雨・赤毛: モーム短篇集(I) (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784102130087

感想・レビュー・書評

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  • 先日読んだサヴォアの作家グザヴィエ・ド・メースト「部屋をめぐる旅」
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4864882312#comment
    の巻末に、モームの『ホノルル』の冒頭で『部屋をめぐる旅』のことが触れられていると言うので読んでみた。
    <かしこい旅行者は、空想だけで旅をする。むかしあるフランス人(ほんとうはサヴォア人なのだが)は、「わが部屋をめぐる旅」という本を書いた。実はまだ読んでもいないし、どんなことを書いたものかそれさえ知らないのだが、少なくともこの題名は、私の空想をそそる。こうしたやり方でなら、世界周航だってすぐできるからだ。P155>
    モーム、読んでないのかーーーヽ(・ω・)/

    そしてこの短編集の3作は、3つとも「人間てさーー」となる、皮肉なラストでございました。

    『雨』
    南洋の任地に向かう宣教師のデヴィドソン夫婦。デヴィドソン氏は非常に厳格で、今までも道徳や信仰に対するどんな緩みも許さず、教区の人々には罰則を下していた。
    雨により船が停まり、乗客は小島に留まる。そんなデヴィドソン氏の前に現れたのは、いかにも身持ちの悪い夜の女。デヴィドソン氏は眉をひそめて女への説教を繰り返す。執拗に、高圧的に。その絶対的な態度こそが彼女を救うと思っている。やがて女も少しずつ神意に傾きかける。だが雨が、降り続くその雨がデヴィドソン氏の理性をかき乱し…。
    ==厳格。雨。息苦しい。しかし最後は「人間って ずこーー」っとなるような、まああるような、うんうん、男の(人間の)サガってやつだね。
    このお話映画化されていますよね。すごく昔にテレビで見たことがある。これはラストの神父と夜の女の場面がもうちょっとわかりやすく表現されてました。でも小説の、それをはっきり書かずに女のセリフ一行で「…あ…(お察し)」となるのがこの短編の面白さでもあるのですが。


    『赤毛』
    南洋の小さな島ののどかな光景。最初は病気療養だったがそのままこの地にいついた男の家に、太った船長が訪れる。男は船長に、昔終わった美し恋愛の話をする。島の美しい娘と、赤毛でレッドと呼ばれる西洋人の美しい青年が出会い、恋をして、結婚して、だが男は船で連れ去られた。
    いなくなった昔の愛しい男をいつまでも待ち続ける女。彼女に恋した自分はこの島に留まった。だが彼女はいつまでも男の影を思っている。
    この島が美しくみえるのも、そんな愛があったからだ。
    ふと、男は船長の眼差しに気がつく。なぜ彼は初対面の自分を嫌っているのだろう?彼の白髪は、赤毛の名残ではないか。
    そこの男の妻が現れる。すっかり太ってありふれた現地の中年女になった、かつての美しい娘。30年ぶりの対面、いよいよその瞬間が訪れ…
    ==まあモームですからね。人間ってまあこんなもんよね。

    『ホノルル』
    サヴォアの作家グザヴィエ・ド・メースト「部屋をめぐる旅」のことが書かれているというので読んでみた。
    <かしこい旅行者は、空想だけで旅をする。むかしあるフランス人(ほんとうはサヴォア人なのだが)は、「わが部屋をめぐる旅」という本を書いた。実はまだ読んでもいないし、どんなことを書いたものかそれさえ知らないのだが、少なくともこの題名は、私の空想をそそる。こうしたやり方でなら、世界周航だってすぐできるからだ。P155>
    モーム、読んでないのかーーーΣ(゚口゚;
    私には「部屋をめぐる旅」が理解できなかった_| ̄|○ のですが、多くの作家たちの興味をひいているのは、家の中で世界を巡るということが作家活動そのものだからなのかな。

    しかしこの短編の語り手は、空想ではなく実際にホノルルに行く。そして現地で知り合った元船長から呪いのような伝奇譚を聞く。魅力的な現地妻を巡っての三角関係、そして船長は相手の男から呪いを受けて弱っていく。女は相手の男に近寄り呪いを解消しようと…。
    最後の最後で「人間ってーー」というオチ。

  • 翻訳もの、特に古い作品には取っ掛り難さがあるような気がしているが、本書は非常に読みやすかった。
    「雨」世界短篇小説史上の傑作と言われる本作。
    登場人物も少なく特徴があり、風景や会話の丁寧な描写と相まって、情景や空気感まで、怖いくらい切迫して感じられた。
    ずっと続く雨、耐え難い暑さ、階下の喧騒、二夫婦の会話、何から何まで息苦しいのだ。

    個人の確固たる信条や信仰や価値観は本来の存在意義と反比例し、その世界や考えをどんどん固く、狭くしていく。本人はそれに気づかずそれはあたかも疑うことなく当然で、自分も苦しんでさえいるのだと思っている。
    そのベースになっているものが宗教であるから尚厄介だ。
    読んでいれば描かれていない部分で何が起こっているかは大体想像が着くが、どんな結末が用意されているのかが気になった。
    こう来たか、という思いと、またそこできっとこういうやり取りがあったのだろう、あの選択すらデイヴィドソンのエゴが溢れるほど感じられ、それぞれの立場の人間の業を感じ、また息苦しくなった。
    多くを語りながら大事な部分は全て読み手に委ねる手法。
    息苦しいのに何度でも読みたくなる。

    「赤毛」本作も早々に色々と分かってしまう作りなんだけど、恋がもえあがる時とその後の落差がいかにも現実的で、また、色々語ってて恥ずかしいのもとても面白い。

    「ホノルル」自分の体調もあるのかもしれないが、微妙だった。
    けれど最後の最後に、前二作同様の雰囲気はあった。

    時代的に仕方ないとはいえ、全編を通じて人種差別的な表現が散見され、なんとなく嫌な気分になった1冊。

  • 南洋の島のジメジメした雨の描写と人間の心理描写のシンクロが見事。鬱屈とした不快感が読み手にまで感染したほど。しかしサスペンスタッチのストーリーテリングの出来映えもあり大いに楽しめた。

  • 「品」とか「恥」とか、という話だと思った。
    宣教師、デイヴィドソンと
    商売女、ミス・トムソン。
    頭が良く正義感にあふれ、
    神を後ろ盾に世直しに燃える聖職者と
    脛に傷持つ淫らな娼婦。

    社会的地位にモノ言わせ、彼女を
    強制送還しようとするデイヴィドソンと
    家族に合わせる顔を持たず
    必死に異国へ留まらせてと嘆願するトムソン、
    どちらが恥を知る者だろう。

    聖書にのみ真実を求め、神の名の下に
    無学な娼婦を憐れみ説教する宣教師と
    ない知恵を絞ってあの手この手で
    涙ながらに他者に救いを求め続ける商売女、
    どちらが品を失した者だろう。

    雨は、高き者にも低き者にも等しく注ぐ。
    鬱々と。

    衝撃のラスト。
    彼女が娼婦に身をやつした過去は、
    きっと故郷に、家族にある。

  • ◆雨・赤毛・ホノルルの3作品所収。訳:中野好夫◆いずれの短編も、執拗なエゴに支配され歪められた息苦しい世界に驚かされる。長い雨に閉じ込められた中で。この世のものとも思えない楽園の中で。狭い船室の中で。そばで見聞きしているのも辛いほどの緊張が張りつめるとき、終わりが唐突に訪れる。一笑に付されるような些細でお粗末な結末。波でさらわれたように、後には何も残らない。自然は何にも支配されない。おかしくも哀しいわれ(人間)がただ在るだけ。◆モーム、好きかも♡◆訳中の「いぎたない」の使い方が誤用ではないかと気になった。

  • 『雨』
    雨が静かに物語を支配した。
    いかがわしい階下の女性。
    彼女の排除に乗り出す神父。
    見守る夫妻たちの言動が怪しくも不快に。
    次第に陰鬱な疑問が文脈に漂い、読者を不信へと。
    短編とは云え、
    上下巻を読破した様な重々しさは例えようがない。
    原因はやっぱり雨だったのかな。

    『赤毛』
    船長が島に上陸し、ある赤毛の男の話をする。
    珊瑚・クリーク・日没など風光明媚な島の自然を湛えた《おとぎ話》は、宛らアダムとイブを彷彿とさせる。
    それは次第に時が侵食する儚い世の習わしを切々と説いた。
    皮肉な結末を批判できない自身に夥しい嫌悪を覚えた。

  • ★★★2021年3月★★★


    2020年~2021年にかけて2回読んだ。
    『雨』は短編史上輝く名作と言われている。
    僕がまず思ったのは、神父のデビットソン
    「こういう人いるね」というもの。自分が絶対的な正義だと信じ込み一切の妥協をしない人。しかもそれで決定権を持っていると厄介だ。
    太平洋の島に足止めされた一行。
    降りしきるというか、洪水のように流れるような雨。
    劇的なこの効果。雨の意味するものは何か。


    最後のシーンはだいぶ肝心な部分は読者の想像次第だが、
    神父が過ちを犯したのは間違いないだろう。
    真面目一筋で頑固な人間は案外もろいものだ。
    僕はこの小説を読んで、そんなことを考えた。

  • 「月と六ペンス」で有名なモームによる短編が収められた作品。


    ①雨
    世界短編小説史上最高の傑作とされる。主人公は宣教師、狂信的な布教に燃える。彼は任地を赴く途中、検疫の為に南洋の小島に上陸する。彼はある女性の教化に乗り出すが・・・。


    ミステリとホラーが混在した物語になっているような印象を受けました。ホラーは幽霊とかではなく人間としての底知れぬ悪の怖さ。あの変わり様・・・。


    ②赤毛
    昔恋人を拉致された美しい女性がいた。そしてその女性に恋をした男がいた。彼は彼女にその男のことを忘れて貰うために必死に愛した。しかし彼女は変わらない。しかし時がたって2人は結婚する。そんなある日に船がやってきて・・・。


    赤毛の男と恋をして女性と結婚した男、そしてその女性。この3角関係に近い構造は現代に通じるものがあります。オレはなぜ結婚したのだろうか?変わり果てた女性を見て男は言います。決して悲しい恋の結末だけを描いていない浪漫なムードが漂う恋愛作品。


    ③ホノルル
    かしこい旅行者は空想で旅をする・・・という哲学チックな出だしで始まる。カラマーゾフのアリョーシャの名前も登場する。舞台はホノルル。ここにはいろんな出会いがある、そう東洋と西洋の出会いの場所がホノルルである。私はそこで誰と出会うのか?


    解説によると一種の民間伝承を素材にしているとのこと。しかし民間伝承を深く知らない私は普通のホノルルでの物語に感じました。個人的に日本人の描写がまたw


    お勧めは「赤毛」です。私は「雨」よりも考えさせられる小説でした。最後のどんでん返しがまさに今も続く男と女の恋愛を示しているようで、随分前の作品なのにやっぱり男と女のこの部分は変わらないようですね。


    次は「月と六ペンス」を読んでみたい。

  • 短篇小説の最高峰とも言える作品。
    降り続く雨に閉じ込められて、人間の本性が剥き出しになる様が面白い。蒸し暑い夏に読むのが合う。最後をどう読み解くかは、様々。ただ、人間は自然には逆らえないのだと思う。

  • モームから小説手法を学ぼうと思い、手に取った。
    …しかし、学ぶものはなかった。オチありきという小説手法に異議はないが、オチを効かせようとするあまり、前振り部分がすべてであって、これにほとんど意味もなければ共感もない。10ページ程度の短編ならともかく、これでは暇つぶしにしかならないと思う。読解力がないと言われればそれまでだが、、本書が短編の教科書と唱われる理由がわからない。
    ◆雨
    全編を雨が覆う、そのこと自体は成功しているし、文学的な雰囲気もある。そのことは否定しない。しかし、話の展開があまりにも浅薄で、一体何のための物語なのだと思わせてしまう。これが長篇であり、主人公の人格が徐々に押し曲げられた結果であるというのなら、意外とされる結末もありだろうが、「ああ、そう」のひと言で終わってしまう。
    ◆赤毛
    「雨」以上に貧相な話だ。結末は半ばほどでわかったが、わかってもわからなくても、この短編の品質は変わらない。オチありきの話であって、それ以外に何もない。
    ◆ホノルル
    ハワイにはカフナ(祭司、呪術師)がいて、相手に呪いをかけることができるとされた。だからこの話のなかで呪術がキーワードになるのは理解しても良い。しかしそれが結局、船長を助けるためのものではなかったというシニカルな結末に誘われるのだとすれば、一体筆者はこの物語で何を告げたかったのだろう。人生は皮肉によって成り立っている、ただそれだけのための埋め草だとしたら、彼こそ存在の皮肉ということになりかねない。
    散々な物言いとなってしまったが、モームを読むことは当面ないと思う。

  • 「雨」が、これまで読んだ小説の中でもか最高に良かった。簡潔な衝撃のラスト!
    大人になって、久しく体験していなかった読書の悦びを感じた。
    もっと早く出会っていればと思うけど、10代の頃に読んでても理解できなかったかも。

  • 深い余韻をもたらす『雨』は、情景描写とストーリーの内容とのリンクがとても上手くいっていて、それがそのまま登場人物の心情描写にもなっている。進行の合間に、一見関係の無いようにさりげなく、身体的特徴や人々の理性を徐々に奪っていく南国の重苦しく憂鬱な雨の様子が語られ、それが不吉なクライマックスを予感させます。

  • 『雨』『赤毛』『ホノルル』 の南国短編3話を収録している。全体的に物語における表現力や構成力が高く、読者は著者から与えられる言葉を拾いながら想像力を駆使して読み解く必要がある。
    『雨』は、最後の発言で主人公同様に読者も「一切がはっきりしたのだ」。最後まで読んでやっと物語が掴めるという感覚だ。そうなると頭は物語を遡りながら場面場面であぁそういう意味だったのかと気付く。
    自身としては、世間的な評価の高い『雨』よりも『赤毛』の方が好みだ。話題にあげている本人の目の前で、美化した妄想を垂れ流したあげく幻滅までするのだが、妄想はロマンティックでとても美しい。それが事実であったのか妄想なのか当事者たちから語られることはないが、紛れもなく愛があったことは事実だ。秘匿されたことでより奥行きと余韻が残る。

  • モームの作品に共通しているのは、冒頭で十分過ぎるほど作品舞台の背景や文化について描写をして、読者を一気にその場に引き込むところ。この短編では南洋の島々が舞台となっており、熱帯の街やそこで暮らす人々が「引き」の視点で描かれる。そこから視点は急降下して一気にターゲットに絞られ話が始まってゆく。どこに/誰に視点が絞られるのか思わずワクワクする。
    「雨」「赤毛」「ホノルル」の三編いずれも最後のどんでん返しが面白いけれど、個人的には一番皮肉な結末を迎える「ホノルル」が気に入った。ただ、何度も読み返してしまうのは「赤毛」かもしれない。運命や燃え上がる恋は、やはり幻想かもしれないのだ。

  • 「雨」を読了。キリスト教的価値観を背景に、アンチ視点で書かれている。長さの割に、いろいろと考えるポイントがあって面白かった。

  • 「雨」
    なんちゅー傲慢な宣教師だ。
    自分が正しいと信じている人間って、他人に対して無神経極まりないことを平気ですることがある。
    読み進めるうちデイヴィドソンの一歩的なやり方にイライラが募り、いよいよ頂点に達したところで意外な結末。
    すべては雨のせい―なのか?

    「赤毛」
    はじめから「もしや…」と思いながら読んだので「雨」ほどは驚かされなかった。
    ニールソンは若かりしレッドとサリーの恋に対して恋してたんだなぁ。
    知らない方がいいことって世の中たくさんあるよね。

    「ホノルル」
    三角関係から呪いをかけられる話。
    女性の賢さが光っていた。

  • モーム!

  • 実は再読(しかも三回目くらい)なんだけれど、
    諸事情により一度手放し再度入手し久しぶりに読んだので記録。

    好きな作家を訊かれた時、
    モームは始めの方に名前を出す作家である。
    文学的ながらシニカルでキレイ事に収まっていないところが好き。

    そういう意味では一作目・二作目の『雨』・『赤毛』は代表で、
    人間を描いているな、という感じ。

    同じ信仰に人生を捧げている人物が登場し
    人間の人間たる所以を描いているのに、
    『雨』は遠藤周作の『沈黙』とは真逆。
    人間の弱さはただ恐怖への弱さだけではなく、
    時に傲慢となって現れる。
    その辺りは社会的背景も無関係ではないのかもしれない。
    雨が普段隠れている人間の本性をえぐり出す、
    という点も面白い(ま、これがメインテーマなんだが)。
    実際人間が気象に影響されることは事実で、
    賢いフリをしているけど、やっぱり動物なんだな、と思わせられる。

    『赤毛』は実にシニカルで、
    コミカルでさえある。
    現実って切ない。
    人生何十年もたってからその事実に気づくのは、
    きっとちょっと辛い。

    最後の『ホノルル』も、
    最後のオチは『赤毛』に似ていて
    人間をちょっと斜めから見ている感じ。

    人間ってこんなものなのさ。

  • 雨 宣教師の内面や行動原理への露悪的な描写がすごくうまい。とはいえどうものめりこめなかった面もあり、分からなかった面もあり、突き放されたような感じも。
    小説一般の話として、あえて隠された部分の隠され方にも納得がいく、書かれたことだけでなく書かれていないことまでしっくりくる、というのは一つ移入がうまくいっているということなのだろう。
    赤毛 こちらの方が面白かった。美しい形での愛の描写、あるいはそれがしぼみゆく様が的を射たものであったし、展開のどんでん返しも楽しんだ。
    ホノルル これもさくさく読み進められた。どうも話の筋としては解決されないし、リアリティは呪術も含んだものだし合理的でないのかもしれないが、その余韻がよい。

    概して、サマセット・モームはすごく気に入った。
    あと、これから展開が豊かな小説を読むべきなのではないかと思った。

  • 『お菓子とビール』を読んで好きになって、
    次なる一冊に選んだこちら。

    南海を舞台にした三編の短編収録

    「雨」
    南の島へ行く船で、宣教師夫婦と出会う。
    検疫のため、途中の小島に急遽上陸し、
    そこで十日ばかり過ごさなければならなくなった。
    そこで同じ船に乗り合わせていた「道徳的ではない」女性と
    同宿となり…
    とにかく雨は止まず、蒸し暑く…。

    この宣教師夫婦の名はデイヴィドソン、
    ミセス・デイヴィドソンの
    わが道を盲目的信じていることからの
    他者への振る舞いが癇に障ること障ること。

    デイヴィドソンの狂信的な態度に辟易。
    「言うことをきかされる」ことが大嫌いな私、
    読んでいる間、とにかくデイヴィドソンを憎んでしまった。

    主人公マクフェイル博士は、
    デイヴィドソンの「やり過ぎ」をなんとかとどめたいとも思ったが、
    争いを好まず、あまり立ち入りたくもなく…

    そしてとうとう「とっておき」の結末を迎えることとなってしまった。

    世界短編小説史上の傑作と言われることに、大いに納得だ。

    「赤毛」
    年月というものは…
    自分が最大の価値を見出し、手に入れようと躍起になっていたもの、
    ところがある一撃でその価値観がひっくり返る!

    「ホノルル」
    不思議な話もあるもんだ…のあとの…!

    こんなに素晴らしい、こんなに面白いモーム、
    なぜ今まで読んでいなかったのかい?、私よ。

    自分なりにせっせと読んできたつもりだったけど、
    ここのところ、グルニエやモームなど、
    魂を揺さぶる作家に立て続けに出会い、
    驚き、まだまだ足りてないんだなあ、と。

    新潮文庫のモームの背表紙が紺色と黄緑がモダンで
    とっても素敵。
    手に取ると嬉しくなるというおまけ付き。

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