超新星紀元

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152102546

作品紹介・あらすじ

1999年末、超新星爆発によって発生した放射線バーストが地球に降り注ぎ、人類に壊滅的な被害をもたらす。一年後に十三歳以上の大人すべてが死にいたることが判明したのだ。"超新星紀元"の地球は子どもたちに託された……! 『三体』劉慈欣の長篇デビュー作

感想・レビュー・書評

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  • 物語の中で何かと世界の命運を託される子供たち。汎用人型決戦兵器に乗って使徒を殲滅し人類滅亡を防ぐ子供たち。または、地球だけでなく火星の経済にも悪影響を及ぼす大人たちに対してモビルスーツに乗りクーデターを起こす子供たち。こういう物語は自らの未来を切り開くための力(信念)で悪(とされるもの)に立ち向かうことが明確なのだが、この物語は災厄に見舞われて有無を言わさず未来を託され、明らかな悪(とされるもの)のない現代の地球で起こる。ただ生き抜くこと。世界は大きく変わらない(地球環境の変化はあるが生活は可能)のに日常が大きく変わることは、状況は違えどコロナ禍を経験してきた分なかなかに大変なことだと想像できる。この物語では大人たちが全ていなくなるため、知恵や経験が急に無くなることを考えると大変さはその比ではないかもしれない。変化した世界で無邪気な子供の純粋さは残酷で非情であるが、寂しさや心細さが半端ないからこそ人に優しくなれるようにも思う。それにしても過酷で容赦ない世界だった。純粋な欲望は恐ろしい。

    地球から8光年離れた恒星が超新星爆発を起こし、地球に大量の放射線が降り注ぐ。そこに含まれる高エネルギー宇宙線は人体の染色体を完全に破壊するものだった。生き延びられるのは、染色体を自己修復する能力がある12歳以下の子供のみ。約1年後にはそれ以外の人類は死滅する。

    後書きを見ると、この物語は2003年に本国で出版されたようだが、書き上げられたのは1989年とのこと。少し物語の内容に触れるが、大人が死滅した後の混乱を自意識を持ったAIが解決する場面があり、他にVRワールドも出てくる。だが、目立ったテクノロジーの描写は少なくどちらかと言えば現代的な内容が多かったように思えるのは、30年以上も前と思えば納得かもしれない。その反面、30年以上前にこの物語が書き上げられていたと考えると恐れ入る。

  • 2003年1月作家出版社刊のものを翻訳して2023年7月早川書房刊。超新星の爆発で、12歳以下の子供たちだけになった世界を描く長編。子供たちの冒険譚というか法螺話的ストーリーが面白い。相次ぐ困難に量子コンピュータAIに力を借りたりとハラハラドキドキの展開が続き、世界戦争まで勃発する話は驚愕する。またこの戦争を解決する手段か圧巻。エピローグでは第二世代らしき人物が、到達した一つの世界を語るのだが、当然別の到達した世界もあるのだとも予感させる(ないのか?)。

  • 『三体』で有名な劉慈欣の第一長編。太陽系にある恒星が超新星爆発を起こしたことで、近い未来、地球には未知の放射線が降り注ぎ、人体細胞を破壊することが判明。自己修復が活発な12歳以下の子どもたちのみが生き残ることが可能な世界となり、残された数ヶ月間で大人たちは子ども達に文明を引き継ぐ……というのが導入。

    『蝿の王』や『十五少年漂流記』など、「子ども達だけの世界」という設定の物語はあるが、現代の中国が舞台となり、しっかりと"引き継ぐ"過程が描かれる点が新しい。作者の知識量によりディテールは細かく、何となく説得力を持つように見えます。けど、その他は結構ガバガバ。たぶん、というか間違いないなく作者は後半の展開をこそ書きたかったんだろうなあ。ミリタリーや戦争が好きなのはこれまでの著作で知っていたので、気持ちは理解できるのですが、にしてもそうはならんやろって展開ばかりで作品の評価は低くならざるを得ないです。作者のファンならその後の著作につながる要素も多数あるので手に取ってみては。

  • 三体作者の長編デビュー作がやっと翻訳されましたということで読んでみた。地球規模版少年少女漂流記と言いますか、ぶっ飛んだ設定はさすがのスケールも、後半はかなりひっちゃかめっちゃかになりがち。そこも含めて楽しみたい。

  • アメリカは自分勝手な戦闘狂で仕切りたがり、日本は第二次世界大戦の軍部。それが現代中国人から見たイメージなのかな? アメリカはともかく、日本・・・って思ったけど、あとがき読んだら実際に書いたのは30年前で出版される迄にだいぶ時差がある。30年前のイメージなら仕方ないのかな?

    面白いんだけど、自分の国の子供を良い子に書き過ぎ、それ以外にもこんなに上手く行くかしら?と思ったので、星3。

  • 『三体』の劉慈欣の第一作目の長編が翻訳されるということで、以前から楽しみにしていた。

    地球に超新星爆発による放射線が降り注ぎ、14歳以上の「大人」がすべていなくなり、子どもだけの「超新星紀元」の時代を迎える、と、設定を見ると少し「十五少年漂流記」を思いだした。

    大人たちが全滅するとわかってから子ども世界に向けた準備期間や子ども世界になってからわずかな期間におきた紆余曲折の歴史を描くものとなっており、
    歴史のリアルタイム感を感じられるSFになっていた。

    やっぱり劉慈欣はおもしろい。

  • 劉慈欣の第一長編。
    センス・オブ・ワンダーを感じられる、とても面白い話でした。

    劉慈欣らしい、とんでもない発想からのとんでもない展開。
    何度も「おぉ!」と驚かされる展開があり、とても楽しめた。
    三体が好きなら楽しめるはず。

    「子供の世界ってどんなだろう」その想像を、軽々と斜め上に超えて行ってくれます。

    最後が尻すぼみというか、もっと詳しくその後の話が読みたかった。
    三体が最後までしっかり描かれていだだけに、少しガッカリした。

  • あらすじから惹きつけられ、序盤の感情的な導入からいったいどんな展開がなされていくのかとワクワクしていたら、全く予想できない方向に話が進んでいって非常に驚きました。いや、とても面白かったんですが、まさかそんな展開になるとは。

    三体に比べると風呂敷の畳み方を含め、正直荒削りな部分的も多いんですが、著者のルーツを知るという意味ではとても魅力的な作品だと思いますので、三体を読み終わった方にはぜひ手に取って欲しいですね。

  • 2023-08-16
    んーと。面白いんだけど何かスッキリしない。エリート志向(それ自体は悪いものでは無い)に対し、衆愚が暴走してしまった悲劇のように読めてしまう。やや思弁性にかけるというか。結末も意外ながらそれでいいのか、と思った。
    核に関しては、やっぱり巨大な花火のような描写で、残念でした。
    ま、面白かったんですけどね。

  • 1番最初の長編小説らしいのですが、気づかなくて最近見つけて読みました。
    前半と最後のあたりは面白かったのですが、途中戦争の描写が細かすぎてよく分からないので、私は飛ばし読みしてしまいました。戦争や兵器などに興味や知識がある人は興味深く読めるのかな??
    この作品以外は全て、心から面白いと思い、興奮しながら読みましたが、こちらは他の作品と比べると興奮度合いは下がります。
    創世記の展開からオチに至るまでの部分の説明がもう少しあれば楽しかったかなと思います。

    でも大好きな作家さんなので、また新刊が出たらすぐ読みたいです。

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著者プロフィール

1963年、山西省陽泉生まれ。発電所でエンジニアとして働くかたわら、SF短篇を執筆。2008年に刊行された『三体』で人気に火が付き、“三体”三部作(『三体』『黒暗森林』『死神永生』)は中国で2100万部以上を売り上げた。2014年にはケン・リュウ訳の英訳版が刊行され、2015年、アジア人作家として初めてSF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞。2019年には日本語訳版が刊行され、11万部を超える大ヒット。

「2023年 『神様の介護係』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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