英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207958

感想・レビュー・書評

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  • 翻訳と土着化なくして、国の発展なし。英語公用語化反対論の書籍の中でも説得力が群を抜いている。新自由主義の主張(国の歴史や文化はどうでもいい)には加担したくないな。英語ができる人にはなりたいけど、妙な優越感に浸った排他的な人間にはなりたくない。

  • 名著。
    日本人が苦労して築き上げてきた母国語で高度な学問を学べる環境を放棄してはならない。
    新自由主義者どもの悪だくみに触れている点も素晴らしい。

  • 近年の英語化、グローバル化に抱いていた違和感の正体が少しわかった気がする。確かに単純労働や介護とか、アジアの人呼んで低賃金で働かせたり、何でもかんでも欧米に迎合するのは違うと思う。ナショナリストではないけど、農産物とか、もっと自国のものを消費するようにしたい。

    <メモ>
    ・福沢の元でも学んだ自由民権運動家・馬場辰猪(たつい)が森有礼の「英語公用語化論」に対しての批判
    1)英語学習には大変な時間がかかり、若者の時間の浪費につながりかねない。学ぶことの多い若者の時間が無駄に費やされる。
    2)英語を公用語化すれば、国の重要問題を論じることができるのが、一握りの特急階級に限られる。
    3)社会を分断し、格差を固定化する。
    4)国民の一体感が失われる(例:インド)

    ・国立大学文系学部の統廃合(国立大学改革プラン)、国家戦略特区構想(解雇規制緩和、外国人労働者の受け入れ)に見られる独断決定

    ・新自由主義者が打ち出す政策の3つの柱
    1)開放経済…貿易や投資、人の移動を国境などの垣根を低くして自由化すべき
    2)規制緩和…政府による経済活動への規制は最小限に抑えるべき
    3)小さな政府…政府は財政規律を守り、公営企業は民営化してスリム化せよ
    →各国政府は国際競争力をつけるという名目のために、自国の国民一般の声よりもグローバルな投資家や企業の声を重視して経済政策を推し進める(法人税の引き下げ、規制緩和や民営化、労働者の権利の削減、福祉や公共事業の削減)

    ・グローバル人材=外需を奪いに行ける人材

    ・貧しい国の人々が先進国に移動し、先進国の人々が従事したがらない職種を担う労働者として働きやすい状況を作る

    ・フィリプソンが『言語帝国主義ー英語支配と英語教育』
    で指摘している誤りの信条
    →英語は英語で教えるのが最も良い
    →理想的な英語教師は母語話者である
    ・津田幸男『英語支配と言葉の平等ー英語が世界標準語でいいのか?』2006
    →英語による文化支配、序列構造の形成
    ・加藤周一「日本文化の雑種性」『加藤周一セレクション5-現代日本の文化と社会』所収
    →日本文化は外来の知を受容し、それを既存の土着文化とミックスすることで作られてきた。
    ・オルテガ『大衆の反逆』
    →民主主義社会を破壊するのは文化や伝統とのつながりを自覚しない愚かな大衆
    ・クリストファー・ラッシュ『エリートの反逆』
    →グローバル化の進んだ現代社会では、民主主義社会の基盤を損なうのはエリート層

  • 英会話や英語学習を否定するものではなく、官庁や大学の受験や業務・授業の英語化、さらにそれに備えた低学年からの英語化学習ラッシュ(英語学習ではない)に警鐘を鳴らす。それは日本人の知性・感性の発達に膨大な負担を与え、長い目で見れば、国際競争力の向上どころか平均的に劣化をもたらすというもの。企業経営者・為政者・教育者には必読の書だと思う。森政稔氏「迷走する民主主義」を読んで、なぜ今のエリートはこんな簡単なことに気づかないんだろうと思わされること多々。その理由はここにもw 巻末「おわりに」だけでも読んでみて!
    それにしても、金融危機の国にイチイチ救済条件に英語化を強要するなんて、IMFは胡散臭すぎ… 

  • 他言語を学ぶことはその国の文化を知ること。だからと言って自国の文化や言葉を失っては元も子もない。
    「英語化」の前にまずは母語で深く思考すること。そして「政治や経済を論じることば」は、日常の言葉に「翻訳」されなければならないのではないかと痛切に思う。

  • 英語偏重教育への警鐘をならす一冊。

    英語を学びたい人が一生懸命学ぶのも、必要に迫られた人が英語を習得することも、よいことだと思います。
    ただ上から「幼少期から英語を学べ」と押しつけてくるのは、この本の著者と同様違和感を覚えるし、疑問も覚えます。
    せっかく日本には母国語で高等教育を受ける環境が整い、世界中のマニアックな本まで日本語に翻訳されて図書館や書店に並ぶという恵まれた状況があるのに、なぜそれを壊してしまうようなことを政府は進めたがるのでしょうか。
    本で指摘されているように、それは「商売」のためなのでしょう。
    しかし一部の人が利益を上げるために、子供にとって重要な「教育」を利用するというのはやめてほしいです。

  • 公用語を英語にこの言葉に違和感があった!その意味が少し理解出来た、言葉(言語)はその国の文化何にも代え難い財産だから

  • 2016/03/06:半分まで読み。
     まぁ普通。特に新しい情報は無い。

  • 扇情的な題名だけど、落ちつた語り口で、内容はしっかりしている。英語がすきで、人一倍勉強もしてきたけれど、それと、グローバル化するために社会を英語化するのはちょっと違うんじゃないのと思います。少子化の問題にせよ、英語の普及活動にせよ、それらが英米の国家戦略の一環であることを、推進派の政・官・財の人達は、認識しているのだろうか?

  • 外国語教育政策が財界をはじめ、グローバリストの都合を最優先に作られているのは確かだろう。しかし本書の議論には誤謬や誤解、論理の飛躍があまりに多い。また引用されている文献についても、著者に都合のよいように解釈が歪められているところが散見される。誤った言語観・言語教育観を読者に植え付けかねないトンデモ本である。著者と出版社、また帯にコメントを寄せた識者の良心と見識を疑わざるを得ない。

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著者プロフィール

九州大学大学院比較社会文化研究院・教授。慶應義塾大学・博士(法学)。リベラリズムの政治理論が専門。学校教育との関わりでは、人権教育や有権者教育などの公民教育に関心がある。ビジネス上の考慮を教育的考慮よりも優先する近年の風潮に懸念を抱いている。その観点から現在の英語偏重の教育改革に疑問を呈した著書『英語化は愚民化』(集英社新書、2015 年)は話題となり、教育関係者向けに講演することも多い。

「2022年 『学校と子ども、保護者をめぐる 多文化・多様性理解ハンドブック 第3版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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