永遠の0 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764131

感想・レビュー・書評

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  • 「永遠の0」(映画は見てないので原作のほうね)がダメダメなのは、現代パートの展開があまりに稚拙とか、回想パートが一本調子なうえにくっそ長いとか、文章がそもそもアレとか、数え上げたらきりがないのけど、なにより物語としての核心部分がまったく描けてないってことなんだよね。
    それは「なぜ宮野久蔵だけが特異な行為者たりえたのか?」という問いに集約できる。本来考えなくてはいけないのは、宮部が特攻に臨んだ理由をめぐる問いではなくて、それ以前において彼がすでに特異な立場にあったことなんだよ。お国のために死ぬことを是とする中で、そもそもなぜ宮部だけが死を避け生きることを公言できそのために行動できたのかという特異さこそ、問われるべきなんだよ。
    んで、その問いへの回答は「妻子のもとに生きて帰りたいという強い意志」なんてのでは十分でない。というか、ぜんぜん足りない。
    だって、戦地には何万という特攻隊員、何十万という日本兵がいて、その多くが、生きて帰りたい、妻子と再会したい、と強く望んだはずだもの。そのことに関しては宮部も他の兵員たちも同じであり、何ら変わるところはない。それにも関わらず、彼らは自らの希望を口に出すことも能わぬまま死地に赴き、宮部だけが自らの意志を口にすることができ、また実際に行為を成すことができた。
    それはなぜか?なにが宮部と他の兵員たちとを分けたのか?意志の力のみには還元できない決定的な要因が宮部と他の兵員たちとの間には横たわっていたはずで、それこそが問いの核心なんです。それを問わない限りは宮部の行為が理解されることはない。
    でも、作中において、その問いに対して何らの回答も示唆も存在しない。だから、宮部はたんたんと話したんたんと行うのみであり、その内側や背景を読み取ろうとしてもなにもない。ただただ空白ばかりがある。そうじゃなくて、宮部が宮部たり得た理由が示唆されなきゃならんし、そうなって初めて最終的に宮部が特攻に臨んだ理由も説得力を持つんです。それがすっかり欠落しちゃってる。
    一方、宮部本人ではなく、他の兵士たちの悲哀をこそ書こうとしているのだから、そこまでは考える必要はないという考えもあると思う。でも、描きたいのが他の兵員たちであるならばなおのこと、彼らが宮部になれなかったその訳を考えなくてはいけないし、だからその意味でも問いは極めて重要性なんですよ。
    そんなこんなで、いちばん大事な核心部分が完全に看過されたまま話は進んでいくわけですから、小説として成立してないんちゃう?と。少なくとも致命的な欠陥だってことは間違いない。
    もしそうと気づかずに看過したのなら作者はあまりにまぬけだし、気づいていながら看過したのなら不誠実にすぎる。僕らだってバカじゃないんだから、そういう手抜きとか不誠実とかはイラっとするわけですよ。読者なめんなよ!ってね。ナイトスクープは大好きなんで、そっちに集中してほしいとこです。

  • 昨年8月広島に、今年8月長崎に行った。
    恥ずかしながら35年生きてきて初めて原爆の歴史に触れた。
    宮崎駿「風立ちぬ」も見た。
    零戦を作った男たちの世界に触れた。
    そして、ついにこの本にたどり着いた。
    零戦に乗って戦った男たちの魂に触れた。

    今ある日本は、たくさんの人々が命がけで守った日本だ。
    なのに、私たちは我がもの顔でこの国に生き、
    この国を汚し、この国を蔑ろにしている。
    愚かなことだ。
    生きたくても生きられなかった人々の犠牲のうえに私たちはいる。
    それを忘れてはならないとこの本は強く訴えてくる。

    今年は戦後68年目。
    戦争体験者の数は減る一方で、増えることはない。
    この本が語り部となり、歴史が語り継がれることを祈りたい。

  • 夢中で読破した。
    全日本国民が読んだ方がいい。

  • 読み終える頃には溢れるように涙がでてしまった。
    妻との約束を守るべく生きてきた彼が何故死を選んだのか。
    ミステリー作品とも言えそうなストーリーと人間ドラマは作者の巧みな文章で各章でも読むものに感動を与えるのだが最終章で解き明かされる事実は、近頃めっきり涙もろくなってきた私でなくとも涙をこらえることができないのではないだろうか。
    作品のメインテーマにからみながら語られる戦争と兵士、日本人、零戦とその空戦も興味深く読める。
    多くの人がこの作品に触れて、愛とは何か、勇気とは何か、戦争とは何だったのか考えてみるべきではないかと感じた。

  • 何を評価するのかによるとも思うが、この本の評価は高すぎる気がする。

    ワンパターンの回想形式。その間に挟まれる主人公達の反応は、狙い過ぎでチープなことこの上ない興ざめする演出だ。

    戦争をネタにして受けてるだけだろうが小説としての良さも面白さも何一つない。今後この作者の作品を読むことはきっとないだろう。

  • 戦死した祖父の過去を孫の健太郎と姉の慶子が
    明らかにしていく物語。

    知人に出会う度に明らかになる祖父の素顔に驚き、零戦のドッグファイトにハラハラし、泣きながら読み進めた。

    戦争について初めて知ることも多く、戦うことの辛さ、恐怖、悲しみなどが伝わり、自分と同じ歳(若い歳)の人がどんな気持ちで生きていたのかが胸を打った。

    物語では零戦の描写が多く出てくるが、とても躍動感があり、映像を見ているような錯覚に陥る。

    冒頭の「俺は忘れない。あの悪魔のようなゼロを・・」でがっちり心を掴まれ、夢中で一気読みしてしまった。

    非常に感動した作品で戦争の惨事を風化しないためにも、たくさんの人に読んでもらいたい♪

  • 先に待ち受ける圧倒的な死の結末が怖くて、途中何度も読むのをやめようと思った作品です。
    でも、天才ゼロ戦乗りの宮部さんにどうしようもなく惹かれて、、ラストまで泣きながら読みました。

    わたしの祖父もサマールで戦死しました。遺体はおろか、遺骨すらありません。祖母はその後、独身を通し、92歳で逝きました。
    この時代を生きた人たちに敬意を感じずに入られません。私たちも懸命に生きないといけないのです。なぜならば、未来を夢見ることすら許されなかった人たちが、この時代には確かにいたのですから

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「この時代を生きた人たちに敬意を感じずに」
      清濁色々あるでしょうけど、先人あっての私達ですから、、、単純に批判はしちゃいけませんよね。そう言...
      「この時代を生きた人たちに敬意を感じずに」
      清濁色々あるでしょうけど、先人あっての私達ですから、、、単純に批判はしちゃいけませんよね。そう言う人は自分自身が後生の方に批判されるでしょう。。。何にせよ、恥ずかしくない生き方をしたいものです。。。
      2013/03/08
    • HNGSKさん
      にゃんこさん>>本当にそのとおりですね。
      恥ずかしくない生き方がしたい。けれど、どんな生き方が恥ずかしくないのか、いまだ分かりません。
      まだ...
      にゃんこさん>>本当にそのとおりですね。
      恥ずかしくない生き方がしたい。けれど、どんな生き方が恥ずかしくないのか、いまだ分かりません。
      まだまだ未熟者の私です。
      2013/03/08
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「まだまだ未熟者の私です。」
      だって、まだまだコレからですもの。。。「熟れて」落ちる時は、種になる時だと思って、それまでは「熟さずに」勉強?...
      「まだまだ未熟者の私です。」
      だって、まだまだコレからですもの。。。「熟れて」落ちる時は、種になる時だと思って、それまでは「熟さずに」勉強?しましょう。。。
      2013/03/12
  • 戦争の悲惨さが、丁寧に、様々な視点から描かれていた。説明が丁寧で、あまり歴史に詳しくない自分でも理解することが出来た。死にたくなかったはずの祖父がなぜ特攻したのか、という謎を解いていくある意味でミステリー的な1面もありながら、同時にその悲惨さもよく伝わってきた。祖父のことを知っている人一人一人の証言を読んでいくという構造だったが、最後の一人の話を読んでいる時はずっと泣きっぱなしだった。その一人一人の話を聞いていく形式はこの人の話を最後に聞くためだったんだとも思った。何より祖父がとても魅力的な人だった。特攻した理由を知った時は、納得や悲しみや尊敬やたくさんの感情を持った。、フィクションとしても、実際の歴史を元にした話としても、この先ずっと忘れたくない作品。

  • 特攻隊の事、激戦となった地の事。。。体験した人々から話を聞くと言う設定が、より生々しく戦争の悲劇を描き出している。
    ニューヨークの同時多発テロ以降、日本の神風特攻隊がISの自爆テロと同じであるというような発想や議論があった様だが、それを唱えるジャーナリストに対し怒りを持って反論する元隊員の姿に自分も共感していた。
    冒頭、特攻隊の攻撃を受ける米軍兵の視点から始まるこの物語は、エピローグでは米軍が敬意を持って主人公の特攻隊員を水葬に付してくれた。
    敵も味方もなく全ての人間にそれぞれの人生があり、自分に置き換える想像力があれば戦争なんて起こり得ないと思うのに、それは繰り返される現実を考えさせてくれるものだった。

  • 先人のお陰で今が有ると思わせてくれた一冊でした。
    人としてこの様に居たいと改めて感じさせて貰えました

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著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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