文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.01
  • (1996)
  • (1309)
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  • (55)
  • (12)
本棚登録 : 12982
感想 : 1192
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  • Amazon.co.jp ・本 (1060ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062646673

感想・レビュー・書評

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  • 1000ページ超の物語を読み終えて、さすがにぐったりした。
    箱詰めにされた少女たち、バラバラ殺人、箱を祀る霊能者。
    何もかもが奇妙で不気味、もう正直狂ってるとすら思う。
    なのに読む手が止まらない。
    複雑に絡み合った事件の真相を次々と解き明かしていく京極堂が見事で脱帽するしかない。

  • 百鬼夜行シリーズでは1番好き

  • 伏線の回収がどれも衝撃的なものばかり。
    ラストの研究所とその直前の頼子の描写はグロテスクなものが多く「うっ」となることが多かった。しかしただグロテスクなだけではなく、それぞれが綺麗に存在しているのが印象深い。
    読み進めていく上でタイトルの意味、事件の関係性が最後一気に暴かれた時は興奮さえしました。
    とても面白かったです。

  • ラスト、怖かった。。。

  • 夏になると読みたくなる京極堂シリーズ。
    圧巻のウンチクの嵐。これが快感になる。

    (同じくウンチクの嵐で分厚い小説、図書館の魔女は全く受け付けなかったのに、どうしてこちらは大好きなのだろう…我ながら意味不明で理不尽である)

  • 好き。
    なっがーい、けど必要な長さ。
    木場修はここでキャラクターが出来上がったね。
    榎木津だけがまだだなあ。
    関口くんって実際会ったら風采の上がらない好ましくない人物だろうなあと思うのだけど、京極堂にこんなに愛されているのは、どうしてなんだろう。何が魅力?
    そう言えば、「ほう」に一時期嵌まったなあ。
    腹筋を使わない発声って難しいのだ。

  •  本書でも姑獲鳥の夏と同様に、いたるところに魍魎のイメージが貼り付けてある。妖怪は人々の噂から生まれ、偶然起こった不思議な現象のことを名付けて、姑獲鳥や魍魎というものになる。この小説のように現実には京極堂がいないので、不思議な現象は妖怪の仕業や、呪いという言葉で片付けられる。著者は至る所に特定の妖怪のキーワードを使って、妖怪が発生するという状況を生み出しているのだ。つまり、この世には不思議なことなど何もない。
     今回は前回よりも長かった。持つのが疲れる。だが、この長い説明により、偶然が必然に変わり、フィクションがリアルに感じられる。著者の長文は、映画における背景美術のようなものと言っても良い。世界を具現化して、偽物臭さを消す役目がある。文章が読みやすいのでそこまで大変ではない。
     著者の小説では犯行のシーンを書かない。全てが終わってから予想するだけだ。この仕掛けによって、事件の色が見えず、まるで妖怪のようにフワフワとしている。凡百に犯行シーンをグロテスクに書くと、読者は理解し過ぎてしまい雰囲気は違ったものになるだろう。
     魍魎とは何か。それは境界的なものだと京極堂は言う。人は誰しも犯罪を考える。それを実行するかどうかは突発的なものになる。突発的に殺人を犯してしまいそうになる瞬間が、頼子にも訪れる。美馬坂に詰め寄る木場にもそれはやってくる。人が犯罪を犯すのは衝動的なもので、その超えてしまう境界にいるのが魍魎なのだ。誰もが魍魎に魅入られると心の内に秘めた衝動が現実になってしまう。どうやったら防げるのか。気を引き締めとくしかないのだろうか。
     雨宮や久保が行ってしまった向こう側とはなんだろうか。雨宮も久保の匣の中にいる加菜子を見て人間を止めてしまった。人間を止めるとは、この世に生きていないということで、もう現実を見てはいない。雨宮は加菜子を抱えたまま、幸せを感じたまま死んで行くのだと思う。久保も同様に加菜子を見て人間をやめたのだろう。もし、関口が最後の時に、匣に入った久保を見ていたら、関口も向こう側へ行ってしまったかもしれない。関口のように不安定な人は、向こう側へ行きやすい。
     久保、頼子、陽子、美馬坂、雨宮、などなど多数の人物の物語が繋がっていく様子は見事な手腕だ。どのように構成作業をすれば、このような緻密な物語を紡ぐことができるのか。非常に気の遠くなる執筆だと思う。書いているうちに魍魎になりそうだ。

  •  高橋悠治が曲をつけているので、谷川俊太郎の「箱」という詩を知っている。
     空っぽでも気にしていなかった箱は、ある日、人柄が変わって、小声でヴェルディのアリアを歌い、中に何か入れるんだ、手足のもげた人形でもいいと涙ながらに言い張るのだ。
     といった内容の詩を京極夏彦は知ってか知らずか、手に持てるような箱に生きた少女がみっしりと詰まっているという小説、つまり作中作の断片を示しながら、『魍魎の函』という話を進めていく。私は15年くらいぶりに読み返す。

     14歳の頼子と加奈子、ふたりは親の目を盗んで夜の小旅行に出かけるが、頼子の目の前で加奈子は鉄道事故にあって、瀕死の重傷を負う。ちょうどその列車に乗り合わせた警視庁刑事・木場が事件に巻き込まれる。加奈子が担ぎ込まれる箱のような形をした怪しい医学研究所。母子家庭で無理をしてお嬢様校に入れてもらっている頼子は母とうまくいっていない。母は家に取り憑いた魍魎を箱に押し込めて除いてくれるという怪しい霊能力者を家に呼び入れる。
     この木場や頼子の視点で三人称で語られる部分と、小説家・関口の一人称の部分が初めのうちは交互に配置される。関口はカストリ雑誌の編集者・鳥口とともに連続バラバラ殺人事件の取材に行く。今回の舞台は神奈川なのだが、相模湖に人間の足が箱に入れられた沈められていたのだ。そこでたまたま、箱のような異様な建物とそこにいる木場に出会う。さらに鳥口は霊験あらたかな箱を用い、信者たちをどんどん不幸にしていく霊能力者を取材しようとしている。
     関口と鳥口は京極堂のところに話を持ち込む。さらに推理しない探偵・榎木津のもとにも関連した依頼が舞い込む。榎木津、快刀乱麻の活躍だが、何も解決しないのはさすが。
     箱は箱だけでいいのか、中身が必要なのかという問いを幾人かの登場人物のあり方に投げかけながら話は進む。しかしこれらの事件は連続した事件ではないのだと京極堂はいう。だいたい5人くらいの殺人者がいるのだよ、この小説は。京極堂は何かを知っているのだが、それを明るみに出したくないと思っている。

  • あまりの分厚さに躊躇してはいけません。読みだして3分後、その分厚さの戸惑いがわくわく感に変わるでしょう。
    前作同様、医学・社会学・民俗学・心理学・・・といろんな専門的言語が飛び交い、読書中の言葉の検索回数は圧倒的だけれど、それがまたこのシリーズの読書の醍醐味のような気になりアドレナリンが爪の先まで行きわたる。
    私が生まれる前の知りもしない時代背景だけれど、モノクロームの少しピントの合わないような映像が私の頭の中で確かに再現される、タイムワープした気持ちにさせる変な現実感を感じさせる作品だった。

  • 1995年出版。

    まだ年齢が一桁のうちにジョジョや多重人格探偵の洗礼を浴びた私にとって、その分厚さに尻込み、その不吉を畏れ、また万一拍子抜けする中身であったらという仮設された落胆を忌避して触れてこなかった作品ですが、いやはや……言葉もありません。凄まじすぎて。大作ですよ。スケールが違いすぎた。精密さも。だめだ、まじで、なんもいえねぇ

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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