ぜんぶの後に残るもの

著者 :
  • 新潮社
3.44
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本棚登録 : 512
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103256229

作品紹介・あらすじ

わたしにとっての南三陸町は、その母子の輝きそのものである。町の記憶は匂いや光や言葉とともに、あの筆舌に尽くし難い圧倒的な生命力と分かちがたくわたしのなかにある。津波にも地震にも奪いきれないものが、わたしたちのなかにはある。

感想・レビュー・書評

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  • いきなり横道にそれますが、ブクログを使いはじめて早三ヶ月が経過しました。良かった、と感じることはブク友さんと知り合えたこと。おっかなびっくりはじめたレビューにも少し慣れてきました。たくさんの気になった言葉や、頭の中に散らばった感想(色とりどりで、大きさや質感、温度感もバラバラ)を整理して、ぎゅっと要約して、どうにか文章として書き出してみて、「うーん・・・・・・なんか違うな」と試行錯誤して。決して楽しいばかりの作業ではありませんが、読み終わったら本棚登録だけしていたときと比べて、格段に本の内容が記憶に残るようになりました。そして、私のとりとめのない駄文に「いいね!」をしてくださる皆さまの温かさ。それらが嬉しくて、レビューをはじめて良かった、と思う一方、こんな短い文章を起こすのに存外に時間がかかっていて、もっとサクサク書けないものか、と。その点、川上さんのエッセイは、心の赴くまま。流れる水に形がないように言葉にとらわれず自然に綴られていて、なんというか「書く」という行為に余計な気負いを感じません。「私もかくあるべし」と思いながら読んだのでした

    • コルベットさん
      koalajさん、おはようございます。そうなんです、なかなかふさわしい表現や言葉が出てこなくて。。やっと出てきた!と思ったら、時間が経ちすぎ...
      koalajさん、おはようございます。そうなんです、なかなかふさわしい表現や言葉が出てこなくて。。やっと出てきた!と思ったら、時間が経ちすぎて頭が切り替わっていて、あれ?でもそこってそんなに主張するところじゃないかもね、って笑
      2022/12/11
    • メイさん
      こんにちは、コルベットさん。はじめまして。
      いつも、いいねありがとうございます。

      書くって難しいですよね。思ってることを書こうとすると違う...
      こんにちは、コルベットさん。はじめまして。
      いつも、いいねありがとうございます。

      書くって難しいですよね。思ってることを書こうとすると違う感じになったりして、私はいつもなんか違うなーと思いながら、時間をすごいかけながらレビュー書いてます。
      私もコルベットさんと一緒です。いつも読みっぱなしだったけどブクログを利用し始めたら、内容を覚えてますね。読み返したりすると、その時感じた事が分かっていいです。
      2022/12/11
    • コルベットさん
      メイさん、こんにちは。こちらこそ。いつも、ありがとうございます。あとで読み返したときに、自分がその時感じた事が分かるっていいですよね。日記や...
      メイさん、こんにちは。こちらこそ。いつも、ありがとうございます。あとで読み返したときに、自分がその時感じた事が分かるっていいですよね。日記やアルバム写真とはまた違う、ひとつの自分史ですよね
      2022/12/11
  • 以前も書いたことがあったと思うけど、川上未映子さんのタイトルのつけ方が大好き。
    「ぜんぶの後に残るもの」。
    いいよね。

    うんうん、と共感する場面も、着眼点の鋭さにハッとさせられる部分もたーくさんあったけど、ちょこちょこスキマ時間に読んだので結構忘れてしまっている。

    P.81 唇ちょっと赤いのか
    川上弘美さんの「センセイの鞄」から派生したエッセイ。この人のことも私は結構好きなんだけど、また再読したくなった。すごく。

    P.112 プールで響き渡るもの
    (略)なんというか母がこれもう、水中から胸が1mは優に上がってるのではないのというくらいの極上としかいいようのないバタフライで、鷲の羽のような水しぶきを建てながらばっさばっさこちらへ向かってくるではないか。ヒイ!とみじかく声をあげたわたしは、予想もしなかった母の勇姿に見とれ、あ…みたいな感じになって、そうするうちにもまさかのオールバタフライという吉永小百合さんも驚きの展開で母はがんがん近づいてくる。そしてわたしが立っている終点まで来るとなんかプロっぽい感じでいったん水のなかに溜める感じで深く潜るのだった。
    「うっまいやん!」と半ば照れ隠し&大阪のツッコミの感じで母の水泳帽の横をパーンとはたいたら、その音はプール的に甲高く特徴的に響き渡り、そしてよくみるとそれは母ではない別のご婦人で、わたしはヒイ!と声をあげ「ミエちゃーん、いくよお」の呑気な声が逆サイドから聞こえるなか、プールのなかで跳ね上がって土下座したのだった。

    P.147 「字」の国の人だもの
    有名人のサインに惚れ惚れしてしまうの、わかる~となった。壁がサインで敷き詰められたラーメン屋さんなどに行くと、延々ときょろきょろして、それが誰のものであるのか、解読しようとしてしまう。

    P.150 一夜漬けの本気
    これも共感しまくったのだけれど、なぜ女子はある一定の年齢になると丸文字に憧れ始めるのか。
    小学校低学年の頃は書道を習っていたので、割と綺麗な文字が書けたのだけど、5年生くらいになると角の取れた丸い文字を書くことに傾倒し、おかげで自分の文字が著しく退化してしまったというのがあった。
    中学2,3年でようやく大人っぽい文字に憧れるようになったのだけど、これが元のようになかなか書けない。文字だけで頭が良く見られたい。

  • 導入部分から「これは真面目に社会を憂える本だな」と感じていたのが後半の崩れっぷりが最高だった。笑わせていただいた。変わった人だな~この著者。感じ方も、趣味趣向も、心の中のつぶやきがおもろい。他のことはだいたい低空飛行なのに、女性差別がらみの話題になると急に怒りだすテンションの濃淡も面白い。最初は普通の人だな~という感じでノンキに読んでいたけど、後半は、いや~やっぱり力あるわ。この人。実力あるってわかった。

  • 社会的な問題提起もあり、はてまた、
    抱腹絶倒、笑いが止まらないエッセイもあり(笑)
    もう本当にバランスの取れたエッセイ集で素晴らしかったです。

    『本当は何が好きなのですか』
    この項が自分的に一番引っかかりました。

    ネタバレを避けると、逃げることに関することが書かれていました。
    「逃げる、逃げないの精神論」はいたるところで問題になりすね。

    これを通して考えたのは、「本当の逃げとは」です。
    状況や、場からの逃げは揶揄される傾向にありますが、そうではなくて、「自分の本心」からの逃げが本当の逃げなのでないかと考えさせられました。
    「逃げるな」と揶揄するひとは、全員ではないと思いますが、反動形成で言っているだけではないのかなと思います。

  • 作家の川上未映子が主に週刊新潮に連載していたエッセイを集めたエッセイ集だ。
    週刊誌、という特性上、時事ネタが多くなりそうなところをあえて抑制している、と著者はいっていたが、この3月11日に起きた大震災はさすがに例外で、その衝撃や思いがまっすぐに綴られていて、はっとさせられる。
    多くの作家が、今回の震災で「言葉の無力さ」や「小説家という仕事の無意味さ」を感じた、という言葉を発しているけれど、著者自身も同じく自身の持つ力の弱さを感じ、しかしそれを感じた上でそこから新しいものを生み出そうと再出発している。
    もともと感受性の強い人だと思っていたけれど、大きな災害に「自分」のあり方について考え、答えがあるのかないのかわからないけど何か行動をしようとする、というその一連の情動に何か考えさせられた。
    それと同時に、そういうワンクッション(他者の心の動きや思考)をおかないと、深く何かを考えたり感じたりあるいはそれらを言語化したりということができない自分の不甲斐なさを思う。
    もちろん震災以外の内容のエッセイも多く、それらも興味深く、ときにおもしろい。

  • 川上未映子さんの本はもともとすごく好きだけど、エッセイになると、小説よりも読みやすく、文がするすると頭に入っていく感覚がとても好きです。普段感じている漠然とした気持ちを、言語化してくれていて、割とさらりと読めました。考えさせられるところがあるかと思えば、くすりと笑ってしまうところもあり、とても面白かったです。

  • すべてはあの謎にむかって
    P29みんなが等しくかけがえのない一回性を生きているからこそ、どうじにそれが等しく無価値になるのではなかったか。「わたし」というものはほとんど無限に存在している/してきた人間のなかの一例でしかないわけで、圧倒的なその感触を踏まえるところからしか、「わたし」の唯一性は立ちあがってこないのではないのだろうか。
    P100彼女の家族に思う悲しさに覚えがありまくる
    P103どれだけ洗練されていても「美化」と「泣き」はつねに安易で、回避したいところではある。

  • 17/06/03 (41)
    このひとの文章すきだなあて再確認。このひとのエッセイはずっとずっと追いかけたい。

    ・記憶はあやうく鮮やかで、そしてはっきりと不確かで、しかしそれは我々を形作る最大のものであるのもまた事実。ああ我々はどれだけの人と出会い、どれだけの人を忘れていくのだろうなあと思えば、それがいちおう自分の体験であったにもかかわらず、どれをと選んだり意図したりができるわけでもなく、我々に相談してくれたりもしないのだ。そんなふうに残るもの、残らないものがひしめいてしまう思いのなかで、なんだかぼんやりしてしまう秋の入り口なのだった。(P86 その最大さにぼんやりとして)

    ・じゃあその「いま」ってなんなの、ということになるんでしょうけど、色々あるんだろうけど「言葉である」とは言えるよね。「いま」に限らず言葉は本当にとんでもないことをやってのける、べらぼうに破格なものだと思う。(P52 「いま」ってなんなの)

  • 東日本大震災関連は普通ですが、その他のエッセイがおもしろさ爆裂。

  • 「オモロマンティック・ボム」読了してまだ川上未映子読みたいけど家にあるのこれしかない、3.11について書いたってちょっとしんどいけどまぁこれを機に読むか…。と読み始めたらなんとオモロマ続編でした。震災関係は前半ちょこっとだけ、あとは普通に(?)エッセーだったよ。良くも悪くも気が抜けてだらりと読んでしまった。
    引用部分は、自分への戒めでもあり。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。2019年、長編『夏物語』で第73回毎日出版文化賞受賞。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。その作品は世界40カ国以上で刊行されている。

「2021年 『水瓶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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