- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101175119
感想・レビュー・書評
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一話一話が濃厚で面白い。
田辺聖子さん大好きです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルに惹かれて読み始めました。イメージのとおり、ほろ苦さと甘さ、暖かい幸福感と切なさが感じられる12篇の恋の物語。本のタイトルと同じ短編は無くて、あれ?と思いましたが、夜中に一人でココアを飲みながら読むと心に染みてくるようなお話ばかりでした。珠玉の短編集という表現がありますが、この本にこそそう言い表したいです。うまくいった恋も、うまくいかなかった恋も、振り返ればあの時、あの瞬間を、大切に切り取ってアルバムに取っておきたいようなかけがえのない宝が秘められている。それはやすやすと誰かにひけらかしたりするものでなく、自分の胸で暖めておくものなのです。
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どの主人公も、嫋やかな女性ばかりで魅力的だった。
『孤独な夜のココア』というタイトルがぴったりの1冊。孤独な夜に飲むココアのような、また何度でも読みたいと思う本。
昭和も、(平成を飛び越えて)令和の現代も、恋心は変わらないのかもしれない。 -
鹿児島にて読み終える。
中京区…とタイトルのついた短編があったので思わず手に取る。やはり関西で、働く女がよく出てきた。世俗の風ー石 というところなど印象的。
長編も読んでみたい。 -
いつだったか母が僕に、疲れたときはお酒でもコーヒーでもなく、ココアを飲むようにしなさい、と言ったことがある。うちの家系は「ピロリ菌」というのをおなかに飼ってるらしくて、がんの原因にもなるそいつを抑えるには、ココアがいいからだと言っていた。ほんとかどうかはわからないが、それ以来僕にとってココアとは、冷たくてもあたたかい飲みものである気がしている。
孤独な夜のココア、すごく素敵なタイトルだ。田辺聖子が書く小説の女性たちをみてからそのタイトルと向き合うと、彼女たちにとって恋とはそういうものなのかもなと思ってしまう。
ひとりぼっちの不安と、気がねしない安心。その中にしみわたる、甘くて苦いココアの味。それは本人の知りえぬところで思わぬ変化を与えているかもしれない、たとえば自分をむしばむ病原菌を倒してくれるような。……もちろん、先のことは誰にもわからないけど。
女の子のことはわからないけど、やっぱり男なんかより大人なんだな。結局僕の感想はそこに落ち着くわけですが、よい読書でした。「雨の降ってた残業の夜」が好きだ。 -
人を好きになるという、甘さよりも、切なさ・ほろ苦さが静かに包む感じ。とくに最後の一編が本当にココアのように温めてくれる気がする。
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読んだものは旧版。昭和48年発行の新潮文庫だが、表紙も解説も違う。解説は神津カンナ(!)解説は昭和っぽい(当たり前だ)が、田辺さんとの交流も書いてあり、おもしろい。
最初の版の発行は昭和53年。
さすがに古いし、昔の女性の甲斐甲斐しさが痛々しくもあるが、それを補って余りある、小説の面白さ。
女性が不遇な時代にあって、ちゃんと背筋を伸ばした主人公たち。田辺さんの若い女性たちへの温かい視線がある。 -
田辺聖子さんの本って、読み終わって
イヤな気持ちが残るようなことがない。
どんなキャラクターの人物が出てきても。
いつも心に温かい余韻が残る。
この短編集もそう。
聖子さんが書くとOLものもドロドロしない。
どれも面白く読めた。
特に「りちぎな恋人」に笑った。共感できて。 -
人生って、恋愛ってこんな瞬間ってあるよね、を切り取ったみたいな短編集。時代的におそらくもう、こんな背景は描かれない。
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田辺聖子さんの作品を読むと、実らない恋もまたいいなぁと思える。自分の心が美しいとどんな結末でも美しさは残る。受け取る側にモノゴトの可愛げを感じる繊細な感受性があれば。
好きな男にお金を惜しみなく使って、それでも損したとか、私のこと愛してないんじゃ、とか思わず、だって私がそうしたかったからと自然に思える女になりたいと思った。