- Amazon.co.jp ・本 (121ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102071014
感想・レビュー・書評
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2020年9月28日読了。
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『ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。』
この有名な冒頭で始まる、フランツ・カフカの代表作。
100年以上も前の作品であるにもかかわらず、現在でも多くの人に読み継がれる不朽の名作。
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何の前触れも無く唐突に虫になり、それをすんなりと受け入れてしまうグレーゴル。
虫になってしまったグレーゴルに驚きこそするものの、なんだかんだで家族の一員として接する両親と妹。
虫になっても家族の事を想い続けていたグレーゴルだが、次第に本人の意思とは関係なく、会話する事も出来ず、腐った食べ物を好むようになり、壁や天井を這いずり回る事に快感を得るようになったりと徐々に虫へと成り果てていく。
その様を目の当たりにした家族達は、グレーゴルを家族の一員ではなく厄介者として扱うようになっていく。
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不条理文学と言われるだけあって、不条理の連続。
内容が内容だけにこの作品には謎な部分が多く、何を表現していてどう伝わったかというのは読み手次第で変わってくると思われる。
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解説の部分でカフカが『変身』は恐ろしい夢であると断言している。とあるように、自分はこの不条理世界は一つの悪夢の話なんだと感じた。
冒頭の一文で『なにか気がかりな夢から目をさますと』という言葉がある事から、現実世界で何かしらの心配事や不安を抱えているグレーゴルが見ている夢なのではないかと感じた。
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虫になってしまうという比喩表現が、『鬱』であったり『引き篭もり』であるという解釈があったりと、様々な人の考察や見解を調べるのも読後の楽しみの一つかもしれない。
その点でやはり、安部公房や村上春樹の作品はカフカの影響を受けているのだと思う。
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また読む度に感想や思う事が変わりそうなので、別の翻訳のものも機会があったら読んでみたいと思う。
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(余談)
・堅い背中にリンゴがめりこむとか、父親はとんでもない豪速球を投げるんだなと感心した。
・ドイツの小学生は国語の授業でこの『変身』を学ぶそう。やべぇ。 -
この小説の存在を初めて知ったのは、小学生の頃に読んだGTOという漫画。盗撮癖を持つ英語教師が歪むことになったきっかけの体験として差し挟まれる回想シーンで、古びた男子トイレの個室で彼が読んでいたのがこの「変身」だった。「気持ち悪いなあ、虫になった男の話なんて……」みたいなセリフも覚えてる。
昔の小説なので読みづらい文体ではあるものの、作中で描かれる家族の心情は現代に通じるものがあると思う。自分はこれを読んで、親しい人の介護に疲れて、愛していたはずの存在に憎しみを覚えてしまう悲しみに近いものを感じた。 -
今さらながら長男から借りて読んでみた。冒頭の「自分が寝床の中で一匹の巨大な虫になっているのを発見した」から奇怪な物語が始まる。なぜ変身?なぜ虫?特段の説明がないまま、だんだん陰鬱な展開に。ラスト3行でカフカが伝えたかったこと、訴えたかったことが分かった気がした。
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ザムザは「私」だ。
毎日を平穏無事に過ごせているけれども、いつ何時、事態が急転するかわからない。
身体の自由がきかなくなるかもしれないし、精神的に病んでしまうかもしれない。
昨日までとまったく違う自分に、明日はなってしまっているかもしれないのだ。
だからザムザは「私」だ。
ザムザはたまたま「虫」という形になっただけであって、形はかえずとも、ある日突然隣にいた親しい人物が、人のカタチをしたまま、何か別のもにんなってしまうことはありうる。
そうなったとき、私はどんな行動をとるのだろう。
支えあい、たすけあう存在になるのだろうか。
それとも・・・・。
引きこもり、介護、そして家族。
読んでいる間、いろいろなことが頭の中をまわった。-
「何か別のもにんなってしまう」
人って変わらないようで少しずつ変わる。身体の衰えや、ちょっとした心の変化。
そう言ったコトだけじゃなく、目覚...「何か別のもにんなってしまう」
人って変わらないようで少しずつ変わる。身体の衰えや、ちょっとした心の変化。
そう言ったコトだけじゃなく、目覚め覚醒しても、それが他人に受け入れられないモノの場合は、潰されてしまう可能性が、、、色々な置き換えが可能なカフカ恐るべし。。。2012/10/26
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人間が目を覚ますと虫に変わっていたというファンタジーにはよくありそうな題材だが、それを現実世界に落とし込み、淡々と周囲の人間の心の揺れと変身してしまった本人の葛藤を描いているところが衝撃的な作品。
題材は奇怪だが、それ故に人間の心模様がはっきりと伝わってくる。絶望、葛藤、新たな始まり、などが日記のような文体で描かれているだけに、恐ろしい印象さえ受けてしまう。 -
よく分からなかったというのが正直な感想。多分カフカの他の本を読んでもっと理解が深まるんだと思います。ただ、一つ思ったのは、人がなにかに変身するのは起こりうるということ。それは自分かもしれないし、周囲の人間かもしれない。そうなったときに、自分もザムザ一家のようになってしまうのではないかという不安で憂鬱な気持ちになりました。
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ずっと読みたいと思ってた本
若干胸糞、?
とにかく主人公が不憫でならない -
会話の出来ない巨大なゴキブリと化した家族を愛することができなかったゴミ屑人間共 & ハンストの結果餓死するに至った当該ゴキブリ・死んでも汚いゴキブリの抜け殻にしかならない可哀想な宿命を背負ってしまった主人公の物語。綺麗事を避けたインパクト重視の名作。
確かに足の本数などを考えると吐き気がしてくるため、名作と分かりつつもそこまで好きな本とは言い切れない。 -
一回では飲み込めない部分もあるが、虫になるという設定が馴染むと後は人の想い描写が見える。
虫になるとはどういうことか、どう解釈するか。というテーマが与えられるのが良いのか? -
虫の表現がリアルなのと主人公も家族も、誰も悪くないのに可哀想すぎて読むのがかなりしんどかった。
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妹のために一生懸命に働き、
妹に必要ないと言われ、
妹は自分を忘れて新たな生に期待する。
世の中人のためを思って生きられる人もいれば、
自分のことが最優先の人もいる。
多分、世の中の事実がこれだ。
実存主義 -
『感想』
〇これは、正直読後感を何と表現したらいいのだろう。正直良い気分ではない。しかしこの裏に深い意味を感じてしまい、何とも言えない。
〇グレーゴルは虫に変身したのだが、これは病気や精神的なもので部屋に引きこもっている人と捉えることもできる。
〇そう考えると虫になったグレーゴルを世話する家族の苦悩は、現在でも存在するものだ。
〇一家を支えていたグレーゴルが働けなくなったことで、他の働いていなかった家族が働きだし、生活していくところが、甘えさせてはいけない部分だろうと感じた。
〇最後、苦悩する原因がなくなることで新たな希望が芽生えるところが、いいことなのか悪いことなのか。話はここで終わっているが、その後ふとした時に罪悪感が現れるのではないか。 -
超有名文学作品、やっと読みました。
出だしは勿論知っています。ある朝突然虫になった主人公。
平凡なサラリーマンだった彼はどうなってしまうのか。わずか100頁ほどなのですぐに読めます。
家族は結局ザムザのことを都合のよいATMとしてしか見ていなかったんでしょうね。
背中にめり込み腐っていく林檎。
物置となった暗い部屋で、埃を被りながらも家族を思うザムザが可哀想でなりません。
とても悲しい作品でした。
もの悲しく悪い後味。傑作と言われる所以なのかな。