- Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300226
感想・レビュー・書評
-
この終わり方?というのが第一印象。ポアロにしては笑いの要素が少ないしなぁと。でも登場人物たちの「痛い」所がよく伝わる、これでもかという描写にクリスティーの凄味が感じられた。ミステリーよりも人間ドラマ的に忘れ難い話だった。
-
今回の作品はポアロが脇役的で、事件よりも心理面に重点を置いたものだった。
その分登場人物は個性的で、特にルーシーの性格は浮世離れした不思議系でイラッとした…
ミッジは最も現実的(現代的?)だったし、苦労してきた分幸せになってくれて嬉しかった。
違った個性の女性たちの心理描写を巧みに書き上げているのはさすがアガサ・クリスティ!
推理小説よりも女性たちの心理描写に傾いているから純粋にポアロの推理を期待してたら肩透かしかもしれないけど、すごく面白く読めた。 -
クリスティのポアロシリーズを中心に読んできて、あと数冊で全部読み終えるところまで来た。読みながら頭の中でランキングをつけているが、どうしてもベスト3の中から外せない一冊が「ホロー荘の殺人」である。
週末の午餐に集まったアンカテル家の客の一人、ジョンがプール脇で血を流して倒れている。かたわらにはジョンの妻、ガーダがピストルを持って立っていた。事実は単純明快に思えるが、果たしてジョンを撃ったのは本当にガーダなのか。
アンカテル家の親戚筋でジョンと不倫関係にあるヘンリエッタ、ヘンリエッタに思いを寄せる従兄のエドワード、エドワードを愛するミッジ、ジョンのかつての恋人で映画女優のヴェロニカなど、登場人物は一筋縄ではいかない者ばかり。さらにアンカテル家の女主人は、ミッジによると「妖精」のようなとらえどころのなさがある。
そしてガーダである。今まで読んだクリスティの作品の主要人物の中で、これほど残酷な描かれ方をしている女性はいただろうか。
いつもおどおどしていて人に見られていると思うとへまばかりしてしまう。夫であるジョンに理不尽に当たり散らされても彼を盲目的に愛している。頭の回転は悪く、みなからはかわいそうと思われている存在である。
一方、ヘンリエッタは美しくて頭がよく、芸術家として成功している自立した女性だ。ガーダのみならず誰に対しても優しくそつなく対応するので、アンカテル夫人から絶大な信頼を置かれている。
この話が印象深い理由は、ガーダとヘンリエッタという対照的な二人を容赦なく対比させ、ガーダの闇を浮き上がらせているところにある。また、女性に比べ描写があっさりしている印象のあるクリスティ作品の男性登場人物の中で、ジョンについては性格や心情がかなり詳細に描かれているのも特徴的だ。
真相を最後まで悟らせないストーリー構成も見事だし、ヘンリエッタとエドワード、ミッジの三角関係も話に膨らみを持たせている。やや情緒的なのが苦手な人もいるかもしれないが、読んだ後しばらくしても残像のように情景が浮かぶ印象的な作品である。 -
ポアロもの。
アンカテル卿の館・ホロー荘に招かれたポアロは、館内のプールサイドで一人の男が血を流して倒れており、その傍らにピストルを手にした女が立っているのを目撃します。
この芝居がかった殺人現場の裏にあるものとは・・・。
殺された男性は医師のジョン、ピストルを持っていた女性はジョンの妻・ガーダ。
ということで、一見単純そうに見えるシチュエーションですが、そこはクリスティー。勿論そう簡単な話ではありません。
何しろ、“事”が起こるまでにホロー荘に集った面々を巡る、複雑な人間模様が綴られているので、全員“腹に一物”抱えているように見えてしまいます。
まずはジョンを巡っては、妻・ガーダ、愛人で彫刻家のヘンリエッタ、昔の恋人で女優の・ヴェロニカという四角関係が展開しているし、それに加えてヘンリエッタの事が好きなエドワード、エドワードに想いを寄せるミッジ・・と、一体何角関係だよ?と言いたくなる程、それぞれの思いが錯綜しております。
そして、アンカテル卿の妻・ルーシーのキャラも強烈でして、その浮世離れっぷりは天然を通りこしてもはやサイコ。
何気に一番怖い人だと思いました(ある意味ラスボス)。
で、今回ポアロは出番も少ないし、終始受け身な感じで“ポアロもの”っぽくないなぁ・・という印象です。
終盤では、犯人と事の真相はわかったけど解決はしていないような・・という感じでしたが、ポアロ曰く「このような終局は、わたし自身は慈悲ぶかいものだと思っています。」とのことなので、これが落としどころだったのかもですね。
因みに、ラストでジョンが実はいい奴だった的な話になっていましたが、序盤でのモラハラエゴイストなジョンの印象が悪すぎて、“今更印象良くしようとしても、手遅れだっつーの”と思った私です。
と、いうことで何だか謎解きより“キャラ祭り”といった感じの本書でしたが、そんな人間描写を楽しませて頂きました。
とりあえず、唯一まともだったミッジには幸せになって頂きたいですね~。 -
ホロー荘の殺人
この作品のトリックは中々に特殊で。冷静に考えれば余り見た事がない。犯人が同様のパターンは知っているが、犯人を設けた上で進行していくポアロ達の一連のやり取りは、無駄を一切省いた整理された推理小説であり、様々な意見はあるがとても真っ直ぐなサスペンスミステリーだ。
クリスティ作品の中でも屈指の「悲劇」であり、ヘンリエッタを中心として物語がどんどん進化していく。クリスティ得意の恋愛がふんだんに盛り込まれ、ミステリー、サスペンス、ロマンスのバランスもよく、更には読み進める障壁がない為スラスラとページを捲る事ができる。一つのドラマとして完成度が高く印象的な作品の為、一度読めば犯人や結末を忘れない強烈な小説だ。
(僕は今作は再読になるが、十数年前に読んだ記憶が残っており、物語の概要、犯人は頭の片隅にありながらそれでも読みたい、読もうと思った作品だ)
印象深い要因の一つ目として登場人物の描写が作品の中でも際立っており、先に述べたヘンリエッタを始め、アンカテル一族それぞれの個性や執事を含めた一族に従事する人達。クリストウ一家の存在感(子供達の印象も強い)アンカテル家の人々と交友のあるミッジ。近隣の別荘に暮らす女優のヴェロニカ。全員が間違いなく作中の役割を受け持ち効果的に生きており、悲劇的な作用を形成する。
印象深い要因の二つ目としてはポアロの役割であり、かれの立ち回りや真相にたどり着いた後の対応が、僕がこの作品を「悲劇」と位置付ける理由の一つで、想像にはなるが、数年後のストーリーを思い浮かべる事もできるし、「とある人物」がどの様な想いでこの真相を受け入れるのかを考えるとやるせない気持ちになる。クリスティは比較的事件解決後は登場人物達を前向きに描く事が多いが、今回はかなり厳しい結末を用意している。
ヘンリエッタについてもポアロが感嘆するほどのの人物であり、最後の彼女の行動は正しくイメージのままだ。現代作品で同じテーマの作品があれば、彼女の様な役割をもつ人物は設定しない(こういう感覚にならない)だろうと思う。人間の愛情や信頼は難しいが、作中ではとある人物への慈愛に満ちて生き生きしており、ミステリーとしての王道的なものよりも人間模様に特化したミステリーとした方が面白く読めるだろう。
今作も僕のおすすめだ。少し違ったクリスティの作風を感じる事ができるはずだ。 -
ポアロ
面白かった。人間関係のドラマを楽しむタイプの作品。「アガサクリスティー完全攻略」p98によれば『後年クリスティーは、「ポアロを出したのは失敗」と述懐していた』そうだが、たしかにポアロがいなくてよいように感じた。事件の真相は心が苦しくなるようなものであったが、幸せになって欲しいなあと思う登場人物が幸せになれそうなところが救い。 -
それぞれに絡んでもつれた、登場人物達の感情の糸。
暗く冷たい絶望の淵からすくい上げられた人と、深く深く沈んでいく人と。
シリーズを順に読んできて、今までで一番「こわい」と感じた作品だったように思います。
全体を支配するルーシーの特異さが際立っていました。
叙情的なラストに、読後しばらく気持ちを引っ張られました。 -
ホロー荘の個性的な女主人が招いた客達。
その中には、優秀な医師と妻と愛人が…?
人間関係の不思議さ。
円熟が感じられ、作者自身が好きだった作品。 -
最初からジョンがクソすぎて、いやな気分になった。
女性たちはみんな、なんか個性的?というか変わり者。
ルーシーは今でいうところの空気読めない人のパワーアップバージョンって感じで、好きになれず。
ミッジが唯一まともな感じがしたが、エドワードとくっついたりで、なんだかな~って感じ。
最後、ジョンの医者としての素晴らしさみたいな描写があって、ジョンのクソ加減が薄らいだ。多分、途中の登場人物たちのやり取りやら性格の強烈さで、ちょっとよくわからなくなってたのかも。
なんだか読んでいてとても疲れた。
さらに今日も三島由紀夫の潮騒の読書会。これから楽しみです!!今、結構凄いのを読んでます。また感想をUPしますね。では...
さらに今日も三島由紀夫の潮騒の読書会。これから楽しみです!!今、結構凄いのを読んでます。また感想をUPしますね。ではでは~
私には、二刀流はムリだ~!
(* ̄m ̄)Ψ
私には、二刀流はムリだ~!
(* ̄m ̄)Ψ