- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130331081
感想・レビュー・書評
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本書の元になったのは、東京都豊島区にある豊島岡女子学園中・高において行われた全5回の講義。
豊島岡女子学園といえば、近年桜蔭に次ぐ東大進学者数を誇り、超進学私立女子校として名を馳せている。
賢いお嬢様方に向けての講義は、賢くないけれどそれなりの年月を生きてきたオバさんにも分かりやすく、政治というモノの見方を変えてくれた。
遠い昔、社会科の授業で歴史や地理の分野は好きだったが、公民だけはピンとこず、サンケンブンリツ…権力が分けられていることすらイメージできなかった。
それは、歴史や地理は自分と地続きであるが、選挙権もない保護下に置かれた子どもには、公民が自分とつながっているモノであるという認識がなかった故だろうか。
このような考え方があれば、小中学生にも公民に興味を持ってもらえるのではないだろうか。
この講義の中で、「政治とは人といることだ」と宇野さんは伝えている。それぞれ意見も個性も違う人々が、どのようにしたら共に幸せに暮らすことができるのか…を考えることで、いわゆる政治家だけに委ねられてられているものではない、と述べている。
そして、時代の急速な流れと共に、多数決民主主義の限界がきていることも宇野さんは伝えている。
多数決に変わる制度にはどんな形があるか、という話はとても興味深かった。
最後に5回の講義を振り返るまとめの章もあり、巻末には生徒の代表(中3〜高2)との座談会も収録されている。
豊島岡女子の生徒さん達は流石!な鋭い洞察力と表現力をもっている。どうか、社会に出てもこの鋭敏さが奪われることのないように願う。が、それは杞憂に過ぎず、これからの世代はガラスの天井を打ち砕いていくのかもしれない。
以下は内容盛り沢山なので、忘れないための読書メモ。
●ルソー、カント、ヘーゲル三人の政治哲学者の思想の違い。
●伊藤穰一…アメリカで活躍するオピニオンリーダー
「9プリンシプルズー加速する未来で勝ち残るために」
ジェフ・ハウと共著/早川書房
これからは「強さ」ではなく「しなやかさ」の時代。国は軍事力や経済力を強化し、個人も能力や資格を身につ強くならねばならないと言われてきたが、いくら力をつけても人間は必ず失敗する生き物。
これからは強さよりも、失敗から立ち直り、学び、成長していくレジリエンス(回復力)が重要。
また、「押す」のではなく、「引く」時代。全てもち抱える者から指示を押し付ける時代は過去の物となり、外の「弱いつながり」のネットワークから必要に応じて引き出してくる。
●多数決民主主義に限界がきている…そもそも民主主義と多数決には矛盾がある。
かのウィンストン・チャーチルは、「民主主義は最悪の政治だ、ただしこれまで存在した民主主義以外のすべての政治体制を除けば」と述べ、民主主義をけっして完璧であると思っていなかった。
また「頭をかち割る代わりに、頭数を数える制度」とも言い、「人の頭数を数えて」多数派の意見を採用するのがいいとは限らないけれど、殺し合いになって「人の頭をかち割る」のよりはマシだろうと民主主義を評価した。
●ボルダ・ルールという決め方
「多数決を疑うー社会的選択理論とは何か」岩波新書
坂井豊貴/著
多数決はたくさんある「決め方」の一つに過ぎず、それも最善のものではない。その理由は多数決という仕組みが、候補が三人以上いるときに変な結果を導いてしまう点にある。
アメリカ大統領選の例。
三人の候補がいる場合、一位に3点、二位に2点、三位に1点という点数をつけるのが、ボルダ・ルール。数学者ジャン=シャルル・ド・ボルダの名前にちなんでつけられた。
候補者X、Y、Zの例題。
2020.1.25
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社会人になった今学校に通いたい。勉強したい。
そう思わされる本です。
現在の日本社会の仕組み、政治のこと、世界の動き…
社会人になってからニュースがものすごく気になるようになりました。
学生時代はあくまで座学にすぎなかった。勉強してることと生活を重ね合わせることなく、勉強は勉強。受験のためのもの。
大人になってから、ふとしたときに枕草子の一節を思い出したり、お吸い物の塩分濃度が気になったり。
こういうことかぁ。生きていくために学校に行っていたんだな、って、やっと分かった。
私は今の生活、日本の社会保障の仕組み、税金の使い方、政治に納得してない。もっと良いやり方があるはずだって思う。でもどんなやり方がいいか分からないから、こうやって本を読む。
色んな人の意見を聞く。人の意見を聞くと自分の意見も生まれる。賛成か反対か、なぜそう思うか。
文句はあるけど自分では何もできない。できないけど、もっと良くしたいって、考えることはやめたくない。自分と大切な人の幸せのために。 -
高校生に勧められる本を探して。凄く良かったです!対談形式なのも読みやすい。そして講義を受けている高校生たちの聡明なこと!(自分が高校生だったらこんな応答できただろうか?)
思想家たちについても可愛らしいマンガと、愛の溢れる解説があってよかったです。ルソーやヘーゲルなど鉄板の思想家が登場しており、安心感があります◎
最後に、私の大好きなハンナ・アーレントの紹介もあり、、、高校生(しかも女子)にアーレントを紹介したいという宇野さんの心意気が良い!実は人から借りた本なのですが、手元においておくために買おうかと思ってます。 -
著者の高校生への政治に関する講義を書籍化したもの。
政治に関する講義と言っても、高校生にとって(そして多くの大人にとっても)非常に身近な話題を軸に行われた講義のため、読みやすくまた内容の理解もしやすかった。
高校生とのやり取りも収録されているため、まるで自分が高校生と一緒になって講義を聞いているかのような気持ちになることができた。
巻末には参考文献も豊富に載っており、興味の出た分野の本を次は読んでみようかなという気持ちになった。 -
日本学術会議で菅首相が任命拒否した6人の中にお名前を拝見し、初めて知りました。中学生や高校生を相手にされた講義を元に編まれた本ということで、読みやすいかなと思って読み始めました。
政治を「人と一緒にいること」という視点で話し、とても親しみやすかった。
また、ルソー、カント、ヘーゲルといった哲学者を「ザ・政治経済の教科書」ではなく、血の通った人間として語り、なぜそういう思想に至ったのかまで丁寧になぞってくれて、理解が深まりました。
民主主義イコール多数決でもないし、民主主義も多数決も、絶対のものでもない。思考停止して受け入れるのではなく、考えるところから始めよう。
また最後にプラグマティズムの話も良かった。
習慣が変われば人格が変わり、人格が変われば運命が変わる、というやつですが、その先があって、自分一人が変わることから、うまくいけばみんなが変わる。みんなを変えれば社会が変わる、と「小さなことでも何かやってみようよ」というメッセージとして受けとりました。 -
身近な人との関係を考えることが政治について考えることにつながる
身近な不具合や理不尽の解決には社会や政治のあり方まで辿らないとできないことも多い
自分がどういう未来を描くか、自分に出来る1歩はなにか。 -
女子高生に政治学を講義し、その内容を書籍化した本。すごくわかりやすくて面白かった。政治学を難しいからいいや、と思考停止しないで、世界をちょっとずつでもより良くするために考えていかなければならないんだな。ヴォルテールの『カンディード』を読んだばかりだったので、ルソーとヴォルテールが揉めてたことを思い出した。いいキャラしてるよね。身内にいたら大変そうだけど、著作読んでみたくなった。
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人と100%のコミュニケーションがしたいけどみんな本心見せてくれないことに悩んでいたと紹介されていたルソーに親しみを抱いた。女子校で行われた講義を書籍にしたもので、多数決の考え方や、何か決めることって難しいということをもうちょっと意識して高校生活を送ってみたかったと思った。
民主主義の形として、ちゃんと議題に上がって話合われて決まっていくことが大事と思う、それと司法で変えていくことって反するようにも思えるけど、司法で変えてもそれで全てが変わるわけでもなく、そもそも司法判断において社会も考慮に入れた判断がされるのだから、議論を進めるためにも司法という道の役割は大きい。誰しも納得のいく答えはないけど、それでも話合いの場は設けられないといけないと思う -
政治学を、人とどう関わるかという最小単位で身近な事例から説明しているのが読みやすかった。
高校の倫理の教科書には載っていない、ルソーの人柄などを絡めて各思想について書かれているので、なぜその思想を持つに至ったかが分かりやすい。