夫の墓には入りません (中公文庫 か 86-2)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122066878

感想・レビュー・書評

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  • なかなか刺激的なタイトルに惹かれ、★もまずまず高評価だったので買ってみる。

    46歳の夫を亡くした夏葉子、44歳。
    東京から長崎に嫁いだものの、仕事が忙しい夫との間には夫婦生活と言えるようなものがなく、夫が死んでも涙も出ず、寧ろ保険のお陰でローンの心配もなく独りで自由を謳歌できる身になった筈だったが…。
    最初はコメディーみたいな軽いタッチで読むことが出来たが、読み進むに従ってどんどん気が重たくなってきた。
    「○○家の嫁」という呪縛のなんと強烈なことか。男の私が読んでいても嫌になるような舅姑その他周囲の言動。悪気がないだけにたちが悪い。
    こんな自分の価値観だけが絶対で他人の価値観を慮れない人って本当に付き合い切れないのだけれど、それに面と向かって自分の気持ちを言うことも出来ないしなぁと夏葉子に同情していたら、いい人を演じることは結局周りから”便利屋”として認定され軽く見られているだけだといった件りが出て来て、何だか自分の人生を言い当てられたようで萎える。
    加えてそう言った夏葉子の父親が本当に頼りになる父親で、これまた自分に当てはめると妻や子に対してこのように頼りになる父親であり得たかを顧みて、更に萎える。
    最後は収まるところに収まって佳い話風に締められて、騒いだ割にはなんとなしの物足りなさ感は残ったのだけど、一方、こういう生き方しか出来なければ、それもまた良いさと思わせられるところもあった。
    刺激的なタイトルだったが、読み終えてしまえば、単行本の時の「嫁をやめる日」のほうが的を得ていると思った(まあ、それじゃ売れないだろうけどね)。

    しかしお墓の問題は深刻だな。
    最近よく新聞に合葬墓のことが載っているけれど、正直なところ、田舎の墓じまいをして、自分はそういうところに入るか、散骨でもして欲しいと思っている。
    だけど、田舎の墓じまいをするのを、母や親戚がどう思うかと考えると、そこで思考が停止する。これではいかんのだけど、なぁぁ…。

    長崎は生れてから小2になるまで住んだ町なので、描かれる風物が懐かしかった。
    ミルクセーキやスーパイコは勿論知っていたけど、我が家で「エビのパン天」と呼んでいたものは正式には「ハトシ」というのか。
    なかなか食べる機会がないので、久し振りに食べたいなぁ。

  • 夏葉子の感じ、とても理解できる。

    父親から「単細胞」と言われるくだり、その後、助けてもらい続けるところ、とても響く。「自分の領域のみで話す」こと、私も難しい...(汗)。

    結局、各方面(夫、義父母、両親、義姉、妹)から、とても愛されていたんじゃなあい...?
    絶妙で、ホッとする、読了感(笑)。

  • ある晩、夫が急死。これで嫁を卒業できると思いきや、舅姑や謎の女が思惑を抱えて次々押し寄せる。“愛人”への送金、墓問題、介護の重圧…がんじがらめな夏葉子の日々を変えたのは、意外な人物と姻族関係終了届!?婚姻の枷に苦しむすべての人に贈る、人生逆転小説。『嫁をやめる日』を改題。

  • 老後の資金が〜のイメージで読んだが、こちらのほうがずっと面白くてためになると感じた。舅、姑の良い家柄や義理の妹が引きこもりである設定が絶妙だし、実家の父母の設定も読者を不安にさせながらも最後は…となるところも無理なく納得。あと、元夫か振込していたサオリの存在も終盤で謎が溶けるなど、話の話の筋立てや設定画面が絶妙なうえ、読了感がよい。願わくば、最初から怪しい匂いの工藤とサオリの両名にお仕置きシーンを加える事、と、義理の妹が社会に馴染み始めるシーンも読みたかった。また、姻族関係終了届なるものの存在についても勉強になりました。
    義理の家族は潰してもいい人間と考える心理のはゾッとするが、しがらみを一度捨ててフラットな関係でもう一度良好な関係を築くこともできると思わせてくれ、暖かな気持ちになった。

  • 嫁目線で読みましたが、、、。
    初めはなんて良いお姑さん!!と思っていたが、最愛の息子の死後、拍子抜けするほどの変貌ぶりに、一時は嫁に同情したが、嫁も嫁で(ちょっと冷たすぎない!?お義母さん可哀想!)としだいにお姑さん寄りになりました笑
    お義母さんもやりすぎなとこもあったけど、もし主人公の夏葉子さんが自分の息子の嫁だったら、息子が不憫で仕方ないかもって思いました(*´-`)
    まぁ、最終的に良い関係になって、ほっこりしました(^ν^)

  • 最後、姻族関係終了届を出した後の姑との距離感も良かったし、理解できなかった夫に対しての誤解?も小さくなり、その場から少し離れたところから冷静に見れるようになって夏菜子にとって良かったなと。
    工藤とのデートで亡き夫の好物を頼んでしまった心の機微。
    とても秀逸な作品でした。
    他の方も書かれていましたが、最後がハッピーな方向に向かっていることが嬉しい。
    また秋に訪れた長崎の情景が浮かんで、画像が目の前に見えるようでした。

  • 面白かったなぁ。

    人との関わりの中で、自分の本当の気持ちを優先すると相手を傷つけたり不快にさせてしまいそうだと気付いている瞬間って、どうしても自分の気持ちを押し込むことがその瞬間の「正義」であり、そういう「優しい」人でいられることを自分自身も望んでいると考えてしまいがち。だけど、やっぱり自分の人生に最後まで付き合うのは自分なんだし、長い目で見て、自分のことを大事にできるのは自分しかいないんだなぁと、改めて思った。
    「あなたのために私は我慢した」と言っても、「そんなに嫌なら断ればよかったじゃない」ときっと言われるのだろう。無理強いしたわけじゃないと。

    東京でのお父さんとの会話は一言一言が沁みた。最後の電話も。父の偉大さと、心から味方となり守ってくれる親の姿に目の奥がじーんとなった。

    高瀬家のお義母さんの今後を思うと、善し悪しは置いといても、これからの未来が不安すぎて夏葉子を繋ぎ止めたくなる気持ちはとてもよく理解できる。けど、途中はやっぱり従順な夏葉子を甘く見て軽んじてた節あったし、認知症を隠すあたりちょっと卑怯だったんじゃなかったっけ?などと思い出し、読み終わってから頭を抱える。とんでもない!と思う気持ちと、(でも冷たく見捨てたいわけじゃなかった)という気持ち。いや、とんでもないけども。
    やっぱり、どこかで線引きをして、理性的に自分で自分を守るという意識を持たないと、気づいたら無限に搾取されてしまいそうだ。

    まぁ、なんだかんだといっても最後は心があったかくなる終わり方で、そこに至る道のりでグサグサと刺さっていた心のトゲが少しとれたのでよかった。

  • 老後の資金がありませんがとでおもしろかったので、続けてこの作品を読みました。
    面白いのですが、ぜんさくのような爽快感はなく、なんだか重く気持ちが落ち込んでしまいました。

  • お父さんのアドバイス
    「人を批判するな、自分の感じたことを伝えよ」
    心に残りました。夫に対して練習しようと思う。

    垣谷さんの「老後の資金がありません」
    が非常に面白かったので、色々と著書を読んでいる。
    当作品は、初めて読んだ直後、すっきりしない読後感だった。お姑さんの豹変ぶり、出来すぎたお父さんの存在がリアルに感じられなかったな、、、もう一回読もうと思う。

  • 夏葉子は40代という微妙な年齢で突然、夫を脳溢血で亡くす。ずっと夫婦間の会話が少なく不満を抱いていただけに、解放されてひとりの人生・自由を満喫できると思っていたところに、夫が生きていた頃よりも舅姑と引きこもりの義姉との関係にがんじがらめにされ、「つぶしてもいい人間」として扱われる。読み進めるごとにモヤモヤ感、イライラ感がつのり、そこらのホラーよりももっとえも言われぬ怖さを感じた。最終的には丸く収まるんだけど、自分だったらと色々考えさせられた。

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著者プロフィール

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『後悔病棟』『嫁をやめる日』『女たちの避難所』『四十歳、未婚出産』などがある。

「2023年 『うちの父が運転をやめません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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