地銀と中小企業の運命 (文春新書 1400)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166614004

作品紹介・あらすじ

ベストセラー『捨てられる銀行』著者の最新作
コロナ支援が終わり、真の淘汰が始まる
常識外れのオモロイ地銀が救世主になる!

コロナ支援が終わり、今後、中小企業と地銀の倒産が激増する恐れがある。しかし、「危機」は「チャンス」だ。地域経済と金融行政に精通する著者が、成功例をもとに明確な処方箋を提示。地銀と中小企業の未来はここにある! 関係者必読の「金融庁『業種別支援の着眼点』徹底解説」も「特別附録」として収録。

(内容)
1 「ゼロゼロ融資」40兆円という時限爆弾
2 「金融検査マニュアル」が銀行をダメにした
3 「捨てられる銀行」と「生き残る銀行」を分かつもの
4 「経営改善計画」をどう作成・実行するか
5 「自分事」の企業支援
6 10年後に評価される仕事
7 「ファミリー企業」をどう支援するか
8 「企業支援」のプロたち
9 「リレーションシップ・バンキング」の実践
10 「銀行の常識」を捨てた銀行
11 ビジネスはコミュニケーションから生まれる
特別附録 金融庁「業種別支援の着眼点」徹底解説

●橋本卓典(はしもと・たくのり)
1975年東京都生まれ。共同通信社編集委員。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2006年共同通信社入社。経済部記者として流通、証券、大手銀行、金融庁を担当。2020年4月から編集委員。金融行政と地域経済・地域金融の取材を精力的に続けている。2016年5月に『捨てられる銀行』(講談社現代新書)を刊行し、ベストセラーとなる。

感想・レビュー・書評

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  • 地方銀行と中小企業の運命

    A;購読動機
    地方銀行の現状と今後の動き方に対する情報収集のため。

    B;書籍の良いところ
    ・コロナ融資が具体的にどのようなものか? それがどの程度の社数、規模によるものか?
    ・地方銀行(信用金庫含)が、どのように組織内部を効率化し、外/貸付先に対する助言時間を捻出しているか?
    このあたりについて、事例を引用しながら定量的に説明してくれていること。
    また、理解が難しい専門用語も少ないため、読みやすいこと。

    C;改めて理解できたこと
    地方に大企業はないに等しい。ゆえに、地方銀行の顧客・貸付先は中小企業であること。
    地方銀行の収益は、貸付先の業容拡大→資金需要の増加→貸付残高の増加というサイクルをつくることで成り立つということ。
    地方銀行側でこの体制を作ることができるか?がポイントとなること。

    D;地方銀行の時価総額を調べてみたら・・・。
    都市銀行、ゆうちょ銀行の時価総額についで、時価総額が高い地方銀行は以下のとおり。
    ・千葉銀行
    ・横浜銀行
    ・静岡銀行
    ・福岡フィナンシャル

    一方で、地方銀行で時価総額が1000億円を超えている会社は少ない。

    E;書籍から興味深い事例・内容
    ① マーズ・グロース・キャピタル
    三菱UFJ銀行とイスラエルのフィンテック企業50%ずつの合弁会社。
    スタートアップ向けの投資専門会社。
    面白いのは、融資の判断が過去実績(BS,PL)ベースではないこと。
    ・直近の残高試算表
    ・営業動向(受注、失注)
    ・経営者の失敗実績
    ② 北國フィナンシャル
    物いう株主との助言契約を締結し、中期経営計画を発表。
    ・余剰資産(政策保有株含む)売却、資産効率化
    ・ROE目標設定。(3年、5年、10年)
    ・ROE連動業績報酬制度。
    ・銀行業務以外の収益貢献割合50%を目指す。
    ③実験店舗の開設
    ある銀行の事例で業績目標を課さない支店を開設。目的は、貸付先の相談を聴くこと、助言すること。
    結果として、他視点と遜色ない業績をアウトプット。
    ④ 減り続ける行員。貸付先にどう対応する?
    ずばり、貸付先の選別が必要であること。銀行として、力を入れる貸付先とそれ以外の区別。選別することで、時間が生まれ、対応することができるから。
    ⑤上場企業HR大手広告に頼らない人材需要・供給ネットワーク
    媒体に依存しない、銀行自らが把握している貸付先の人的課題のデータベース化。また、それが支援できる地域圏内企業のデータベース化。
    これらがビジネスマッチングにつながっていく。

  • ■ Before(本の選定理由)
    地方の優秀層が集まる地銀が、ビジネス支援しないのが元凶、みたいな話だろうか?タイトルが気になる。

    ■ 気づき
    地銀の及び腰にも喝を入れているが、元凶は金融危機のときに作った金融検査マニュアルが今でも根付いているからで、貸倒れを過剰に避け地方の経営者支援になっていない、という論旨。めちゃ説得力がある。

    ■ Todo
    丸政(山梨の弁当屋)など複数の実例が物語形式で、これこそ地銀の役割だろ!と示されている。きっとできる。まだまだ出来る。

  • 「捨てられる銀行」を書いた人の最新著作ということで迷わず購読。今度は金融機関の立場ではなく(地銀ではなく公庫だったけど)、中小企業の立場として。何だか不思議な感覚。
    昔気質の名バンカーの事例に加えて、社会課題を自分事と捉えて本気で取り組んでいる人たちの事例を見て、同じような事例が加速するといいな、そうすると日本は一気に良い方向に傾くんじゃないかと心から思いました。
    ファミリービジネスの持続可能性を高めるために日銀の支店長を辞めたなんて事例凄すぎて。。しかし日本政府は中小企業の事業承継問題を後回しにし過ぎだと前々から強く思っていたので、これが起爆剤にもっとなっていくと良いんだけど。
    中小企業の立場では豊和銀行のVサポートや、北國ホールディングスの事例は、地元の銀行もこうだったら良いなと思わずにはいられない内容。「それぞれが本来やるべき仕事に集中するにはどうすれば良いのか」、色んな技術が進んだ昨今においては解決できることが多いはずで、自分も常にそういう視点は持っていきたい。銀行さん、いつまでメールを常用しないつもりですか……?と思わずにはいられない(笑)

  • 都内の銀行窓口はどんどん閉鎖されている。零細企業を経営する身なので、システム(商品)開発や原材料を仕入れる業務などで銀行との付き合いが大事になってくるのを心得ている。資金調達の交渉カードを集めたい気持ちもあって、現在の地銀の内情を知ろうと手に取った。

    印象的だったのは、地元企業の経営支援に乗り出した銀行マンが「クライアントと共に競争力をつけて利益率向上を図るキーエンス」を参考にしていることや、中小企業診断士の財務会計の知識で経営分析をしていることだった。
    また、7章のファミリー企業の内情も興味深かった。支援先の分析事例の「特別付録」も良かった。 飲食店の収益分析は特に勉強になった。 こういう目線でお店に入ると食事に集中できなそうだけども。

  • 個々の出来事はニュースになっているので調べれば見つかるだろうが、高い見識からの考察を添えられたものを一定の網羅性をもってまとめられていることを考えれば、安すぎるくらいだと思う。良書だった。

  • 地銀と中小企業の運命 (文春新書 1400)
    著:橋本 卓典
    人口減少に金融機関が生き残る道は、そもそも2つしかない。極力人手をかけず廉価なサービスを提供していく「資本集約型のデジタルバンク」と、地域と企業の課題を解決していく「労働集約型銀行」である。
    規模に限界があり、人口減少地域を地盤とせざるをえない地域金融機関には「労働集約型」の道しか残されていない。顧客と密着した関係性を築き、事業性への深い理解に基づき、顧客の課題に対して、付加価値を伴う解決策を見つけ出す「リレバン」というあり方である。ただ必要なのは、単なるスローガンや精神論の「リレバン」ではなく、付加価値と生産性の向上を経営と結び付けて実現する「リレバン」である。銀行経営はもっと踏み込んで尖らねばならない。
    本書の構成は以下の12章から成る。
    ①ゼロゼロ融資40兆円という時限爆弾
    ②金融検査マニュアルが銀行をダメにした
    ③捨てられる銀行と生き残る銀行を分かつもの
    ④経営改善計画をどう作成・実行するか
    ⑤自分事の企業支援
    ⑥10年後に評価される仕事
    ⑦ファミリー企業をどう支援するか
    ⑧企業支援のプロたち
    ⑨リレーションシップ・バンキングの実践
    ⑩銀行の常識を捨てた銀行
    ⑪ビジネスはコミュニケーションから生まれる
    ⑫金融庁「業種別支援の着眼点」徹底解説
    2016年に発刊された「捨てられる銀行」シリーズから、私を含めて多くの金融機関人や地域貢献に携わる人が、「捨てられる」というワードから自分目線からお客様目線で貢献に対して考える新たなきっかけをいただいている。
    シリーズが発刊される度に、最新のお客様目線の対応が本書に記されているように「オモロイ」エピソードで読み易く、自分事に置き換えやすく紹介されている。
    結果とプロセスだけではなく、当事者の生き様や背景を含めた気持ちが情緒を含めて書かれており、その生々しさから難しさだけではなく、自分たちにも出来る。やりたいと思える仕組みにより展開されている。
    自分が歩んでいる道が正解に近いのかどうかを確かめると共に、これから求められることを考えて、自身の現状からの不足分を埋めるための数年にわたるロードマップを作りかえる等、それぞれに違った恩恵を受けて本書から学ばせていただいている。
    今の自分のミッションは、多くのエッセンスから学んだことを実践することと、自分の近くにいる仲間にそれを伝染させ、共に考え行動し、地域・お客様に貢献することであると考えている。
    硬く狭い視野に自身の視野に築き反省させていただき、次の一歩を踏み出す勇気をいただいている。
    感謝を忘れず、力を合わせる、貢献と連携で長期的なイメージをこつこつと積み上げ続けていきたい。

  • 20230811読了

  • 自分事として企業を支援することについて
    ここ30年程度の銀行の歴史と実際の事例で説明されていて、イメージ持ててよかった。

  • 難しい本でした。
    銀行、とりわけ地方銀行などが、地元中小企業とどのように関わっていくべきか、ものすごく豊富な具体的事例から説明してくれていて、調査力が半端ないなと感じました。

  • P9 顧客と密着した関係性を築き、事業性への深い理解に基づき、顧客の課題に対して、付加価値を伴う解決策を見つけ出す「リレーションシップ・バンキング(リレバン)」
    https://www.fsa.go.jp/policy/chuukai/0330gyosyubetu_00.pdf
    ↑業種別支援の着眼点
    P31 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」
    P74 真のバンカーとは「貸せる、貸せない」を判定する者ではない。どのような状況でも、信念に基づき、組織の戦略を実現するため、知恵の限りを振り絞り、研鑽と努力を惜しまず「必ず何とかする人間」である。
    P87 「分からないことをわかるようにすべきだ」by山梨中央銀行支店長 経営者にとって最も大切なこと
    P93 数字の先にいる人との関係、人の動きがどう変わるのかまで考え抜け
    P95 駅弁はうちにしかできないこと。だから「やる」。一方、儲かるのは分かっているけど、社長がそれにかかりきりになってしまったり、ほかの事業者も簡単に追いつけるものは「やらない」。時間がもったいない。社長は「やる/やらない」をきめることが大切
    P103 社長が「こうしたい。こういう問題がある」と思っている悩みを受け止め、現場だけでは解決できない問題を力を尽くして解決し、社長の目指しているところに進んでいく。
    P104 営業と内部管理のシーソーゲーム
    P122 ファミリービジネスは海外で研究が進んでいる。日本の節税、事業売却等は小手先のスキーム。ファミリー(創業家)、オーナー(株主)、マネジメント(経営者・事業)のスリーサークルがバランスよく機能する必要がある。
    〜P128まで重要!
    https://www.fe-mo.jp
    P137 国の中小企業政策→中小企業を減らして効率化→集約・統合により有能な経営者が残る
    有能な経営者を増やす→滋賀県SoFun
    P159 チーム医療
    P163 何かを得たければ、何かを捨てるしかない。それが「自分事」
    P174 企業を「機能」の集合体としてとらえてみる
    P191 クラウド化(システム化)の本質は、本来、人がやるべき仕事に人を戻すこと

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著者プロフィール

はしもと たくのり
共同通信編集委員。1975年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2006年共同通信社入社。経済部記者として流通、証券、大手銀行、金融庁を担当。09年から2年間、広島支局に勤務。金融を軸足に幅広い経済ニュースを追う。15年から2度目の金融庁担当。16年から資産運用業界も担当し、金融を中心に取材。『捨てられる銀行』シリーズ(講談社現代新書)は累計30万部を突破。本作はその第4弾となる。


「2020年 『捨てられる銀行4 消えた銀行員 地域金融変革運動体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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