儒教とは何か 増補版 (中公新書 989)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121909893

作品紹介・あらすじ

儒教は宗教というより、単なる倫理道徳として理解されがちだ。古い家族制度を支える封建的思想という暗いイメージもつきまとう。しかし、その本質は死と深く結びついた宗教であり、葬儀など日本人の生活の中に深く根を下ろしている。本書は、死という根本の問題から儒教を問い直し、その宗教性を指摘する。そして孔子以前に始まる歴史をたどりながら、現代との関わりを考える。全体を増補し、第6章「儒教倫理」を加えた。

感想・レビュー・書評

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  • 儒教を「宗教性」と「礼教性」に分けて解説していたのが良かった。我々がいわゆる「儒教」として思い浮かべるのは礼教性の部分だと思うが、「宗教性」にスポットライトを当てることで、日本人の多くが知らない儒教像にを浮き彫りにしている。しかし礼教性も疎かにしてはおらず、政治や経済に大きな影響を与えてきたことがしっかりと説明されている。

  • 中国哲学の研究者である著者による「儒教」について解説する本。
    儒教の基礎的な内容から、発生から現代に至るまでの過程について述べられる。内容は硬いが、そこまで難解というわけではなく、入門書としては最適な本だと思う。

    日本では儒教は名前だけは知られているが、その実はあまり理解されていない。単なる倫理や道徳を説くものと誤解されている側面もある。
    しかし、著者によれば儒教とは「礼教性」と「宗教性」を複雑に折り込んだひとつの体系であるという。

    儒教の発生母体となった「原儒」とは、死者となった祖先の魂を依代を使って現世に再召喚するシャーマン的な役割を果たす役職だった。
    これが祖先崇拝、親への敬意、子孫を産むことといった「家族倫理」の形成にまとまっていき、これは「孝」と呼ばれるようになる。自分の死後、現世の依代となる子孫に降霊をしてもらう必要があるからだ。

    そしてこの理論化・体系化の進展を大幅に進めたのが孔子であった。さらにこの家族倫理・社会倫理の上に宇宙論・形而上学論を重ねたのが朱子による「朱子学」である。

    儒教は知らず知らずのうちに日本人の死生観や習慣・儀礼に溶け込んでいる。故にこれを理解しておくことは重要なことである。
    またこれを合わせ鏡にすることで仏教、道教、キリスト教の洞察ができると言って良い。
    しかし儒教を体系的にまとめた読みやすい本というのは中々ない。その意味で本書は貴重なものだと言える。

  • 儒教または儒学についての知識が全く0であったが(この本を読んで「あ、孔子って儒教の人なんだ」思ったレベル)
    難解過ぎない内容で最後まで読むことが出来た。

    「儒教とは宗教である」や「儒教の礼教性と宗教性について」というメインの主張については私には難しい内容なので
    ほかの学者の本も読んでみたいと思う。

  • 2024/9/28

  • この本はタイトル通り、儒教とは何かを見ていく作品です。儒教といえば宗教というより倫理道徳と見られがちですが、著者によれば儒教こそまさに中国人の宗教に大きな影響を与えたと述べます。

    儒教は死と深く結びついており、儀礼、倫理道徳だけで収まるものではないことをこの本で知ることになります。

    加地伸行氏の著作については前回の記事で紹介した『孔子』もとてもおすすめです。孔子がどのような人物でどのような人物だったかがわかる素晴らしい伝記です。本作とセットで読めば相乗効果抜群です。ぜひ二冊セットでおすすめしたいです。

  • 宗教の根源は死への思考である、と定義づけた上で、儒教を四角四面な礼儀作法の流派みたく考えるのではなく、立派な一つの宗教として捉えるべきだ、というのを説いた本。それが的を得ているかどうかは凡人には知る由もないが、確かになと思う節もある。
    日本の仏教には多分に儒教からの影響を受けたとみられる風習が保存されていて、日本人の死に対する姿勢もおのづと儒教的なところが多々あると書いているが、そもそも日本に仏教が伝わったのは朝鮮経由であり、朝鮮は勿論中国から学んだはずなので、そもそも日本に伝わった時点で仏教としては可也混血が進んでナニジンとも見分けの付かない風貌の宗教になっていたに違いないと思う。そう思って読んでいたら最後の章に作者自身そんな感じのことを書いていた。つまり仏教だと思ってとりいれた宗教は実は仏教の皮をかぶった儒教だったというオチ。個人的にも、インドやネパールでみた仏教と日本の仏教の違いがあまりに大きすぎて戸惑った経験があるので、共感できるところが多かった。
    この本、に限らず、この作者で残念なのは、話が冗長で同じことを何度もクドクド繰り返すこと。もう少し手を入れて整理すればここまでの分厚さは不要だし、巻末に申し訳程度に載せたとしか思えない図解なんかは関連する各章に挿絵で挿れればいいのにと残念に思う。

  • どうも腑に落ちない。儒教の宗教性に光を当てた着眼は素晴らしいが、一体宗教としての儒教がどのようなものであるのかが曖昧である。原始儒教には教祖もなく、経典もなく、あるのは『祖霊祭祀』の形式と信仰だけ。著者が指摘するように、祖先崇拝も霊魂の存在も、古今東西多くの社会で信じられてきた。それらを『儒教』と称するならば、世界中儒教だらけである。何故中国の古代民間信仰を捉えて『儒教』と呼ぶのか、結局ここの説明が曖昧だから「大乗仏教も実は儒教なのだ」的な極論となり、一気に信用を失う結果となっている。確かにインドの上座部仏教が中国で大乗仏教に変質した背景に儒教の影響があっただろうが、しかしそれはあくまでも仏教である。同様に現代韓国で信仰されているキリスト教も、どんなに本質が儒教のようであってもやはりキリスト教である。さらに日本では古来の神道の影響を色濃く残していると思われ、何が何でも儒教に結びつける説明は著しく説得力を欠く。こういう調子だから学会で異端扱いされるのだろう。
    日本では(中国でも?)儒教の本質は仁と理解されていて、本書で一貫して孝が第一と主張するのも、宗教としての儒教とは何であるかをもう少し丁寧に説明しないと伝わらないと思った。

  • 礼教性に重点が置かれがちな儒教を、その宗教性に焦点を当てることにより、日本人に浸透していることを解明したもの。良くも悪くも宗教に寛容というかいい加減な日本人の実態がよくわかる。

  • 宗教というよりも、倫理道徳や古い封建的思想といったイメージを持たれがちな儒教。その本質を根本から問い直し、儒教の宗教性について考察する書籍。

    日本の仏式葬儀で、多くの参列者は柩を拝む。だが、それは誤りだ。仏教徒は本尊を拝むべきで、柩を拝むのは仏教ではなく儒教のマナーである。この葬儀儀礼を抜きに儒教は存在しえない。すなわち、儒教は死と深く結びついた宗教である。

    古来、中国人は、現世は快楽に満ちた楽しいところであり、少しでも長く生きたいと願った。そんな彼らにとって、死は大変な恐怖だった。

    死に怯える中国人に、死は恐怖ではないと説明することに成功した集団が〈儒〉である。儒は、死者の魂を呼び戻す招魂儀礼を行うことで、死者を現世に再生できると考えた。そしてこの再生理論を説くことで、中国人の死の恐怖を解決した。

    上記のような招魂儀礼は、祖先崇拝、祖霊信仰を根核とし、当然、祖先を祭祀する。祭祀を続けるには、主催者となる子孫を生み続けることが欠かせない。そこで儒は、次の3つの行為を1つに統合し、〈孝〉という独自の理論を作った。
    ①祖先の祭祀
    ②父母への敬愛
    ③子孫を生むこと

    孝を行うことによって、自己の生命は祖先の生命であり、また逆に子孫の生命でもあるという、1つの転換が起る。すなわち孝の本質は、永遠の生命を認めようとする生命論である。

    宗教とは、「死ならびに死後の説明者である」と定義できる。
    中国の場合、漢民族の考え方や特性に最も適した、死ならびに死後の説明に成功したのが儒教であった。そのため、儒教は支持され、国民宗教としての地位を得た。

  • 儒教について、実学的な面から離れた宗教性(死との向き合い方)に焦点を当てつつ、それが如何に実学的になっていってしまったかを掘り下げている。

    祖先崇拝は仏教でも多い、というか仏教でやっていると思っていた。神仏混合のさらに根本には、儒教があった。

    気になる点は、やっぱり儒教があまりに封建主義、血縁主義すぎる

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著者プロフィール

1936年大阪生まれ。京都大学卒業。文学博士。大阪大学名誉教授。専門は中国哲学史。著書に『論語 全訳注 増補版』『漢文法基礎 本当にわかる漢文入門』以上講談社学術文庫、『儒教とは何か』中公新書、『ビギナーズ・クラシックス中国の古典 論語』角川ソフィア文庫ほか。

「2022年 『角川まんが学習シリーズ まんが人物伝&まんがで名作 新しいお札の顔!近代日本の偉人セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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