さようならアルルカン (集英社文庫―コバルトシリーズ 52B)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086103206

感想・レビュー・書評

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  • すっごいあの思春期の頃を思い出して、苦々しいような、でもものすごく懐かしい気持ちになった。

  • 昔読んですごく感動した表題作。

  • 実家の片付けをしていたら氷室冴子作品をゴッソリ発掘。
    四半世紀ぶりに再読してみました。

    初版は昭和54(1979)年!40年も前とは。。
    最初期の四短編を収録。表題作は作者が大学3年時に書いた「小説ジュニア(雑誌コバルトの前身)」の公募作品。

    表題作は自意識過剰で、周囲に持て余されがちな文化系少女たちの葛藤と矜持を描く。

    二篇目「アリスに接吻を」は14歳という、大人でも子どもでもない年代の少女心理を、珍しい二人称で描いた作品。語り手は大人になった本人かな?

    三篇目「妹」は、母を亡くし、歌人の父、美しい姉と暮らす少女の物語。古式ゆかしい少女小説の佇まい。妹属性へのこだわりは氷室作品の重要なファクターですね。

    ラスト「誘惑は赤いバラ」は、中高一貫校に通う少女が主人公。異性よりも親友との時間が大切、それでも異性は気になって、、みたいなテンポの良い語り口で展開される物語。

    内省的な前三作と比べると、元気なストーリーで、後々の「白書」シリーズや「雑居時代」に繋がっていく感じ。

  •  高校生の時に読みました。
     表題作と「妹」は厳しく、せつないストーリーでした。
     特に「妹」はきつくて、涙なしには読めなかった記憶があります。願っても願っても愛を与えられず、すれ違う……。
     このあたりの描写は、同作者の「シンデレラ迷宮」や「ヤマトタケル」と共通するものを感じます。特に救いのなさに関しては、「ヤマトタケル」の方が共通項が多いかな?
     「妹」は印象強い話でしたし、何度も読み返したので、本を手放した今もストーリーはしっかりと覚えています。表題作よりも、私はこちらが好きでした。

  • 表題作の、ぐさぐさくるやりとりがたまりません。
    正反対のようで、お互いを分かっている、というとこがツボ。これ一本で長編書いてくれても…、似たような作品はあるのでしょうか。

  • 文学系の短編集。普通にありそうな女の子たちの、心の繊細さを綴っていくような内容。

    『さようならアルルカン』は、皆に誤解されがちな女の子が、自分から道化(アルルカン)になってしまう話。
    彼女の図書カードを追っていくとかはなんか好きだった。

    『アリスに接吻を』は、『あなた』って、こっちに話かけてくるような文書がじわじわくる、鏡視点の話。

    『妹』は姉へのコンプレックスが、思いも寄らない結末を招く話。

    『誘惑は赤い薔薇』は子供っぽい自分を捨てようと、背伸びする話でした。

    ぶっちゃけ、普段読まない真面目系なんで、好みではなかったなぁ。

  • 2010年1月20日購入。

  • ジャパネスクでおなじみの氷室先生の初期短編集。
    アマゾンのユーズドの価格がすごいですが、100円であったので読んでみました。
    表題作をはじめ4つの短編が載っていますが、70年代に書かれているので
    かなり「丘の家のミッキー」を思い出す部分も。

    表題作は特に昔を匂わせます。
    子供をマニュアルに当てはめ、そこから外れる子はその子の言っていることに
    一理あっても除外しようとする…
    椎名誠先生の自伝的著書「犬の系譜」で、飼い犬「パチ」を先生が勝手に
    「ポチ」に添削していたという憤慨ものな話を思い出しました。
    自分のころや今はもう少しおおらかだと思いたいですが…
    とはいえある程度社会に順応するのも必要であり、
    学校はそれを学ぶ場所でもあるわけで…
    なんともいえない気持ちになりますねぇ。
    この話がダントツよかったです。

    併録「アリスに接吻を」と「誘惑は赤いバラ」は10代前半の背伸びが
    甘酸っぱいほど出てます。
    その背伸びが子供っぽく見えることには意識が回らないのが微笑ましい。
    微笑ましいと思うようになったら年をとったなですが…
    大人にならなきゃと奮起しないと成長できない場合も、
    勝手になってしまう場合もあり、難しいところであります。

    もう1本の「妹」はすごくしんどかった。
    大好きな「文学少女」シリーズの暗い部分だけ切り取ったような話でした。
    愛し方・愛情の表現は愛を受けていないと上手く表現できないのに、
    憎しみ・嫉妬は教わらなくても出てしまうせつなさがとても辛い。
    そういう意味でも不器用さで逃げず親父さんがまずは一歩踏み出してほしいもの。
    本編でも「優しい言葉が1つだけでも欲しかった」とあります。

  • 1977年、第10回「小説ジュニア」青春小説新人賞佳作入選作。

    「さようならアルルカン」
    ラノベの片鱗はちっともなく、少女向けの純文系。
    まわりの人とあわせるために道化役(アルルカン)の仮面をつけてしまう女の子二人の話。
    そうなの。
    女の子って、どこか自分を演じてる、ってとこあるよね。(のりピーはいきすぎとして)
    それも大人になっていく過程で。とても無理をしている形で。
    それを楽に、自然体になっていけば、立派な大人ってとこかな。
    繊細な少女の心を描いた、素晴らしい作品。

    「アリスに接吻を」
    鏡に見とれる女の子。子どもから大人への体の変化、心の変化。
    自分が子どもと見られるもどかしさ。かといって大人になるのも不安。
    親せきのお姉さんは結婚し、クラスメートは教室でキスをして。
    自分は、兄の友達からからかわれている、という状態。
    すごいね。こういうことってあるよね。

    「妹」
    これは、、、すごいダークでした。
    なんか救いがなくて、氷室先生もコメントに困ったのか、あとがきでも触れておらず。。。
    姉に対する屈折した気持ち、父からの愛情がないと思ってしまう気持ち。
    これも、多少なりともあるよね。少女視点の家族の物語。

    「誘惑は赤いバラ」
    幼なじみの女の子同士が仲良すぎて、自立したほうがいいんじゃないか?って話。
    男の子と付き合うのはしんどくて、女の子同士のほうが気楽で楽しいよね、でもそれじゃ大人になれないんじゃないか?ってこと。
    無理矢理お酒を飲んだり、男の子と付き合ったりする、友達の女の子がよかった。
    高校生のBFの試合を見に行って、お姉さんたちにからかわれてシュンとなるところも。

    みずみずしい青春だなあ。

  • 氷室先生の作品は結構読んでるのに、これは未読だった。なんで、今まで出会えてなかったんだろう、と後悔。4編を収録した、初期の短編集。どの物語も、「少女」というものの本質を鋭く突いている、と思う。書かれてから30年近く時が流れているけれど、古さはない。

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著者プロフィール

氷室冴子(ひむろ・さえこ)
1957年、北海道岩見沢市生まれ。 1977年、「さようならアルルカン」で第10回小説ジュニア青春小説新人賞佳作を受賞し、デビュー。集英社コバルト文庫で人気を博した『クララ白書』『ざ・ちぇんじ!』『なんて素敵にジャパネスク』『銀の海 金の大地』シリーズや、『レディ・アンをさがして』『いもうと物語』、1993年にスタジオジブリによってアニメ化された『海がきこえる』など多数の小説作品がある。ほか、エッセイに『冴子の東京物語』『冴子の母娘草』『ホンの幸せ』など。 2008年、逝去。

「2021年 『新版 いっぱしの女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

氷室冴子の作品

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