- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065186008
感想・レビュー・書評
-
それぞれ手紙と日記の形をとった、「書くこと」を見つめる2作品。どうも馴染めず、読むのに苦労してしまった。たぶん自分の興味のありどころの問題なのだと思う。物語、というよりは、思考を読んでいる感じだった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『最高の任務』
大学の卒業式には家族で行くという母。
「小学五年生以来のね」という
謎の言葉を発する。
亡くなった叔母が関係しているらしい。
その叔母から渡された日記帳。
「私に読まれないようにね」という言葉と共に。
家族で「最高の任務」に向かう。
叔母と姪という関係以上に強い繋がりがあり
羨ましいような哀しいような。
『生き方の問題』
従姉弟という微妙な位置。
子供の頃の関係のままではいられない。
それは彼女の問題なのか、彼なのか。
お節介で厳しい祖母の問題なのか。
繊細で、透明さの中に少しの澱みがあり
笑ってしまうシーンも。
(『最高の任務』のお父さんがいい)
楽しい読書の時間でした。 -
「生き方の問題」
告解のようであくまでも独善でしかないという
強烈な自覚を持ちながら(それはおためごかしとはちょっと違う)、それでいてこの小説が「手紙」というテイをとりながらもあくまで「小説」であるという前提によって結局は「生き方の問題」についての告解として成立している。
「手紙というテイ」という設定を以てメタ視線を挿入する→一度書いたことを取り返しがつかないとする/一度書いたけど4万字消したと書くことは"作家"である自分もしくは"作品"であることから逃げようとしているのか?面白がっているだけか?
いつも思うけどどうしてここまで自分というもの、というか作家であるという自分の特権を引き摺り下ろそうとするんだろうと思う。それは反転してやはり強烈な創作欲望への自覚があるように思うし、なんだか苛烈ですらある。
グラビアイメージDVDが文学に登場するのを見たのも初めてだし、グラビアイメージDVDの映像をプロの小説家が本気を出して描写するとこうなるんだとワロタ。その筆致はほとんどテクノロジーに近い。
「最高の任務」
「書く」という行為に依る過去性を以て、複数の時間軸で描かれる "遺す"ということ。
遠回りだけどもヒントを与えなくても、きっとあなたなら自分の跡を見つけるはずと信じて、ただ、"遺す"。
そして仮に、自分の跡が後に発見されないとしても、だからって自分の跡というのは、それ自体が無かったことには絶対にならない。 -
うーん、ライトな文章ばかり読んでいた私には、文章が精巧すぎて、読みにくかった…。
響く人には響くと思う。 -
久々に辞書を片手に意味を調べながらの読書になりました。
集中して読まないと途端に迷子になるこの小説。
唐突にでてくる名文に酔いながら
これは一筋縄ではいかない
何度も読んで噛み締めながら味わう本だなぁと
ところどころメモをとりながら読みました。
まずは1回目。
次もう一度読んでみよう。
山に登るような感覚で楽しむ小説も好きです。 -
合う合わないが分かれそうな作品。
いまのわたしにはそこまで迫らなかったけれど、もしかしたらもう少しすれば引っかかるかもしれないなぁと思いながら読んでいた。
だから、星3。「最高の任務」だけなら星4。
「生き方の問題」は、性的描写にいささか閉口したが、「最高の任務」と通底しているテーマは「家族」なのだろう。
どちらも読み終わってかなりファンタジーな気がしていたけど、もしかしたら世の中にはこういう家庭もあるのかもしれないと思うと、わたしがいかに「家族」に遠いところにいるのかを痛感させられる。
…なんでもそこに結びつける癖もやめたいのだが。
岩宿遺跡とか相沢(澤)忠洋とか久しぶりに目にしたけど、あの頃感じたロマンは忘れていなかった。
それを習った小学生のころも含めて思い出すもんね。
-
これからしっかり書きたいのですが、
とりあえず作者の文学に向き合う誠実さが
ひしひしと伝わってきます。
レトリックがつぎつぎ魔法のように紡ぎ出され、
しかし少々過剰にも感じられて疲労困憊しました。
文学に星などはつけたくありませんが、
-
大きめの書店を2つ回ったのに、芥川賞候補作が売り切れていて、帰りに寄った図書館でこちらを。
『生き方の問題』『最高の任務』の中編が二作。まず、いずれもタイトルのがカッコイイ。読後、タイトルを見返すとさらに内容がグンと生きてくる。
二作とも「書き手」がそれぞれ従姉妹、叔母、という絶妙な距離感でありながら、しっかり結びついた親類との軌跡を、時にエグいほどの深い情感と、温度湿度もが伝わってくる情景描写をからめながら追っていく。
なかなか読みづらいところもあったけれど、なんだか読みやすすぎるなあ、という小説が売れちゃうなか、読後は久々に充実感があった。はよ、候補のも読みたい。