どれくらいの愛情 (文春文庫 し 48-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167772017

感想・レビュー・書評

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  • 小説、殊にこういったリアリズムに基づく小説というのは、現実の「ままならなさ」に対する別の可能性の提示なのではないか、とも思う。
    現実ではこうなるしかなかったけれど、こういう展開もあったのかもしれない。
    もしくは、実際の、現実的な結末はこうだったけれど、こういう終わり方だってできたはずだ、という。

    世界は矛盾していて不安定だからこそ、生きていくことは苦しくて、こころがぐらぐら揺れてしまう。
    白石一文さんの小説は、そういう「違和感」や「揺らぎ」を冷静に捉え、一人の個人としての無力さ、ままならなさをきちっと言葉にして突き付けてくる。だから、読んでいて苦しくなったり、こころがぐらぐら揺れてしまうのだろう。

    確かなものの中にある不確かさ、不確かなものが持つ一片の確かさ、ということが、巻末の著者あとがきにもあるように、この4つの小説全体から問いかけられている。
    人生について、運命について、愛について、この世界そのものについて。
    それらのどうしようもなく「ままならない」物事すべてに対して、作家が示す、4通りの「可能性」。

  • 妻である自分には、ちょっと苦しさを感じる物語も。夫に言い訳したくなる。そして、離れて暮らす夫に会いたくなる。どの物語も、空気の密度が濃くて、湿度を感じる。愛することと、人生を共にすることは、一筋縄ではいかないな…

  • 「愛する人を失うこと自体が恐怖なのではなく、愛する人を失うのではないかという不安こそが、その恐怖の実体なのだ。」

  • すごく真面目なひとなんだろうなあ、というのが
    白石さんの本を読むたび真っ先に感じることで
    今回もやはり、ストレートでない恋愛を描いていながら
    同じことをおもった。
    かたちのないものの大切さに言及するあとがきまで含めて
    全てに正しさを求めなくても、
    いいんじゃないかなあ、と。

    不倫や別離の困難もふくめた
    若すぎはしない大人たちの恋のはなし
    感じいる台詞はいくつかあったけど
    この本もわたしにとっては
    通りすぎる本のひとつみたい。

  • 初めて読む作家さんのものでこんな言い方は不適切なんだろうけど、‘魂の片割れ’ってやつなんでしょうね。
    最良の組み合わせは失敗の後であるから実感する、と言えばいいのか。
    「20年後の私へ」が好きでした。
    安西の優しさと‘私’の役割が心に残ります。

  • 読みながら結末が見えてしまうものもあり、底が浅く、今回の直木賞作家だから読んでみるかの期待は過剰だった。


  • 以前読了していたのを忘れ再読。
    2回目だからかあまり印象に残らなかったが、「たとえ真実を知っても君は」の話は、そういうことかと驚かされた。

  • いろんな形の恋愛があって、そのどれもが平穏なものではなく。
    傷つけて傷つけられて、それでも大切なものがあって。
    愛ゆえの嘘がたくさん出てきた気がします。
    嘘をつくってよくないことではあるけど、相手のためを思った優しい嘘は、きっと二人には必要なものだったんだろうなと。
    私は『20年後の私へ』が好きでした。

  • 2018.03.05 朝活読書サロンで紹介を受ける。

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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