新装版 隠し剣孤影抄 (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-38)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167192389

感想・レビュー・書評

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  • 8.06

  • 秘剣が使われるとき

    普段は決して使われることのない秘剣。それを操るのが、日頃は影も薄い冴えない下級武士。しかし、ひとたび秘剣を使うことになったときには、自分の命をかけてその一瞬に全力をそそぐ。普通に描かれている武士ではなく、違った角度から武士、もしくは男の生き様がある。

    時代により許されなかった女達の恋慕や情、欲といったものが色濃く描かれているのも特徴。

  • 隠し剣シリーズ二冊では、こちらの方がどちらかといえば救いがないきがします。生き方が不器用であるがゆえに、窮屈な世間に追い詰められていく主人公たちがとても切なく胸を捉えます。小さな頃なら、何で別のやり方を選ばないんだろうかと思っていただろうけれど、おとなに近づいた今ならその不器用さがわかる気がします。

  • いや・この本物凄く面白かった!
    秘剣を伝授され、それを使うことを余儀なくされた八人(八編)の物語。
    悲しくて仕方ない話しもあれば、命をかけた激闘の末にようやく訪れた仄かな幸せもあり。
    藤沢周平らしい、実に様々な人間の性格と各主人公に交差する人間模様を描いている。

    ・・・私がこの八編の物語の中で、一番面白かったのは、「臆病剣松風」。
    この話しに出てくる秘剣の使い手はものすごく臆病で・・・自分のそんな弱気な姿を隠そうとしない。
    妻はそんな夫を最初は蔑み、秘剣を伝授していることも「嘘ではないのか?」と疑うほどだった。
    だが、夫は藩命により若殿警護をやむなく引き受け、震えながら敵と対峙する。
    最初心もとなげに見えた男だったが、次第に腰が据わり秘剣の実力を表わし始める・・・。
    目出度く敵を討ち果たした男だったが、妻にはそういったことを一言も言わず、妻は別の人間から夫の活躍を聞かされる。
    だが妻も、そんな夫の活躍を知り 夫のことを見直すかと思えばちと違い、、、
    「満江はそのために夫を愛しているのではなかった。
     日に焼け、律儀に城勤めに励んでいる、臆病な夫を愛し、そのことに満足していた。」
    という文章で最後は〆てある。
    これがなんとも、微笑ましく。
    剣の腕ではなく、夫の弱さ・律儀さを愛しいと思う、彼女の母性的愛情が小気味良い。

  • それぞれ秘剣をもつ主人公達。悲哀を含めた物語。隠し剣 鬼の爪はDVDになっていたから観てみるかな。

  • 映画化された「隠し剣鬼ノ爪」や「必死剣鳥刺し」もいいけれど、個人的には「女人剣さざ波」がいい。
    宮本武蔵や柳生宗矩とは違う、市井の剣豪の姿がよろしいかと。

  • ・邪険竜尾返し
    ・臆病剣松風
    ・暗殺剣虎ノ眼
    ・必死剣鳥刺し
    ・隠し剣鬼ノ爪
    ・女人剣さざ波
    ・悲運剣芦刈り
    ・宿命剣鬼走り

  • 現在竜尾返し、松風、虎ノ眼、鳥刺しまでを読み終えました。
    レビューは読破まで随時更新。

    どれも40~50P弱という短さながら物語性が強く、一つ一つが印象的な作品だと感じる。
    文章は語彙が豊富ながら読みやすく、気軽な気持ちで一章ずつ読み終える事が出来る。

    ◆邪剣竜尾返し
    若剣士・弦之助と強敵・赤沢との決闘劇を描いた一章。
    決闘に到るまでも竜尾返しの習得のため、その秘剣の描写はいくらか見られるが、真に読者が"邪剣だ"と感じられるのは終盤の弦之助の一言に尽きると思われる。
    姉の宇禰が剣道場の娘らしさがあって地味に好き。

    ◆臆病剣松風
    瓜生新兵衛を夫に持つ、満江の視点で描かれる一章。
    剣の達人、秘伝の使い手と紹介され嫁いだはずが…という、満江の失望、迷いなどを中心に進められ、満江と読者が同視点となって新兵衛とその剣の真価を追える。
    最初は際限なく新兵衛の臆病ぶりが描かれるので、それだけ起承転結の"転"の印象が強く感じられた。
    胸が熱くなるとはこの事。なんだそれかっこいい。

    ◆暗殺剣虎ノ眼
    志野と達之助の父余市右エ門が、ある日闇討ちに倒れる。その暗殺者の使い手を追う一章。
    上記二作品を読んだ後ではなんだか掴むものがはっきりしない、真実に掴みかかれないもどかしさが一章を通して感じられるが、最後…最後ー!!
    ネタバレご法度の一章。

    ◆必死剣鳥刺し(映画化作品)
    2010年映画化されましたね。読んでから知りました。
    遣うときには、剣士は半ば死んでいるだろうという"鳥刺し"。その剣を会得した兼見三左エ門が、鳥刺しを見せるその一瞬までを描いた一章。
    兼見三左エ門の実直さが故に……なんだそれ。
    里尾(義理の姪)はどうなるんだ、三左エ門が何したっていうんだ。いやしたけど。
    伏線張りまくり、回収しまくり、印象深い一作品。

    ~以下順次更新予定~

    ◆隠し剣鬼ノ爪(映画化作品)
    ◆女人剣さざ波
    ◆悲運剣芦刈り
    ◆宿命剣鬼走り(ドラマ化作品)

  • 臆病剣松風と女人剣さざ波が面白かったですね。
    読んでいて楽しかったし、ホロリとした場面もありました。
    時代小説が大好きになった一冊です!

  • 人間味溢れる主人公の姿に心惹かれる。
    どんな秘剣が繰り出されるのか、ワクワクする。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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