反省させると犯罪者になります (新潮新書 520)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106105203

感想・レビュー・書評

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  • まともな人間は反省できる。ということはみんな犯罪者予備軍である。どんな人も読むべき人間心理の一冊である。
     反省はあと!まずは自分を見つめよう。

     体系化できていない独自理論って感じは否めない。しかし、これは教育の観点として参考にすべき事実である。教育がうまくいくには前提が必要。被教育者に「教わる」土台ができていないと、馬の耳に念仏なのである。それが「反省」でも同じ。問題行動のほとんどはこの土台ができていないから起きる。

     土台作りをサポートしてもらえなかった人々の存在を知らしめてくれる一冊であった。


  • 著者の主張は一貫しています。その主張は大きく2つです。
    
    ・抑圧すると爆発する
    ・問題行動が起きた時がこれまでを振り返るチャンスである
    
    「抑圧すると爆発する」というのはどういうことかというと,「自分の中にある否定的な感情を発散せず我慢していると,いつか犯罪や自死などの行動として最悪な形で現れる」ということです。
    
    生きていく中で人は否定的な感情を抱えます。それをうまく発散できれば大きな問題は起こりませんが,うまく発散できず溜め込んでいると後に問題行動として現れます。犯罪者も同じで,自分の中にある否定的な感情を抑圧してきた結果,犯罪を犯してしまったと考えることができます。なので,まずは,その否定的な感情を発散させることが改善への一歩なのです。
    
    しかし,「悪いことをしたのだから反省しろ」と反省文を書かせたり,被害者の心情を考えさせたりすることは,否定的な感情を発散させるどころか,さらなる感情の抑圧へとつながります。たとえば,犯罪者にも犯罪を犯した犯罪者なりの理由があるわけなので(それが良いか悪いかはとりあえず置いておく),まずはその感情を発散させる必要があります。しかし反省文を書かせることは,その理由を発散させることにはならず,思ってもいないこと(たとえば,私の心の弱さが犯罪へとつながってしまいました。反省しています。など)を書かせるだけになり,結果として本当の気持ち=感情は抑圧されることになります。その結果,犯罪者は反省することなく,また同じ過ちを繰り返す可能性が高くなってしまいます。
    
    ですので,犯罪や自死などの行動が起きないようにするためには,自分の中の否定的な感情を発散させる必要があるわけです。そして,自己の否定的な感情を発散させる,つまり自己理解が深まっていくと,結果として他者理解も深まっていきます。なぜなのかはここでは詳しく書きませんので,本書をご覧いただきたく思います。
    
    2つ目の主張は支援者の立場からのものです。自己の否定的な感情を抑圧してきた結果,犯罪や自死が起きるわけなので,支援者からみると,そのような問題行動が起きたときは逆に言えば,何が問題行動の原因となっているのかを探り,それを解消するきっかけになるわけです。ですので,支援者には,問題行動が起きたときに闇雲に反省させるのではなく,その行動の原因を一緒に探っていくという姿勢が求められます。
    
    このように本書では,「抑圧すると爆発する」「問題行動が起きた時がこれまでを振り返るチャンスである」という主張を論拠に,現代の「更生」の在り方を批判していきます。筆者の考えが豊富な事例をもとに展開されますので,説得的な内容になっています。
    
    本書は犯罪者の更生についての話が主ですが,「教育」に携わる人にとって示唆に富むことが豊富にあります。たとえば,「自分のなかに,正しいと思って刷り込まれた価値観が多ければ多いほど,他者に対して「許せない部分」が増えていきます。」(p.158)という一文は,子育て,特にしつけを考える上で重要な指摘かなと感じました。
    
    「教育」あるいは「支援」を考える際にこれまでの価値観を相対化する上で役立つかなと思います。
    (ただし,問題行動の原因を親に帰属しがちな部分はちょっと気になりました)

  • 宮口さんの【ケーキの切れない非行少年】で紹介されていた一冊。
    タイトルからして過激。内容もかなり切り込んだ内容になっていた。
    でもそこには、著者の「何とかしたい」という情熱や想いを強く感じた。

  • 題名は強めだが、内容は非常に読みやすく、勉強になる良書。
    犯罪者だけではなく、一般向にも参考になることが多くある。
    反省への概念が変わることまちがいなし。
    価値観を変えてくれる1冊。

    いじめ対策に悩んでいる教育関係者にもおすすめしたい。

  • 過激なタイトルではあるが、筆者の伝えたい反省ではなく内面を見つめることの大切さは、全ての人に大切な生きる知恵である。

  • 言いたいことは分かるし、同意する部分も少なくはない。でもねー。なんというか他人の実践に厳しく自分のそれには甘いという印象が。

    受刑者は相手の望みに忖度して”反省”を演ずるんでしょ?じゃ、筆者の助言という形の求めに応じて「自分の内面に向き合って出て来た(主に養育者への)怒り」ってのが忖度による上っ面の言葉じゃないってのはどう確かめるの?ましてその過程を経たらやっと”本当の反省”が出来たなんて何の裏付けも無いように思うんだけど。ましてそれが半年から一年の月一回とかの面談で実現?うーん、ちょっと話がうますぎると感じてしまいます。繰り返しになるけど、言わんとすることの多くには同意するんですが。

  •  加害者が自分のやった行為について省みるとはどいうことなのか、経験から導き出した結論は、題名のとおり。
     読みやすくためになるのですが、何度も同じことを言っていて、文章的にはきつかった。ためにはなります、ほんとに。

  • 後半の気づきの部分の内容は、自分が似たような経験をしていたのですんなり受け入れることができた。
    自分は周りに恵まれていたなーと改めて感じる。

    今度は自分が支援者になって1人でも気づかせてあげられたらいいなーと思った。

  • 人はどうしたら更生できるかを、受刑者を支援してきた著者が説く。「まず反省させる」ことの害。内省をサポートすることの大事さ。子供や後輩への関わり方でも同じ。この視点はいつも持っていたい。同じことの繰り返しが多いのがやや難だが勉強になった。

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著者プロフィール

立命館大学教授

「2012年 『ロールレタリング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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