- Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061856981
作品紹介・あらすじ
世界初の脳移植手術を受けた平凡な男を待ちうけていた過酷な運命の悪戯!
脳移植を受けた男の自己崩壊の悲劇。
平凡な青年・成瀬純一をある日突然、不慮の事故が襲った。そして彼の頭に世界初の脳移植手術が行われた。それまで画家を夢見て、優しい恋人を愛していた純一は、手術後徐々に性格が変わっていくのを、自分ではどうしょうもない。自己崩壊の恐怖に駆られた純一は自分に移植された悩の持主(ドナー)の正体を突き止める。
感想・レビュー・書評
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優しく従順な青年が、強盗事件に巻き込まれて、脳の一部を破損する。
そこで、世界初の脳移植手術が秘密裏に行われる。手術後、徐々に人格の変化が認められる。
彼は、彼の脳の一部となったドナーを探し始める。
脳の欠損は、他部分から修復されていくというような事を聞いた事がある。
遂に確定したドナーは、彼を撃った犯罪者であり、その凶暴性が彼の元の人格を制圧していく。
医者達が、手術の詳細を隠そうとしたり、手術の成功をのみを追い求めようとするところは、ありがちかなと思う。
最期の一瞬に元の人格が戻るというところが東野さんらしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とても面白かったです。怖さと切なさもありましたが。脳の「一部」を移植した、という点が本作の肝ですね。全移植であれば恐らく目覚めた段階で別人格となり、以前の自分の記憶は何一つ無いので、きっとこのような物語にならないかと。一部だけ移植した結果、次第にその一部の別人格が本体脳を侵食していくというのが、とても怖く切ない話しに感じられます。作中、僕という一人称が途中から俺に変わっていたり、言葉遣いや行動が徐々に荒々しくなっていく様がとても印象的です。この話、当然フィクションではありますが、仮に脳移植というものが現実的か否か考えた場合、こういった事態が起きる可能性や倫理的な観点から医学世界でもタブー化されているんだろうなと感じました。いずれにしても、相変わらずの東野さんの素晴らしい文体に惹き込まれ、とても楽しくあっという間に読むことが出来ました。
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自分を失うことについて。
最初から持っているものを失っていくのが一番怖い。
世界初の脳移植を施され、一命を取り留めた成瀬純一。
心優しく、気弱な彼が術後から様子がおかしくなっていく。性格が凶暴化し、趣味が変わり、生活がガラッと変わっていく。他人の脳を移植されたことで性格や様子が少しずつ変わっていく彼がたどり着く先は?
主人公の葛藤や昨日の自分と今日の自分が変わっていること。そういった描写が鮮明でとても面白い。 -
これはミステリーというより、ある意味ホラーに近いかもしれないが、しかしそこは東野作品。しっかりのめり込ませてくれます。
自分ではどうしようもない運命に立ち向かっていく主人公。必死に戦い抗い続ける描写がドキドキハラハラさせてくれます。 -
記録
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脳を銃で撃ち抜かれた青年が、脳移植を受けて生還するが、人格に変化が現れ別人のように変身していく。
脳移植を執刀した堂元教授の記録[堂元ノート]から始まり、[堂元ノート]で幕が閉じられます。主人公、純一の恋人である恵の[日記]や、倉田刑事の[メモ]を挟みつつ、純一の視点によって物語は進みますが、次第に人格が変化し狂暴するため一人称が「僕」から「俺」へと変化するところがおもしろいです。
また、それらの変化をあくまで研究材料とし、最後まで宿題を課す[堂元ノート]の冷徹さも印象深い。
唯一、最後の恵が大事にしたものだけが救いでした。
ドラマを先に観てからの原作だったため、ドラマでの恵と純一の純愛の印象が強く、それに比較すると純一の狂暴さばかりが際立っている印象でした。
でも、歯止めがかからない変身ぶりは最後まで一気に読んでしまいました。