機械仕掛けの太陽

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163916088

感想・レビュー・書評

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  • 5類になった今読むと、この2年間、医療関係の方にどれだけのことが降りかかったか、考えさせられる。政治も試練を受けたと思うけれど、命と向き合う職業の人たちは、どんな気持ちで日々を過ごしていたのか。私自身はそういう人たちの気持ちを慮ったことがあっただろうか。
    私たちは日常を取り戻しつつある。けれど、過去に起こったことのすべてを忘れてはならない。

  • コロナ禍のリアル。
    未来の人たちに是非読んでほしい。
    医療従事者に感謝です。

  • 読み進めていてまず懐かしく感じました

    コロナの始まりは確かにこんな感じだったなと
    フィクションでありながら実際自分たちが受けてきた現実で、当時の辛かったこと大変だったことを様々に思い出しました

    また医療関係の方々は本当に大変な思いをしながら戦ってくれていたことに感謝したいと思いました

  • 新型コロナウイルスの外殻に無数の突起を纏う球状の姿を、光冠を帯びて輝く太陽のよう、ひとの体内で自らの複製体をねずみ算式に生成していくようすを、機械じかけと例えたのが、この本のタイトル。

    すでに曖昧になっている新型コロナウイルスの経過。この機会に整理してメモしておいた。

    まず、正体の分からない状態で、感染対策が医師と看護師を疲弊させたのが、2020年3月。まだ世間が正しく怖さを認識できていないギャップも。2020年の第一波、レッドゾーンで戦っていたのは主に看護師たちだったと描かれているが、徐々に専門医師も加わり、総力をあげて乗り越えていく。防護服で長時間勤務するレッドゾーン、真夏の屋外に設置された発熱外来の過酷さ。こういうことを皆が理解して、助け合う社会にならないかと、切に思う。

    感染患者が、症状が出る数日前から大量のウイルスを排出することが、新型コロナの特異なところ。これが理由で、変異しても毒性が下がらない可能性も。そして、一般的な冬風邪のウイルスであるコロナウイルスには、インフルエンザと違って、ワクチンも治療薬もない。

    第一波では、発症から2週間ほどで肺炎が重症化して、その後2週間ほどかけて亡くなるケースが多かった。新規感染者の減少が、すぐに医療機関の落ち着きにはならず。

    2020年5月の緊急事態宣言解除から、コロナに対する楽観論が広まるが、夏になり新規感染者が増加。第二波では重症化しにくいが若年者の感染も増え、医療を圧迫する。まだ医師たちは試行錯誤で、目の前の状況を乗り越えようと奮闘。一方で病院の経営悪化によるボーナスカットの影響もあり、看護師や医師が離脱するケースも。そして、世間の差別と偏見が、コロナと闘う医療従事者を苦しめる。

    医療従事者が待ち焦がれたワクチン接種には、デマによる反対も大きく。第四波、英国株は毒性が強く、まるで違う疾患のようだと。疲弊して辞めていく、体を壊す、家庭の事情で辞める医療従事者も描かれる。

    菅首相のワクチン接種対応は評価されているGoToトラベルや、オリンピック前の緊急事態宣言などは、後手が多いとされている。

    オミクロン株は独自の発展。初期の野生株よりは病毒性は上がっていたが、国民の8割のワクチン接種と、数ヶ月続いたほぼ正常化した日常が油断を生み、大きな第六波となった。重症化リスクが下がっても、感染者が多く、医療を圧迫。子供の感染者も増えた。

    ラストは硲が勤めている病院でのクラスターを取材するマスコミに、強烈なコメントをお見舞いし、長峰は反ワクチン信者を撃退し、絶望に潰されそうになっていた椎名を、強力な援軍が救う。まだ終わらない新型コロナウイルスとの闘いだが、物語がこんなラストで少しは救われた。

  • 限りなくノンフィクションに近い、コロナ禍の医療現場のリアルを描いた小説。当時テレビ(NHKスペシャルも生々しかった)や新聞等で報道されていたが、医療現場(=戦場)の奮闘を医療者目線で描いているところが斬新。小説というよりは記録文学としての評価は高い。

  • 知念さんの本は現場の目線での小説なので好きなのだが、この本はノンフィクションに近いのではないかと思う。
    仕事で疲れた帰りの電車の中で読もうとしたが、あまりにコロナの現実をつきつけられて、読めなくなった。
    仕事が落ち着いてきたときに読破。

    すでにコロナは5類になり、社会も戻りつつあるが、コロナが流行りだして2年間くらいの話の本書は、自分が想像していたより、現場の悲惨さがあった。
    医師・看護師はコロナの怖さと闘い、うつ状態になり、それでもまわりに邪険に扱われる。
    対象・内容にかかわらず、ネットで批判のコメントをよく見るが、批判したい人が書き込むのであって、すごくいい!と思う以外の普通の感情の人はネットにコメントを書き込まない。だから、批判がたくさんあるように見えるのではないかと常々思っているのだが、そのネットにも心をやられていた病院関係者は多いのではないだろうか。
    病院関係者に感謝の思いを伝えられていなかったなぁ、と今更ながら悔やんだ。

  • 大学病院の医師と看護師、町医者の3人の視点からコロナ禍の現実を描く、貴重な記録小説。看護師の硲瑠璃子が徐々にコロナによって壊れていく様が辛かった。コロナ慣れしないよう再読したい。

  • 様々な立場の医療従事者たちは、ウイルスへの恐怖がより身近にあることを改めて強く感じた。また、過程が丁寧に描写されているぶん、どの人物の心の叫びも強く、心を揺さぶられた。

  • 医療従事者3人から見たコロナの記録。リアリティがすごかった。発生から第6波までやから、この先にあの大きな第7波があるんだよなぁ…と思いながら読んでた。
    政府にめっちゃ文句言ってて(登場人物が)ほんまな!って思ったー。

  • それぞれ立場の違う医療従事者たちと未知のウイルスとの闘いを描いた物語。
    限りなくノンフィクションに近く、時系列に沿って変化していく環境や主人公達の心境の移り変わりがよりリアルさを感じさせられました。
    医師でもある作者様だからこそ、書けた作品なのではないかと感じます。

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著者プロフィール

1978年沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。医師。2011年、第4回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」を受賞し、12年、同作を改題した『誰がための刃 レゾンデートル』で作家デビューする。代表作に、「天久鷹央」シリーズがある。その他著書に、『ブラッドライン』『優しい死神の飼い方』『機械仕掛けの太陽』『祈りのカルテ』「放課後ミステリクラブ」シリーズ等がある。

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