二十一の短編 ハヤカワepi文庫

  • 早川書房
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本棚登録 : 183
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200311

感想・レビュー・書評

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  • グレアムグリーンの力量は短編でも十分に感じられる。街の空気、人物描写、プロット、どこをとっても素晴らしい。わたしのベストは「地下室」。キャロルリードが映画化した「落ちた偶像」の原作だ。主人が子供の面倒を執事夫婦に任せて出かけてしまった際に執事の妻も泊まりの外出で出かけてしまう。子供は大好きな執事とお留守番をすることになったが、そこに執事の愛人がやってきた。更に予定変更で執事の妻が帰ってきて…という話。面白いです。図書館で本屋で見かけたらぱらぱらと立読みしてみてください。買いたくなりますから

  • エンターテイメントなグリーンの短編
    昨日から読んでいるグレアム・グリーンの二十一の短編。昨日は冒頭二編を読んだ。どっちもラストに巧いなあと思わせる短編らしい短編。自作をシリアス(だっけ?)とエンターテイメントに分けていたというグリーンにとって、これらの作品はエンターテイメント?でも、第二次世界大戦での空襲等の爪痕が作品のバックグラウンドとなって、読む者に伝わってくる。
    (2014 04/08)

    二重映しの世界
    グレアム・グリーンの短編集から昨日は3つめと4つめ。
    いつも必ず最適な武器を選んで敵に立ち向かうのに、結局はその武器は自分の胸に突き刺さる結果になるのですから。
    (p79)
    4つめの「説明のヒント」から。ここで言う「あのもの」というのが、人間の悪徳なのかそれとも神と一体化した何者かなのか、自分にはよくわかりませんが。でも、そういうところを抜きにしても、この文章には頷かせられるものがある。
    この作品は、鉄道コンパートメントの中で同室した紳士の話という枠の中で、この紳士の子供の頃の体験が語られるという構造だけど、子供が遊ぶ鉄道模型と枠の実際の鉄道が響きあって独特の雰囲気を出している。グリーンはこういうの好きだったのかな。1つめのも、戦争の破壊の中での子供逹の悪戯の破壊だったし。

    ちなみに3つめは倦怠期らしい夫婦がタイらしき街で、昔夫が別の女と撮ったアダルトな映画を見るという話。グリーンは映画の様々な側面をかなり巧妙に使っているのだなあと感じた。
    (2014 04/09)

    グリーンはだんだんエンターテイメント性が多くなった掌編に移ってきた。お役所仕事皮肉った短編のラストのカタツムリ云々の文が、ちょっと「事件の核心」の冒頭の比喩を思い出させたりしたけど。
    (2014 04/10)

    虫の感覚
    グリーン短編集は折り返し地点。
    信仰心のかけらが、木の実にもぐり込んだ虫のように彼の胸のうちにひそんでいた
    (p173)
    偽の大学でっち上げて騙すとか腹がいろんな音を真似てしまうとかいう滑稽な話から、だんだん死者が出るシリアスな話になっていく。上の文は前に書いた二重映し世界かつ映画をいかしたというグリーン凝縮な短編から。これまたグリーン的な表現。この虫の感覚が次からのシリアス?な短編にも共通しているのではないか。それは信仰心だけではなく、その裏返しともいえる不安の感覚にも。
    そんな中で、「無垢なるもの」はちょっと落ち着く一編。だけど、そこにも過去にあったナイフを持った男の自殺事件というフラッシュバックが出てくる…

    このナイフ持った男の事件というのは、グリーンのオブセッションとして他の作品にもでてくるとのこと。
    (2014 04/11)

    やなか珈琲店でほろ苦のペーパードリップ珈琲飲みながら、グリーンの「地下室」を。映画化されて「堕ちた偶像」というタイトルにもなった。大人の憎悪と嘘に巻き込まれるフィリップをグリーンならではの醒めた筆致で描く。ナイフ持ちの映像がここでもちらつく(別にナイフが絡んだ事件ではないが)
    他人の生き方というものが初めて彼にじかに触れ、彼をおしつけて、彼を形作った。それ以降、その場面から逃れることはできなくなる。一週間すると忘れてしまったが、それが彼の進路を条件付け、長い禁欲生活を決定することになった。裕福で孤独な彼が死の瞬間を迎えたときに、聞くところでは、「あの女は誰なんだ?」とたずねたという。
    (p264)
    ちょっと長めに引用してみました。どうやら語り手はもうフィリップが老年を迎え、死に至った後の時点にいるらしい。でもここ他2、3箇所で出てくる後年の立場の挿入以外には、多分半世紀以上は経っている時間の流れは感じさせない。というか、どこかの博品館で人生の一典型としてピンで止められた展示物見ている感じさえする。そういうのが前に書いた醒めた筆致から伝わってくる。
    後は、こうした少年期の経験の発達心理学的な関連かな。興味あるのは。
    (2014 04/13)

    スパイと双子と隠れんぼ
    昨夜、残りの短編をよんでグリーンの二十一の短編を読み終わりました。
    で、そこに交わるテーマを考えて並置したのが標題。例えば、双子と隠れんぼはラストの短編の主要テーマですが、スパイがテーマの「アイ・スパイ」や「一日の得」といった短編にもしみこんでいる。また双子というかドッペルゲンガーというかのテーマはこの他にも、「確かな証拠」の二人などなんか随所に見られるような気が。
    まあ、自立確固たる近代的人間像が綻びをみせるところをグリーンが主に取り上げているから、だろうけど。
    もちっと頭が明晰ならば短編の構造とかいろいろ考えて展開させてみたいところですが…
    (2014 04/15

  • 題名の通り、21篇の短篇が収められています。
    その多くが短めで、「この短篇はハズレだな」と思っても、すぐに次の短篇に移れるのがよかったです。良くも悪くも、質より量が売りかもしれません。

    冒頭と巻末の短篇は、さすがと思わす内容と構成でした。
    しかし個人的にベストは、少年の憧憬と幻滅を活写した「地下室」。

  • 思った以上に面白かった。よくできてる短編が多数。

  • 短くて10ページ、長くて60ページほどの短篇が詰まった一冊。
    個人的には「ばかしあい」と「パーティの終わり」が好きかな。前者は喜劇で後者は悲劇。

  • 「廃物破壊者たち」が読みたくて購入。とても、面白い短編だった。他の作品も良かったけど、「廃物破壊者たち」が最も好きなタイプの小説だった。
    主人公の少年が徹底して老人の家を破壊する姿勢に色々と感じるものがあり、様々な解釈のできる物語だと思った。
    他の作品では「ブルーフィルム」「田舎へのドライブ」辺りが面白かったです。

  • 9位
    私が「もっと売れてほしい!」と思う叢書が小学館ぴっかぴかコミックスとハヤカワepi文庫。品揃えは抜群にいいのに、刊行が滞るのが悲しい。この短編集ももちろん素敵です。やがて悲しきホラ話「能なしのメイリング」に笑いました。
    ああ、売れてほしいなあ。

  • 第一次世界大戦、世界恐慌、第二次世界大戦。
    そんな時代を生きた市井の人々(子供も若者も老人も)の悲劇、あるいは喜劇が21編。

    『廃物破壊者たち』『ばかしあい』『田舎へドライブ』あたりがお気に入りです。

    各編の冒頭には担当した訳者のコメントが付いており、作品の導入になっているばかりでなく、読み終えた後にも余韻を与えます。

  • 読んだきっかけ:映画『ドニー・ダーコ』から

  • 2007/6/27購入

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著者プロフィール

Henry Graham Greene (2 October 1904 – 3 April 1991)

「2012年 『なぜ書くか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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