存在しない女たち: 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309249834

感想・レビュー・書評

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  • いかに、当たり前、普通、デフォルトといったものが男性中心であり、それが当たり前な世界で生きているため普通と思ってしまっているかを気付かされる

  • データ量がすごい。女性が多大な不利益を被っていることを改めて認識。LGBTの議論が活発になってくると「普通の女性」の権利がより制限される可能性もある。
    ただし自分の周りに限って言えば男性よりも女性が幸せそうに見える。存在しない、無視されることからくる女性の幸福があるのか、不必要な責任を負うことによる男性の不幸があるのか。

  • 社会や医療、経済はデータに基づいて動いている。しかしそのデータは暗黙のうちに男性を基準として測定され、女性に関するデータが無視されてきたと指摘する本。

    本書では実に様々なデータが紹介される。その量は圧倒的で、原注が56ページもついている。
    女性は男性と違う体を持ち、違う行動を取る。犯罪被害に遭いやすく、育児や介護等の無償労働の担い手となりやすく、同じ成果を挙げても評価されにくいとするのが本書の主張。

    社会的役割や人物評価におけるバイアス等の比較的想像しやすい局面だけでなく、純粋にデータだけで判断されていそうな分野においても、ジェンダーによる偏りが生じているという指摘が興味深かった。
    たとえば第10章と第11章は医療に関する視点。前者は、男性を主な治験対象として認可された薬のデータが女性に不適合である点、後者は女性特有の症状が軽視されがちである点を指摘する。
    後者の例として、シルデナフィルクエン酸塩(バイアグラ)が生理痛に効く可能性があるにも関わらず、治験が行われないという話が物珍しかった。勃起不全薬としては早々に認可されたことと比べると、確かに非対称だ。

    本書では上記のような現状に対して、女性のニーズや行動を認め、それに対応した策をとるべきとする。
    たとえば育児についてなら、女性だけが育児をするのは良くないという主張ではない。女性が育児を中心に担っている現状を認め、そのニーズに特化した対策を打つことを求める。つまり打たれる対策は、「女性だけを」対象としたものでなければならないということになる。
    駄目な例の一つとして、男女にかかわらず、子どもが生まれた人にテニュア期間を延長する制度(p99)が、実際には男性にのみ時間的余裕を与えるものとなり、却ってテニュア付与の男女差が開いたという事例が引かれる。
    本書の理論としては明快だが、社会で実現しようとすると反発の起きやすい考え方であることも想像がつく。

    とは言え、本書はあくまでデータについて語る本。
    p126で触れられる(元ネタはビッグデータの罠)ように、データをAIに分析させることで物事を判断・評価する場面は今後増えてくるだろう。その際、データ自体がある種のバイアスを含んでいる可能性に気づく視点が重要となる。
    本書ではフェミニズムの観点から女性について述べているが、女性というのはマイノリティの中では最大のマジョリティ。では他の属性についてはどうだろうか、と視野を変えるきっかけになりそうだ。

  • 男女の身体的違い、女性にあてがわれがちな家事労働などが、社会の様々な意志決定から、いかに除外されてしまったいるかを、データ収集の不平等性という観点から説いている力作でした。
    扱いを同じにするだけでは平等にはならず、男女の生まれ持っての、または社会的におかれてしまう状況の違い、理想をいえば、それぞれの人々の間の違いを考慮する必要があるのだ、という事をこれでもかと思い知らさせてくれる本です。

  • 2022年11-12月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00598493

  • 「あ、そうか。世界はそもそもわたしたちをいないことにしてるんだ」
    という最悪な気づきをしてしまった。

    「フェミって感情的だから」とほざく人間は全員、データに基づき淡々と女性差別社会が400ページにわたって記述されているこの本を隅々まで読んでから出てきてほしい。

  • 人類史、美術史、文学史、音楽史、さらには進化の歴史も、すべて客観的な事実とされている。だが実際には、そうしたファクトは私たちをあざむいている。人類の半分が含まれていないせいで、それらのファクトは歪曲されている──

  • 女性の生きづらさをデータと事例から考察した本。自分って生きづらかったんだ、と改めて気付かされた。

  • すごいなぁ。ここまで女性差を書ききるってのは。
    なんつーか、ただ違うことをただ違うだけなんだって受け入れられない人たちが一定数以上いるってことがわかった。

  • 政策等の意思決定の基礎となるデータが男女で区分されていないことで、データ上女性がいないことになり、さらなるジェンダーギャップが生まれると説明する本。
    「データがない」ことを示す統計/事例が豊富に引用され、出典表記のボリュームは本書全体の1/3に及ぶという大労作

    (時間をおいて追記)女性が社会的劣位に置かれた結果、教育と資産形成の機会がなくなり、シャドウワークの「適任者」として多くの時間を無賃労働に注ぎ込み、彼女らの利益の代表者は議会に送り込まれず、民主プロセスにも参加できない。という中で現に劣位ある女性の描写はそれなりに清潔な東京周辺の暮らしになれているとなかなかのエグみがある。彼女らの状況改善に必要なのはまず強引な父権主義なのだ。問題のあまりのあおきさに、大雑把な鉈を振るうしかなく、本書全編に充ちているイヤミも必要なコストなのかもしれない。

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