キリストの身体: 血と肉と愛の傷 (中公新書 1998)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121019981

作品紹介・あらすじ

キリスト教にとって大切なのは、身体ではなく精神、肉体ではなく霊魂ではなかったか。しかし、キリストの身体をめぐるイメージこそが、この宗教の根幹にあるのだ。それは、西洋の人々の、宗教観、アイデンティティの形成、共同体や社会の意識、さらに美意識や愛と性をめぐる考え方さえも、根底で規定してきた。図像の創造・享受をめぐる感受性と思考法を鮮烈に読み解く、「キリスト教図像学三部作」完結篇。図版資料満載。

感想・レビュー・書評

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  • イエスが本当はどんな姿をしていたのかではなくて、彼がいかにイメージされてきたのかということ。
    キリストの醜さはほかでもなく神が人間へ降りてきたことの証拠であり、罪で歪められた人間の醜さを贖ってくれる証である。
    538年のオルレアン公会議で復活祭にユダヤ人はキリスト教と同席してはならないという決定がなされていたものの、10世紀ごろまでは総じてあからさまな反ユダヤ主義や虐待が表面化することはなかったといわれる。
    キリスト教の前身であるユダヤ教は偶像に関してのみならず、そもそも見るということに関してかなり禁欲的な宗教であった。神とはその顔を見ることのかなわない存在なのであり、いわば絶対的な他者であった。
    カトリックが信三や傷の伝統的なメタファーを、やや大げさな形で両しつづける一方で、プロテスタントは信仰をますます個人の内面の問題とみなし、もっぱら個人主義的で理念的な観点からとらえるようになっていくだろう。

  • 聖書にキリストの顔の描写はない。
    これまで、人々はキリストの姿をどのように捉えてきたのか。
    美しい姿、醜い姿、潔い姿、穢れた姿、そして捉えどころのない抽象的な姿、、、時代によって異なる描き方をされたキリストに迫る本。

    最も衝撃的だったのは、キリストの脇腹の傷とロンギヌスの槍が女性器と男性器に例えられている絵画があることだった。

  • 描写されたキリストの姿からいろいろなことが読み解ける。
    キリストがイケメンか不細工か、考えたこと無いし。目から鱗がぽろぽろと。

  • 『キリストの身体―血と肉と愛の傷』(岡田温司、2009年、中公新書)

    イエス・キリストの身体に現れるさまざまな象徴的な図像は、いったいいかなる意味を持ち、いかなる役割を担っているのか。

    それらを幅広い視点から検証している。キリストの姿を描いた多くの美術品の挿絵が多いので、わかりやすい。

    (2009年8月26日)

  • 三部作完結。徐々に難しくなってきて、読み応えがありますが、最終章は比較的わかりやすくすんなりと入ってきました。

  • この本好き。何度でも読んでしまう。
    手に取るたび、初読時の
    「そういえばイエスは磔にされたんじゃん!
    身体って大事なテーマじゃん!」と
    興奮気味に読んだのを懐かしく思い出す。

    偶像崇拝を禁ずるユダヤ教、
    それがベースにあるキリスト教について
    「キリスト教=精神重視」という
    聞きかじっただけの知識を改めさせられた。

    人の手によらず出来上がったもの、
    人の手によらず複写されたものという考え方や、
    同質と類似の混同等、
    興味深いテーマが盛りだくさん。

    この本をきっかけに岡田温司著の
    新書を集めることになった。

  • [ 内容 ]
    キリスト教にとって大切なのは、身体ではなく精神、肉体ではなく霊魂ではなかったか。
    しかし、キリストの身体をめぐるイメージこそが、この宗教の根幹にあるのだ。
    それは、西洋の人々の、宗教観、アイデンティティの形成、共同体や社会の意識、さらに美意識や愛と性をめぐる考え方さえも、根底で規定してきた。
    図像の創造・享受をめぐる感受性と思考法を鮮烈に読み解く、「キリスト教図像学三部作」完結篇。
    図版資料満載。

    [ 目次 ]
    第1章 美しいキリスト、醜いキリスト
    第2章 パンとワイン、あるいはキリストの血と肉
    第3章 肖像と形見
    第4章 キリストに倣って(イミタティオ・クリスティ)
    第5章 愛の傷

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 「キリスト教図象学三部作」完結篇 キリストやそれに関係する出来事(奇跡)を後の人々がどのように捉え、絵画・彫刻などの図象に表現してきたか。とかく観念的で難解なこれらのものを比較的解りやすく説明されています。

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著者プロフィール

1954年、広島県に生まれる。2020年、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を退職。現在は、京都大学名誉教授、京都精華大学特任教授。専攻は、西洋美術史。
 著書に、『キリストと性』(岩波新書、2023)、『反戦と西洋美術』(ちくま新書、2023)、『ネオレアリズモ──イタリアの戦後と映画』(みすず書房、2022)、『フロイトのイタリア──旅・芸術・精神分析』(人文書院、2008、読売文学賞)、『モランディとその時代』(人文書院、2003、吉田秀和賞)など多数、
 訳書に、ジョルジョ・アガンベン『創造とアナーキー──資本主義宗教の時代における作品』(共訳、月曜社、2022)、同『王国と楽園』(共訳、平凡社、2021)など多数がある。

「2024年 『アートの潜勢力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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