とにかくうちに帰ります

著者 :
  • 新潮社
3.50
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感想 : 254
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  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103319818

感想・レビュー・書評

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  • 鳥飼さん、田上さん、浄之内さんの3人がいる職場、いいなと思った。
    お仕事小説なんだけど、独身者たちのプライベートなおうち時間の過ごし方がいい感じで羨ましい。
    最後の表題作「とにかくうちに帰ります」だけ登場人物たちが違うんだけど、それぞれの「うち」に帰りたい気持ちが、豪雨の中という非常事態だからこそ、普段より高まっていくのが面白い。
    おうちでのんびりっていいよね。

  • 6編の短編
    職場の何気ない日常が描かれていていいな
    表題作もちょっとスリリングでなかなか楽しめた
    表紙が好きではないけれど
    ≪ 小さくて わからないけど その誇り ≫

  • 「バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ」が結構ツボ。

  • フツーの会社員たちの、フツーなようで・・・なんかちょっとおかしい部分も含んだ日常風景を、細かく丁寧にあぶりだしていく作者の技巧があいかわらず冴えた物語集。
    大きなひとつのエピソードで引っ張るのではなく、個人個人のディティールがあるからこその些細な描写で楽しめます。スケートの話なんて、オチがないようで、けれどほのぼの?と楽しめるのは、そこまでの個人のいろんなエピソードがあるからで、面白い書き方をするなあとあらためて思うのです。
    「とにかく・・・」は、「ウエストウイング」を先に読んでいたので、同じ大雨エピソードときいてプロトタイプか、と思ってたのですが、方向性はぜんぜん違う話でした。うちに帰る切ないまでの志が素敵。なにげないふれあいで見えてくる個人の善の部分、あたたかい部分が見えて、ほっこりします。登場人物たちは、凍えてましたが・・・。

  • とても面白かった。ショートストーリーが四編入っている「職場の作法」と「バリローチェのファン・カルロス・モリーナ」は土木コンサルティング会社に勤める三人の事務職の女性の話。

    浄之内さんが謎だ。スペイン語やフィンランド語のサイトが読めるらしい。マイナーなスポーツ選手をひそかに応援しているためだ。いろいろと能力のある人なのだけれど、好きなことをして一人で楽しんで生きていきたいのだろう。

    田上さんの時間管理術は自らの尊厳を守るためであった。急がずあわてず。本当はこういう人が怖いのではないか。営業もひそかに内勤の考査をやっているのだろう。新人の河谷君に知恵を授けた先輩がいたに違いない。

    表題作「とにかくうちに帰ります」は震災の前に書かれたものだ。

    「うち」が「家」ではなく「うち」なのは、ひとりのパーソナルな空間、自分のものだけで居心地良く作られた巣のような感じがする。そこに帰るために他人と協力し合うのが面白い。しっかりしているようでもこどもはやはり弱者で、お金がないと食べ物や雨具などを買えず、携帯で情報を取ることもできない。ミツグが大人の善意を感謝しているのが良い。他人の善意を当たり前に思い、下手をすると文句まで言う、そんな人間にならないように気を付けようと思った。

  • なにげない、普通のひとなら気にもかけないであろう小さなネタを掬い上げて、ここまで広げていくのはほんとにすごいと思う。どの話も、こんなにおもしろくなるもんなんだなあと感心せずにはいられなかった。
    職場でのどうでもいいようでちょっと重要なのかもしれない、微妙な人間関係がさらりと書いてある、そこがたまらなくすきだ。津村さんの書く登場人物って、腹の中に黒いものを抱えているのにそれを出さずに不器用に生きていくひとが多いんじゃないかなあ。だらだら書いてあるといらっとくるんだけど、津村さんはそこの加減がほんとにうまいと思う。
    文房具返してほしいなあ、知名度の低いフィギュアスケーターが気になる、とにかく家に帰りたいんだよ。ほんとに日常の中にある小さなことなのに、視点を変えればこんなにもおもしろい。ちょうどいい温度で、文章がとびこんでくる。心地好い空間に浮かんでいるようだった。

    (182P)

  • すごくよかった。100%よかった。嫌いな部分がないかも。
    職場での日々のちょっとしたいらだちとか、だれも知らないようなフィギュアスケートの選手のこととか、どうでもいいようなことをとりあげて、大きな展開とかあるわけでもなく、淡々としているのに、そのなかにものすごくいろいろな要素、とても大切な要素がつまっているような。台風で交通機関が止まって会社から駅まで歩いて帰るって話も、それほど大変なことになるわけでもなく、ちょっとした非日常って感じで、でもやっぱり、ものすごくいろいろ考えさせられるような。
    どの話も読後感もよくて、なんとなくほっとする楽しい気分になるし。

    好きというわけでもない仕事を日々こなして、仲がいいというわけではない職場の人たちとつき合って、毎日同じでとくに楽しいってこともないような、言っちゃえば冴えない人たちがすごくリアルで、すごく共感できて、すごくいとおしく感じる。

  • 毎日残業続きでまじで家に帰りたいなと思ってた時に目があって読みました。

    職場の作法は、本当になんというか共感するところが多くて笑ったり頷いたりしながら読みました。

    あと、ペリカーノとフィギュアの選手はついネットで調べてしまいました。買ってしまいそうペリカーノジュニア。

    津村さんの描く職場がリアルすぎて共感が止まらないので他のも読みたいなぁ。

  • 時間をかけて読み切った。
    「職場の作法」はどこにでもあるような事務所の風景なのに、、なんだかおもしろい。特にインフルエンザの話。最後まで生き残って(?)いたのがまさかの人ってパターンはお決まりなのに、喜劇的でおもしろい。
    表題作「とにかくうちに帰ります」は共感できるところがたくさんあった。なんで帰宅難民になってまで……と思われるかもしれないけど、帰らなければならない人もいれば、帰れそうだと思ったら全然ダメだったけど戻れなくて自爆する人もいる。自分も大雪の時に2度帰宅難民になりかけたことがあるけど、やっぱ家に着いたらすんごく安心する。家を恋しく思う人たちの切実さがある話だった。

  • 表題作が、雨の中家に帰る話で
    ちょうど大雨の日にビニール袋に、包んで鞄に入れて持ち歩き読んでいたので印象が強い。
    事務員さんの話、フィギュアスケート選手を応援する(気にしてるだけ?)人の話も表題作も
    視点が面白くてしかも読みやすい。
    文章の良し悪しに精通しているわけではないけど水のようにするすると入ってくる感じで
    他の作品も読んで見たいと思った。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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