》る】
めちゃめちゃ面白い(°д° )!!
父親が同じ腹違いの息子2人。
この2人は、目が二重と一重以外は見分けが付かないほどそっくり。
大助は金持ちで本家の息子。伍一は分家で育ての父親が自殺した貧しい息子。
伍一は大助に嫉妬していた。
この2人が戦争へ。やがて復員したのだが、伍一は戦死。
大助は両面を負傷し義眼で帰ってきた——。
大助の妹、鶴代が、兄、慎吉に対して送っていた手紙の内容で話が進む。
登場人物の状況と事件の真相が少しずつ描かれ、どうなるのかが気になり一気読み。
二転三転する真実に驚愕でした。
おもしろい!!
【黒猫亭事件】
黒猫亭で起きた顔無し死体のトリック!
お見事(*゚∀゚)!!
改装中の黒猫亭の庭先で、女性の死体が掘り起こされる。
その死体の顔は判別不可能であった。
金田一耕助の小説を公認で執筆するY氏の話から始まる。
金田一との出会いが書かれており、ここから始まったのかぁ〜と感慨深い。
顔無し死体と言えば…とのトリックを語る2人だったが、ある日金田一が類似の事件に携わり、Y氏に手紙を送ってきた。
小説内のこんなエピソードがすごく好き♡
実在するかの様な2人のやり取りが堪らない。
私が読んだ事のあるシリーズモノで初めてだと思う。(〃´-`〃)♡
顔無しトリック+タイトルからポーを連想させるのも、ミステリーにおいてミスリードさせる要因かなと警戒する。
犯人当てはとっくにあきらめていますがね(^▽^;)
金田一シリーズ、次に読むのはいよいよ『犬神家の一族』かな。
楽しみ(*´艸`)♡
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言わずとしれた金田一耕助シリーズ第一作。
陰鬱でおどろおどろしい雰囲気。なのですが、神秘的な雪密室で起きた惨劇と事件に用いられた様々な日本古風なガジェット、それらを合わせる事で、どことなく美しく妖しい雰囲気を醸し出していて夢中になって読んでしまった。
横溝作品は未読だったんですが、他のシリーズも早く読みたい。 -
金田一耕助が最初に登場した『本陣』をはじめとする初期の三つの事件。
この三つの事件から分かった金田一耕助の来歴はこんな感じ。
●十九歳で、同窓生の風間俊六(『黒猫亭』に登場)と共に東京に出て大学に通う。
●1930年代:なんかふらりと渡米してしちゃった。アメリカでは毎日ぶらぶら暮らして危うく麻薬中毒患者となりそうなところを日本人街で起こった殺人事件を見事に解決!それを見た日本人実業家久保銀造(『本陣』の関係者)が耕助のことを気に入り、パトロンになった。この時耕助はアメリカのカレッジの学費を出してもらってる。金田一耕助はアメリカの大学を卒業していた!!もじゃもじゃボサボサよれよれだけどアメリカの大学卒業って、この時代にすごい経歴ですよね。
●1930年代半ば:日本に帰り、久保銀造から費用をせしめて探偵事務所を開設する。初めは「門前雀羅(もんぜんじゃくら)、事務所には閑古鳥」状態だったけれど、大阪で起きた大事件を見事解決し、日本中にその名前を轟かせ、警察の上層部とも知り合いになる。
●1937年(昭和12年):24、5歳で『本陣殺人事件』を解決する。この時知り合った磯川常次郎警部とは、今後も岡山県で起きる事件で組むことになる。
『本陣殺人事件』は、「疎開中の横溝正史が、村の人々から聞いた話」という体裁となっている。
●1940年くらい:召集されて、中国や南洋の戦地を転戦する。(終戦後、そのまま「獄門島」に向かう。)
●1946年(昭和21年) :34、5歳。『獄門島』事件の帰りに、岡山に疎開していた探偵作家・Y(横溝正史)を訪ねる。ここで横溝正史は正式に金田一耕助の記録作家になり、親交が始まる。
『車井戸はなぜ軋る』もこの年の事件。
●1947年(昭和22年):探偵事務所はもう閉めたらしい。召集時に閉めたのかな。
終戦後、同郷で同窓生の風間俊六と再会する。風間俊六は建築業の親分となり、茶目っ気と男気があり、鋭さも若々しさも持っている男で、金田一耕助は、風間の二号だか三号だか十七号だか…がやっている旅館に住まわせてもらっている。(『黒猫亭事件』)
金田一耕助のパトロンは、久保銀造と、この風間俊六の二人に増えました 笑
なお、金田一耕助が警察と合同捜査できるのは「警察上層部の推薦状」を持っているからということ、そして人を惹きつける性質のためついついみんなが助けてしまうという人柄のため。
金田一耕助の捜査方法は、「警察による足跡捜査や、指紋検出から得た結果を論理的に分類総合して推理する」という方法です。
『本陣殺人事件』
終戦を迎えた横溝正史は「これからは本格小説一本でやっていこう」と決意する。
横溝正史が取り上げたテーマは「日本家屋における密室殺人」。どうやらこれが日本の推理小説初の密室殺人事件のということ。
昭和12年。
江戸時代には宿場の本陣であった一柳家で、40歳で当主で賢蔵氏と、27歳で元女学校の教師の克子の婚礼が行われた。
その明け方に鳴ったまるで引っ掻くような琴の音。そして悲鳴と倒れるような物音。
人々が夫婦の別宅に飛び込むと、そこには惨殺された夫婦の死体があった。
入り口はすべて閉ざされ、庭に積もった雪には足跡もない。
そこへ登場した金田一耕助という探偵。そしてまた琴の音が響き…。
===
動機が、没落する田舎の旧家で代々の気質が組み合わさって起こったかなり特殊なものになっている。それでも当時の閉鎖的な村の因習やら、登場人物たちの気質やらを考えると、この時代の本人たちにしてみたらそうなるしかなかったのか…と思えてしまう。
犯人は密室にするつもりはなかったのに、偶然の出来事と、犯人の心理が大きく動いたたために結果的に密室になった、ということがより劇場的になっている。
『車井戸はなぜ軋る』
K村の名家本位田家は、先代夫婦が車井戸に身を投げたことにより没落を辿っていた。
現当主の庄次郎は名家の跡取りとして鷹揚に育っていた。しかし彼には母親違いで小作人の伍一がいた。
二人は出兵し、庄次郎だけが戻ってきた。だが彼は盲目となり、人が変わったように暴力的な性格となっていた。はたして帰ってきたのは本当に庄次郎なのか。
『黒猫亭事件』
横溝正史は金田一耕助に「”顔のない死体”の推理小説って、だいたいが入れ替わりなんだよね。それだけじゃない”顔のない死体”推理小説が書きたいなあ、なにかいいネタないかい?」と聞いてみた。すると金田一耕助がこんな事件を提供してくれた。
色町の酒場「黒猫」の裏庭で、顔の判別がつかない女の死体が見つかった。「黒猫」の女将のお繁かと思われ、亭主の大伍の行方が捜索される。
だがこの夫婦にはそれぞれ密会の相手がいたらしい。お繁の男は建設業の親分の風間俊六。大伍の囲い女はお艶。
それではこの死体はお艶なのか、お繁なのか? -
金田一の朴訥とした人柄・風貌と、事件の凄惨さ・奇怪さがケミストリー。いつもながらじっとりとした湿り気をもっている。「本陣殺人事件」は密室殺人、「黒猫亭事件」は顔のない屍体という、推理ものの常套型・公式を破ろうとする試み・挑戦状に思えた。面白かった。
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昔、石坂浩二さんの金田一シリーズが好きで、その時に有名な作品は一通り読みました。中学~高校時代だったので、トリックは理解していたけど、肝心の殺人に至る物語を表面的にしか理解出来ていなかった事を痛感しました。改めて、時間が掛かっても読み返そうと思います。
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金田一シリーズの1作目。
自分にとっても初横溝作品。
3つの中編からなる小説。
どれも殺人事件。
内容を書くとネタバレになってしまうの書きませんが、今読んでもしっかりとミステリーしている良作。
悲しい話が多かったです。 -
わー。昔の表紙が復活している!やっば、角川文庫の金田一シリーズはこのおどろおどろしい絵でないとね。(笑)つーか、コワイ!
読了は確か学生時代です。
金田一耕助初登場の事件譚にして、その耽美的世界といい、個性的な登場人物といい、和風密室の謎といい、金田一が関わるにふさわしい難事件です(!)
その大仕掛けの密室トリックや、現代ではいまいち馴染めなくなった動機にしても、古き良き時代の探偵小説を満喫できる作品でした。
金田一初登場時の設定も面白い。 -
『陰摩羅鬼の瑕』を読んだら、どうしても『本陣殺人事件』が読みたくなってしまった。
随分久し振りの再読だったので、金田一耕助シリーズの語り手がY氏……もとい、横溝正史本人と気付くのに少しかかってしまった。そうか、伝聞調でストーリーが進むのだったっけ。
3編からなる1冊。表題の『本陣殺人事件』はまさしく『陰摩羅鬼の瑕』につながる部分がありつつも、趣きは180度違う。機械仕掛けのトリックも、物語の装飾如何で受け取る印象も深刻になる。琴と不審人物と雪……事件の背景としてこれ以上のものはないよなあ。
『車井戸〜』も『黒猫亭〜』も、人間の業の深さというか、ムラ的因縁とか、その辺の湿っぽさが壮絶だ。謎やトリックはもちろんのこと、そういった人間的背景が時代感も伴って物語に陰影を与えてるように感じる。
それにしても…………金田一耕助というキャラクターは、魅力的でずるいよなあ。事件の合間を飄々と飛び回る。「金田一耕助」だからこそ、この一連の事件簿はたまらなく面白いのだろう。他も改めて読み直してみようかな。 -
「本陣殺人事件」「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」
この3つの作品が入っているのですが、どれも面白いです。「密室」「一人二役」「顔が不明の死体」の3種類なのですが・・・ちょっと現実離れしているトリックもありますが、それがまた面白い!
金田一シリーズは読めば読むほど引き込まれていきます。 -
1.おすすめする人
→探偵小説が好き、日本文学を感じたい、
ハラハラしたい
2.内容
→金田一耕助の絡む話が3話入っている短篇集。
中でも「車井戸はなぜ斬る」は
かなりゾッとした。
人間の狂気が全面に現れた作品。
没落貴族から復讐を受け、
また復讐を受けた貴族も没落貴族へ堕ちて行く。
名言が多数含まれている。
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『本陣殺人事件』名探偵金田一耕助の推理が光る。旧家の新郎新婦が惨殺死体で発見された。密室トリックの作り方と、犯人の意外性が良かった。ラストの語り手の記述に嵌められた。
『車井戸はなぜ軋る』本位田家という名家の娘が療養中の兄に宛てた手紙で物語が進む。
戦争から復員したもう一人の兄と、その異母兄弟が入れ替わっているのではないかという疑惑が、サスペンスの雰囲気を醸し出していた。殺人のトリックも井戸を上手く使っていた。
『黒猫亭事件』黒猫という店で相好の分からない死体が見つかった。『顔のない死体』は密室殺人、一人二役に並ぶ探偵小説の大トリックである。警察の捜査は難航するが、金田一耕助は分かっていた。最初の、探偵小説家の「私」と、金田一耕助の会話がラストに効いてくる。一人二役は読者に悟られてはならない、伏せておくトリックである。
金田一耕助は凄い。難事件をいとも簡単に解決する。正に名探偵! -
宿場本陣の旧家、一柳家。その婚礼の夜、琴の音色とともに、離れにいた新郎新婦が血塗れの死体で発見された。降り積もる雪によって密室となった離れで起こった殺人の謎は?表題作を含め、3編収録の短編集。
ぼくは横溝正史作品を犬神家、八つ墓村、獄門島と読んできて、これが四作目。短編集とは思えない濃密さで、ぼくは一番好み。日本家屋での密室殺人、手紙で語られる事件の謎、顔のない死体と、どれも切り口が違う面白さ。二転三転する謎と真実に翻弄される魅力に満ちている。
「だからこの事件のほんとうの恐ろしさは、いかにしてああいうことが行われたかという事より、なぜああいうことが行われなければならなかったかという事にあるんです」
金田一のこの言葉はまさに横溝正史作品の魅力を語っていると感じる。謎や仕掛けだけじゃなく、人を深く描くからこそ事件に色がついてくるのだと。その密度に関してはとても安定していて安心感すら覚える。
『本陣殺人事件』は日本家屋で起きる密室殺人というキーワードだけでも面白いのに、散りばめられた謎の数々!それですら、事件の背景に潜むドラマの前振りでしかないというのがすさまじい。と見せかけておいて、ミステリのおいしい部分もちゃっかり仕掛けてあるので油断も隙もあったものじゃない(笑) 実際のミステリ作品も登場していて、それを追っていくのも楽しそう。
『車井戸はなぜ軋る』は事件関係者の鶴代から兄・慎吉への手紙の中で事件の変遷が語られていく物語。復員した長男・大助は本物なのか。村落の中で疑心暗鬼に囚われていく本位田家の内情が臨場感たっぷりに描かれる。心理描写の巧みさと、屏風や兄の存在という要素がホラー味もあってドキドキしながら読んだ。終盤の展開や金田一の絡み方も上手いよね。
『黒猫亭事件』は売られたお店の敷地から発見された顔なし死体から始まる殺人事件。顔なし死体と言えば入れ替わりだよね!っていう考えに真っ向から勝負してくれる作品。黒猫の死、愛人の存在など、様々な要素が回収されていく気持ちよさ。そして、事件を引き起こす人間の情念も嫌というほど書き綴ってくれている。
ここまで読んだ感じだと、金田一耕助シリーズを読んでみたいなら、この作品から始めてもいいかも。それか『犬神家の一族』か『獄門島』が読みやすいかな。『八つ墓村』はその後でもいいかと思う(金田一が活躍しないので。話は面白い)。 -
横溝正史の作品を初めて読みました。
江戸時代からの宿場本陣の旧家、一柳家。
一柳家の長男である賢蔵と女学校の先生をしていた克子。
その二人の婚礼を終えた深夜四時に人々の悲鳴と琴の音が響き渡る。人々が離家に行くと座敷には新郎新婦が血まみれで殺されていた。枕元には、家宝の名琴"おしどり"と三本指の血痕の付いた金屏風が残され、一面に降り積もった雪は、離家を完全な密室にしていた……。
金田一耕助の初登場となる作品!
密室殺人事件の設定やトリック、次々に明らかになる事実に惹き込まれました。
最後まで本当に面白かったです。 -
中短篇3篇を収録。
『本陣殺人事件』
正直なところメイントリックに関しては、過去に映像作品でも観た事があるし、あまりにも有名なので予め知ってはいた。しかし実際に原作を読んでみるとやはり面白かった。密室殺人の真相解明にいたるまでのロジック。ミスリードの巧みさ。そしてなにより『三本指の男』の来訪理由には感心した。文章は抜群にうまいし、構成や演出も素晴らしい。ミステリはトリックだけわかっていても(凄くても)ダメなんだという事を再確認。あらためて横溝正史の偉大さがわかった一作。
『車井戸はなぜ軋る』
いきなり二行目に挑戦的な一文が。
「付、本位田大助・秋月伍一生き写しのこと」
西村京太郎『殺しの双曲線』の序文「この推理小説のメイントリックは、双生児であることを利用したものです」に匹敵する驚きと警戒心を抱いた。そしてやっぱり面白かった。途中『犬神家の一族』を思い起こさせる場面あり。いろいろな仕掛けが短篇にギュッと詰まっていて、これまた感心。
『黒猫亭事件』
序盤で横溝先生らしき人が探偵小説講義をやるのが面白い。しかも「密室の殺人」「一人二役」「顔のない屍体」について。そのうえ「一人二役」型は最後まで伏せておくべきトリックであって、この小説は一人二役型らしいと読者に感づかれたら負け、などと抜け抜けと書いているのが最高。そして今回は『顔のない屍体』という導入。終盤のひねりにまたまた感心。
それぞれ独立して素晴らしい出来のミステリ中短篇だが、『本陣殺人事件』『車井戸はなぜ軋る』『黒猫亭事件』をピックアップし、この順番で編んだ角川文庫版の編集者に拍手。相乗効果で作品の面白さが格段に上がっている。
金田一ものの一連のシリーズは、探偵金田一耕助が体験した事件を語り、作家横溝正史(らしき人物)がそれを小説に仕立てるという体で書かれている事がわかったのも楽しい収穫だった。 -
改めて古典の良さを感じました。
密室トリックです。
日本屋敷の雪密室です。
これだけでも幻想的で私好みのシュチュエーションなのですが、さらにトリックで使用されるものとして日本古来の物がたくさん出てきて、その点も雰囲気あって素晴らしかったです。
一緒に収録されている「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」も高レベルな作品です。 -
久保銀蔵や磯川警部といった金田一耕助シリーズの主要人物達が登場する作品。
久保銀蔵は金田一の支援者で、本陣殺人事件の被害者である花嫁克子の叔父。
私はこの銀蔵氏がとても好きなのだ。彼はこの時代にアメリカへ渡り苦学してカレッジを卒業している。渡航すること自体大変なことだろうに、さらにあちらで働き生活をしながら自力で学校を卒業したのだ。物語の人物だとしても、とても尊敬できる人物である。また、金田一がアメリカにいた頃に彼の学費の面倒をみたり、帰国後も何かと気にかけて援助をしたり、金田一が「おじさん」と呼ぶところを見ても彼と金田一の信頼関係がよく分かる。 -
あまりにも有名すぎて読む気が起こらなかった金田一シリーズ。。
個性豊かな人間たちの意味深な関係や、田舎特有の鬱屈とした雰囲気づくりが巧みで物語に没入できた。時々登場する少女のしおらしく可憐な様子が薄暗い感じを助けていて一層よかった。
とにかく作風が好みだった。
この筆者と、「一族」とか「獄」とか「村」の雰囲気はかなり相性が良さそうなので他の作品も読んでみたい。 -
本陣は、序盤の雰囲気が怖くてちびちびページが進まなく困った。
でも、ただの雰囲気作りじゃなくて、一つ一つに意味があったのはすごいと思う。
あと、トリックを実際にやってみた映像がYouTubeに上がってて、テンションが上がった。
車井戸は、鶴代が悲惨すぎる⤵︎ビックリ死ってやつなのかな⁇
黒猫は、一番読みやすいミステリーしてて、読みやすく面白く思った。
金田一耕助はお初だったけど、この名探偵の喋りや頭をかきむしる癖だったり、良いキャラしてんなーって惹かれしまった。
次は獄門島かなー -
突然はじまった『ひとり横溝正史フェア』の二冊目は「本陣殺人事件」。
金田一耕助シリーズとしてなら戦前の若い金田一耕助のはじめて扱う事件。こちらを先に読むのが順序だと思うけれど、「八つ墓村」が読みたいなとはじまった『ひとり横溝正史フェア』なので、この順番でいいのかなと。
こちらは結婚初夜に起きた密室殺人事件を金田一耕助が見事な推理で解き明かすというもの。
読み返して気づいたけれど、本書には「本陣殺人事件」の他に二篇の短編が収録されていた。「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」のふたつ。
数ある金田一耕助シリーズの中では、こちらは正直それ程好みではない。
元々、横溝正史作品での殺人事件では、そこまでやるかといった演出が魅力でもあるので、そこを否定するとどうにもならない。
ただ、「本陣殺人事件」に用いた密室トリックの余りにもアクロバティックな方法が、とてもではないが真実味に欠ける。
事件に意味を持たせる見立て殺人としての演出と、事件のそもそもを問う密室作りとしての仕掛けでは意味合いが違う。見立てはばれても殺人の目的は遂行出来るが、密室の謎は解明されては元も子もない。
そんな大切なところに、こんな一か八かの大勝負を仕掛けるなどといったギャンブラーなことをするというところと、犯人の性格に整合性がないように感じてしまう。
なんてことを置いておいても面白く読めるけれど、ちょっとケチをつけてみました。
同じように「黒猫亭事件」もやや無理があるかなとも思えるけれど、小品としてでここまでの仕上がりはさすが横溝正史という感じ。
個人的には「車井戸はなぜ軋る」は短い作品であるのに、いや、短いからこそピリッと締まった作品に感じられた。
随分斜め上なことを書いてきたけれど、つまらなかったら『ひとり横溝正史フェア』は早々に終了するところを、間に他の作品を読みつつつづいているので、つまりは横溝正史って面白いねということだ。
現在、「獄門島」を読んでいる。
犯人がわかった状態で読む推理小説も、横溝正史くらいになると違った楽しみ方があってこれはこれでいいのかもしれない。 -
金田一さん初登場の本作、まだ読んでなかった。本陣の密室のトリック、なんじゃこりゃあー!!!と松田優作もびっくりな(ちょっと古いかww)すごい仕掛けが。。。こんなの、どうやって考えつくの横溝さん?と言いたい。
あとの2編は、黒猫亭が好きかなー。黒猫亭、まんまと騙されたわ(笑) -
昔ながらの推理小説って感じで大好き。
短編の推理小説が3作あったんだけど、自分的にはミステリってやっぱり長編の方が読み応えがあるんだよね。短編だと結末までがあっさりしてしまうというか。
それを差し引いても面白かったっす。 -
表題作のほかに、「車井戸はなぜ軋る」と「黒猫亭事件」が入ってます。
「本陣殺人事件」は雪の降る婚礼の夜、古風な日本家屋で密室殺人事件が起こるという話。
舞台や小道具(琴や日本刀など)に雰囲気があって、いくつかの探偵小説が出てきて、そういう探偵小説を意識した作りになっているところが面白いです。
「車井戸はなぜ軋る」は井戸の役割になるほどと思わされます。
「黒猫亭事件」は「顔のない屍体」ものに関する言及が最初にあってそこから始まる話で、こちらも既存の探偵小説を意識してる感じ。
著者と金田一耕助の初めての出会いのシーンが茶目っ気があって楽しいです。 -
初横溝正史作品。
表紙復刻に魅せられて買ってしまいました。
字体に古さを感じるけど、練られたトリックと、入り乱れた複雑な人間関係は現代でも通用する傑作でした。
表題作よりも、「車井戸はなぜ軋む」が、面白かったです。文通形式で進むタッチは読んだこと無かったので、意外と新鮮な気持ちで楽しめました。
黒猫亭事件は、人間の汚さ、おどろおどろしさが詰まったくらーい話でした。
実は絵文字というのは鉄砲と一緒に種子島に伝来されたもので。
って、なんでやねん!
実は絵文字というのは鉄砲と一緒に種子島に伝来されたもので。
って、なんでやねん!
当時、絵文字の破壊力は凄かった!
当時、絵文字の破壊力は凄かった!
よし、わいが一番いい感じにまとめたな(≧∇≦)b
(自己評価甘め)
よし、わいが一番いい感じにまとめたな(≧∇≦)b
(自己評価甘め)