- Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200816
感想・レビュー・書評
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アメリカの作家ジョン・スタインベックの代表作。
1930年代のアメリカ。農業が資本主義による合理化が進んだことと、行き過ぎた農作による旱魃のために、昔ながらの耕作地から追い出される貧農家族たち。
土地はなく、収穫の仕事もない。あったとしても人ひとり生きていくのにも苦労するような低賃金。彼らは希望を求めてオクラホマ州からはるばるカリフォルニアを目指す。しかしカリフォルニアも既に何十万人とも言われる貧民たちが流れ込んでおり、状況は変わらなかった。
貧しいもの同士、協力して助け合うコミュニティもできつつあるが、貧民の結束を恐れる資本家と政府によって「アカ」呼ばわりされ、潰されていく。コミュニティもまた、資本家や政府の妨害にあって瓦解し始める。
それでも、誇りを持って生きようとするジョード一家の物語。
ずいぶん昔に読んだ記憶があるのだが、その時には時代背景等に理解が無さすぎて、読み進めるのがやっとだった。
新訳が出ているので新訳で再読したが、前回の記憶がまるっきり飛んでしまっているので、ほぼ初見と言って良い感じだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
上巻はロードムービーだったが下巻はカリフォルニアがメイン。次々に襲い掛かる苦難にめげずに前向きに頑張る母ちゃんに脱帽した。不景気になると相対的に女性が強くなると思う。
資本主義の問題点として、生産調整に代表される無駄が挙げられると思うが、そのことが浮き彫りになっていた。
資本主義にとって無駄は避けられないものだということを強く感じた。仕事をしていない引きこもりは、社会にとって大きな損失だが資本主義のもとでは妥当なことだ。 -
「祖先が開拓した故郷の土地を捨て苦難と困窮の旅のすえ、約束の地カリフォルニアへとたどり着いたジョード一家。そこで迎えたのは、美しく豊かな果樹園や綿畑と、敵意にさらされながら低賃金のわずかな仕事を奪いあう過酷な日々だった…。歴史の荒波のなかで資本主義に翻弄される人びとの苦境を浮き彫りにし、時代を越えてなお世界じゅうで衰えぬ評価を受けつづける不朽の名作。ピュリッツァー賞受賞。映画化原作。」
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資本主義の本質が描かれている。
広大な畑を所有していても管理しきれず、ただ眠らせているだけの資本家。
子どもたちが飢餓で死んでいくのに、畑をもてずただ眠っているだけの畑を眺めながら横たわる労働者。
岸田政権下で、人的資本経営が掲げられ、人間も財務上で数値化されるであろう今後、より数値の高い人材とそうではない人材の貧富の差は増していき、富める者はもっともらしい理由をみつけ、貧しい者はより貧しくなるであろうことが予想される。
その先に待つのは、こうした資本主義原初の労働者階級の怒りかもしれない。 -
昨今の人権尊重、人手不足の世界に生きていると見えにくくなるが、ちょっと需給のバランスが崩れれば、資本主義の下では人間が一番安いということ。
資本側から見れば「いかに安く使い捨てるか?」だし労働者側から見れば「いかに使い捨てにされないようにたち振る舞うか?」がこの社会の根底原理にあること。
平和ぼけで忘れないようにしたい。 -
映画もついでに観ました。映画では最後の方はえがかれていなかった。
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衝撃のラストシーン。全てを失ったものが、無意味かもしれないのに、自らの血肉を差し出す。
救いようのない物語だからこそ、最高の救いを描くことができたのか。
女の視点から見て、男が炭鉱のカナリア的な役割を担わされているのが、印象的だ。 -
ラストに向かって読み進めていくにつれて、苦しくなってきた。
ここに描かれる怒りや恐怖は、まさに同時代的なことであろう。
食えなくなるという恐怖は、人類史を動かしてきた原動力であると同時に、歴史教科書の中だけのことではないということを改めて知らしめてくれた。
どんなに文明や技術が高度になろうとも、生身の部分はそうは変わらない。結局はその部分をどう折り合いをつけるか。
歴史を超克するために我々が解決しないといけないことなのだろう。