- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062883696
感想・レビュー・書評
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森金融庁長官の改革を中心に、その考え方、背景、人物、先進事例などについて紹介する。一昔前に話題になった一冊で、時事ネタなので1年半もたってから読むのもどうかと思うが、まあ気にしない。
日本の失なわれた20年について、地域の中小企業を支援する機能を失い、低金利競争にのみ突き進んだ地銀、第二地銀と、それを結果的に後押しする形になった金融行政に原因を求めるというのは、ちょっと言い過ぎな気がするが、しかし、第四章の稚内信用金庫、北國銀行、きらやか銀行、北都銀行の事例は面白く、楽しく読める。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ちょっとタイトルから想像していた内容とは違った。たしかに、バブル崩壊からゼロ年代くらいの、事業内容や企業の成長性をまったく鑑みず、返済可能性や自己資本などばかりを気にして貸付を決定する地方銀行の怠慢などは十分に指摘されているのだけど、それよりも金融庁を変革して地銀を変えさせようとした森信親氏や日下智晴氏などを礼賛するドキュメンタリーといった色合いが強い。そのうえ、金融の専門用語がかなり飛び出し、一般人だとわかりにくいマニアックな言い回しが多いので、読むのがしんどかった。
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捨てられる銀行
銀行、特に地方金融についてのレポート。異端児である森金融庁長官の改革と、そのブレーンについても書かれている。
増田寛也氏の地方消滅や自分自身の北海道旅行から地方の金融に興味をもって読んだ。現在起きている銀行の機能不全とは、極めて役所的な金融庁マニュアルに則ることばかり考えすぎて、本来の銀行業・金融業の意義である、将来的に拡大するのであろう企業や地元に密着した中小企業などへの融資が少なくなっていることである。財務諸表だけでは表れない地域との関係性や将来性に対する目利きが圧倒的に低下したことによって、銀行がマニュアル的な融資しかしなくなったことが地方金融の衰退の原因でもある。また、バブル時代の信用保証協会による100%の保証により、融資の緊張感や基準が弛緩し、無謀な融資が増えたのも拍車をかけている。現在進行形で起きている地方の衰退は、地銀の目利き力とネットワークを活用した粘り強く、かつアグレッシブな展開でこそ、食い止められる問題であり、食い止めねばならない。ハゲタカでも出てきたが、銀行の不良債権問題の本質は根深く、外科的手術も必要ではある。しかしながら、不良債権を請け負う銀行系サービサーに多くの銀行OBが出向しているものも多く、根本的な問題解決にならない。銀行内部の売り上げ競争に奔走するばかり顧客満足を軽視しているという点もあるが、これは実際に銀行で働いたことはないのでわからないが、難しい問題だと思う。数字上の向上を標榜しなった時の士気の低下およびそれが招く銀行の弱体化と顧客満足の軽視のどちらを取るかと考えると、短期的な利益を考えた場合、難しく、トップの「英断」が必要であろう。本質的には、定性的な評価体制が確実に必要で、それを伝搬して、企業の様な集団レベルで実践していくには、粘り強い呼びかけが必要なのだろう。 -
銀行の存在意義についてのレポート。
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森信親金融庁長官に変わってから、従来の担保主義による貸出しだけではやっていけなくなる特に地銀にスポットを当てて問題提起している。
不良債権処理のための検査マニュアルを金科玉条にし、貸出先企業の本質を見極める努力も放棄してただただ担保や資産に基づいた融資だけを行い、その企業が経営難に陥れば真っ先に融資の引き上げに走る地銀の断罪は膝を打つ。
財務諸表には現れないその企業の将来性までも考慮に入れ、さらにその地域の活性化という地銀本来の役割を全うしようとする銀行の話は勇気づけられた。
僕の知識レベルではちょっと難しいところもちらほらあった。
東芝が医療部門や半導体部門を切り売りすることで当座の資金を捻出した結果、将来性ゼロの会社になってしまったように、短期の利益とリスク回避しか頭にない銀行の態度は本当に腹が立つ。
自分の怠慢を棚に上げて業績悪化をマイナス金利のせいばかりにして企業への本来の支援を怠っていると、ICOやクラウドファンディングなどの発達でそもそも銀行事態が不要になってしまうんじゃないだろうか。 -
銀行の間接金融機能(融資)について、森金融庁長官の考え方を解説したものです。
リレーションシップバンキングというものが実現可能なものかどうかはよくわかりませんが、すくなくとも単なる金利競争と金融検査マニュアルに基づいた格付け、担保評価などしかしないのであれば、AIにとって代わられるのだろうと思います。 -
金融機関の実態をよく表している。
バンカーも社内事情は箝口令を引かれていることもあり、今後の方針としていると聞いている。 -
日本金融の独善性と顧客軽視に対する批判と、一部金融機関の改革および森金融庁による金融政策についての解説。
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問題意識は正しいはず。金融機関の人間はまず一回読んでみて、綺麗な正論を受け止めるべき。その上で、そもそも銀行始め金融機関なんかに事業の育成は出来ないよね、金融庁にじゃあ綺麗事で経営してみろよ、この作者は森長官の極フォロワーだよね、みたいなワイワイガヤガヤしたら良いと思いました。