NOVA 3---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)
- 河出書房新社 (2010年12月4日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309410555
感想・レビュー・書評
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とり・みきの万物理論が入ってることを知り、NOVA2をとばしてこちらを先に。これも読み応えのある作品が並んでいる。
「万物理論[完全版]」とり・みき そりゃあもう爆笑ですよ。ちなみにワタシはなるべくSFとは何かという話題にはふれない方向で(笑)。
「ろーどそうるず」小川一水 真向直球勝負のバイクSF。この人も芸の幅が広いな。笑いあり涙ありで楽しい。
「想い出の家」森岡浩之 ハイテクメガネが浸透した未来。高齢化社会の様相がどうなるのかとか思ってしまう話。
「東山屋敷の人々」長谷敏司 家制度が依然として残る近未来、ただ一人抗老化術を受けた家長が君臨し続ける家。医療技術の進歩した未来の悪夢を描き続けるこの作家の姿勢に変わりはない。そして本作もまたユーモア風味ながらずしりとした重いものを残す内容だ。
「犀が通る」円城塔 さまざまな視点(非人間含む)から描かれた喫茶店の風景。やっぱり面白いねえ。ただオチがわからなかったな・・「ギリシア小文字の誕生」浅暮三文 ギリシア文字の由来を神話的に紹介、ってシモネタかよ!(笑)以後見慣れぬ外国の文字から変な想像が膨らむこと間違いなし!
「火星のプリンセス」東浩紀 書き下ろしアンソロジーに連載が入ってるなんて反則じゃん!読みきりだけどこれはNOVA2から読むべきだったなー。論客のイメージからは意外なほど正統派の火星SF。
「メデューサ複合体」谷甲州 巨大人工構造物をテーマにした宇宙土木正統派ハードSFミステリ(長)。木星の描写と主人公が原因探求に知恵をめぐらせるところが読みどころ。
「希望」瀬名秀明 大森さんの解説にもあるが、万物理論パロディから始まったNOVA3が万物理論へのシリアスな回答ともいえる本作で締められるのは恐ろしいほどのシンクロニシティ。かなり難解な部分を有し、ある種反SFといった要素も内包した問題作のように思われるが、人間の認識や統一理論といったテーマに深く切り込んだ心揺さぶられる傑作。近年の長編も読まないとなあ。
今回はSFらしい作品が多かった。ハイライトはやはり「希望」。「東山屋敷の人々」「犀が通る」もよかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とり・みき『SF大将 特別編 万物理論[完全版]』
小川一水『ろーどそうるず』
森岡浩之『想い出の家』
長谷敏司『東山屋敷の人々』
円城塔『犀が通る』
浅暮三文『ギリシア小文字の誕生』
東浩紀『火星のプリンセス』
谷甲州『メデューサ複合体(コンプレツクス)』
瀬名秀明『希望』 -
第3弾ついに発売!
でも、まだ2が読み終わってない…。 -
小説
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「SF大将 特別編 万物理論[完全版]
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74:浅暮三文、小川一水、瀬名秀明各氏の作品がとても好き! いろんな作風が楽しめるのも、アンソロジーならではですね。「ろーどそうるず」は小川さんお得意の分野だと思うのですが、しっかりしてやられました。瀬名秀明さんの短編集「希望」は今読んでるところ。面白いけれど、私の脳みそが足らずにストンと腑に落ちないのが悔しいです。浅暮さんは実は初読。これから読む本が増えるのも、アンソロジーのいいところですね! NOVA4も楽しみ。
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小川一水「ろーどそうるず」バイクに搭載されたAIの会話。擬人化っぽい
森岡浩之「想い出の家」バーチャルリアリティを家に搭載したおばあさん。しかしそこに描かれる想い出はすべて他人のものだった
長谷敏司「東山屋敷の人々」不老不死の族長に後継者と指名された大学生。だけど不老不死なのに後継が必要か?途中までは面白かったけど途中から段々イミフに。ひとりよがりな文章も鼻につく
円城塔「犀が通る」苦手だったけど、これは読めた。喫茶店の常連とウェイトレスとウェイターと。さらにそこに飾られている星図とデューラーの犀と。それぞれの視点でいろいろ語る。とりとめもないけど意味がわからないわけでもない。
浅暮三文「ギリシア小文字の誕生」小文字ひとつひとつをその形から意味を類推するんだけど、通して全てが下ネタ。オメガがωおっぱいだということは脳に刻み付けられた。
東浩紀「火星のプリンセス」NOVA2からの続き。あんま憶えてないしw多分あまり面白くなかったし、今回のも面白くない。ってか意味もなく時系列をごちゃごちゃにするのよくない。
谷甲州「メデューサ複合体」既読。
瀬名秀明「希望」養父に、自動車事故検証用のダミーロボットの型取りをされていた娘の独白的な。ダミーロボットと気持ちというか痛みがシンクロ?するような?よくわからん。終始漠然とイミフだった。これを絶賛する人も多くて自分のSF能力の低さを知る。
なんつーかさ、もっとほわっとしたソフトなSFが好き。NOVA1とか結構そういう作品あったのにさ。精神とか宗教とか哲学的なのは苦手だお。 -
SFオリジナル・アンソロジーの第3弾。
まずはマンガ。とり・みき「万物理論」。もちろんイーガンのパロディで、「すべてのSFを説明する究極の定義」がテーマで、それが発表されたら、SFは消失する。ここで笑えない人にはつまらんな。
とはいえ、『NOVA3』を読みつつ、これがSFか、などとまたまた思うのである。
小川一水「ろーどそーるず」。SF設定によるバイク小説にして、人情話。この程度のSF設定の普通小説はジャンル外にも一般化しているともいえるが。バイクに特段愛着はなくとも、道具に対する愛という点でオタク的心性をくすぐる点がSF的といえるのかも。
森岡浩之「想い出の家」、長谷敏司「東山屋敷の人々」はテクノロジーの発展と人間や社会の変化を描くという点で、近未来SFのひとつの定式に沿っている。そこに家族という問題が絡むのが,古くさいというべきなのか、現代的というべきなのか。もっとも2作を一緒くたにはできず、前者が短編のノリで軽くまとめているなら、後者は長編の重みを持つ。
円城塔「犀が通る」。この人はさすがに一筋縄ではいかない。ある喫茶店の状況を描いただけ。ただ、非常に独特の思考回路、あるいはもうほとんど病気か発達障害かというような偏った論理過程で記述された平凡な情景。これがSFかというと、コンテンツがSF的なのではなく、描写方法がSF的とでもいうほかないのだろう。
浅暮三文「ギリシャ小文字の誕生」。ギリシャ小文字がいかにエロいものか暴露した、この小説(?)はSFではないが、分類不能。こうしたものを受け入れてきたのがSFであることも事実。
東浩紀「火星のプリンセス」は『NOVA』で連載の長編の一部。一部をとってどうのと評しがたいが、アニメのノベライゼーションのような感触に鼻白む。
谷甲州「メデューサ複合体」は宇宙土木SFシリーズの22年ぶりの新作。もっとも馴染みのSF世界という感触がある。
瀬名秀明「希望」は正直、読み解けていない。量子論から9.11以降の社会の問題まで様々な概念を持ち込み、多くのものが暗示に留められた小説。テーマは重力と心。キーワードは希望。これは9.11後の希望であり、パンドラの箱に残った希望であり、その希望は多義性の霧の中に逃れ去ってしまう。
本書を読んでの感想。おそらくSFは消滅に向かっている。そして消滅後に残った希望をまたSFと命名するのだろう。