この30年の小説、ぜんぶ ; 読んでしゃべって社会が見えた (河出新書)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309631455

感想・レビュー・書評

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  • 気が塞ぐ、、、
    どうして野党は野党のままなの?
    人でなしの集団が大きな顔して国の舵取りをしていられるの?
    誰か教えて、、、

    この30年の小説、ぜんぶ :高橋 源一郎,斎藤 美奈子|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309631455/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【本棚を探索】第6回『この30年間の小説、ぜんぶ 読んでしゃべって社会が見えた』高橋源一郎・斎藤美奈子 著/三宅 香帆 |書評|労働新聞社
      ...
      【本棚を探索】第6回『この30年間の小説、ぜんぶ 読んでしゃべって社会が見えた』高橋源一郎・斎藤美奈子 著/三宅 香帆 |書評|労働新聞社
      https://www.rodo.co.jp/column/122118/
      2022/02/17
  • 「SIGHT」年末恒例企画「ブックオブザイヤー」は愛読していた。雑誌が休刊してしまって残念至極。どこかでまたやってほしいなあ。高橋源一郎さんと斎藤美奈子さん、最強コンビの一つだろう(豊崎由美さんと大森望さんというのも好き)。お二人の場合、小説などを論じつつ、その作品が書かれ読まれる社会的意味に斬り込んでいくところに特徴がある。

    後半の長い対談は、平成を(さらには昭和を)俯瞰する視点で話されていて、なるほどなあと思うところが多かった。確かに文学は社会の鏡であり、しかもそれは時間がたってから鮮明な像を結ぶものなのだと納得させられた。

    個々の作家についての評がやはり読みどころ。言われてみれば本当にそうだと思うのがいくつもあった。

    ・西村賢太さん 「フラットに書いているようでいて、苦悩を特権化してる感じ」 そう!主人公がDV男だという以外にもなんか苦手と思ってたのはこれだ。明治の書生ものから連綿と続く「オレだけがこんなに苦しんでる」ってやつ。(しかしこんなに早く亡くなるとは…。ご冥福をお祈りします)

    ・山田詠美さん 「詠美さんの作品って、もともと優等生なところがあるし、じつはすごく道徳的でしょ」「根本的にいい人なんだよね」 そうなんだよね~。アンダーグラウンドを描いてもにじみ出る真っ当感がエイミーの魅力。

    ・伊藤比呂美さん 「今日に至るまで、一貫して子育てや家族のことを書き続けてきたわけで…」「人生の実況中継だよね」 人生の実況中継!いやまさに!そこに全然ウソがない点が伊藤さんの凄さだ。今や老いに向かう姿も「中継」してくれていて、読むとなぜか安心する。

    とまあ納得した箇所は多々あるが、今回もっとも膝を打ったのは、村上春樹についての論評。私が初期作品以外の彼の小説が苦手な理由がよーくわかった。

    ・「これ(「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」)、読んでも小説の中に入れない人、たくさんいると思うんだよね。表面でツルッと滑って。舞台の上を観ていて、凄い熱演で、でも熱演されればされるほど冷めていくみたいな。でも、本当は、読むのはその熱演の中身じゃなくて、何か別のもの、メタ・メッセージが……。」「あるんじゃないかなってみんな思うので、一所懸命読むわけですが。」「ただ、それが何かって言われると、なかなかわからない」 私のことだよ~。

    ・斎藤さんが、「すごく浅く言うとさ、自分探しものですよね」と斬り、主人公を動かすのはいつも女で「結局、女に甘えてません?」と言った後の高橋さんの答えに、もう膝を連打!
    「まあでも、いくら批判されてもへこたれないよね。だからもしかすると、最後の父権制はここにあるのかもね」「他の人たちはやっぱり自信がないっていうか、頼れるものがない感じ。でもこのふたり(村上春樹と大江健三郎)は、自分自身の中に重力がある」「このふたりは、後期資本主義でそういうの(近代文学をバックボーンに持った父権制)がいったん切れたあと、すごい力業で自分自身の上にそれを作り上げたんだよ」
    この後二人が繰り出す言葉にいちいちうなずく。「ふたりとも自己肯定感がすごいよね」「どう見ても圧倒的な肯定感!」「みなぎる自信!」「全体から醸し出される、有無を言わせぬ自己肯定感!」
    本当に、主人公がどんなに「ちっぽけな何もできない自分」と言おうとも、受ける印象はまったく逆。エッセイでも(こちらは愛読している)、村上さんはしばしば、「世界とうまく折り合えない自分」「理解されない自分」を書くけれど(そしてそこに共感してしまうけれど)、自己否定感はきれいさっぱりないんだよね。高橋さんは「ぼくは(村上作品は)誤読に支えられてるんじゃないかと思ってるんです」とまで言っていた。うーん。

  • 2011年からの時代も映す書評対談。
    さすがに文章のスペシャリストは対談も興味深く、所々は高等過ぎてついていけないところもあり(笑)

    その年に話題になった小説を時代が違う今、改めて読んでみようと思う本がちらほら。

    暇を見つけて、新刊ばかり読んでいないで、遡って自分独自の時代の検証をしてみよう

  • 30年毎年、ではない。
    毎年はせいぜい4年で、あとは刊行直前に30年ということにするためにレンジを広く取った。
    そして選書自体が「そういう傾向」のものなので、そうなるだろうなという放談に過ぎないが、まあまあ面白い。
    文芸誌を集中的に読んでいた時期とも重なるので。

    @以下、コピペして、【 】で追記。

    2011年から令和まで、計6回おこなわれた本をめぐる対話から、日本社会が浮かび上がる。思いもよらない解釈や、意外な作品との繋がりなど、驚きと発見に満ちた、白熱の対談集!

    目次

    はじめに

    ●第一章 震災で小説が読めなくなった
    ブック・オブ・ザ・イヤー2011

    生存にかかわるリアリズムは最強だ
    『マザーズ』金原ひとみ/『苦役列車』西村賢太/『ニコニコ時給800円』海猫沢めろん

    謎の「いい女」小説はちょっと前衛 【自分で足場を作る作家は、現実が変わっても平気】
    『きことわ』朝吹真理子/『私のいない高校』青木淳悟/『いい女vs.いい女』木下古栗/『これはペンです』円城塔

    緊急時、ヒトはクマやウマになる 【文学には、夢を見させる作用と、覚醒させる作用がある】
    『馬たちよ、それでも光は無垢で』古川日出男/『雪の練習生』多和田葉子/『神様2011』川上弘美

    君は3・11を見こしていたのか
    『ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第三集』宮沢章夫/『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』陣野俊史/『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』開沼博/『災害ユートピア なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』レベッカ・ソルニット 高月園子訳

    ●第二章 父よ、あなたはどこに消えた!
    ブック・オブ・ザ・イヤー2012

    原発事故は終わっていない
    『阿武隈共和国独立宣言』村雲司/『むかし原発 いま炭鉱』熊谷博子/『線量計と機関銃』片山杜秀

    母と娘の確執が文学になるとき 【父と息子の近代文学150年でようやく母と娘】
    『冥土めぐり』鹿島田真希/『東京プリズン』赤坂真理/『母の遺産 新聞小説』水村美苗

    ここにいたのか、落ちこぼれ男たち
    『K』三木卓/『大黒島』三輪太郎/『その日東京駅五時二十五分発』西川美和

    嵐の中の、もうひとつの避難所
    『燃焼のための習作』堀江敏幸/『ウエストウイング』津村記久子/『わたしがいなかった街で』柴崎友香【2012年に2010年という災害前夜を描く】

    多色刷りの性と個性が未来を拓く
    『ジェントルマン』山田詠美/『奇貨』松浦理英子

    ●第三章 近代文学が自信をなくしてる
    ブック・オブ・ザ・イヤー2013

    母と娘の第二章はけっこう不気味
    『爪と目』藤野可織【せっかく母を始末したと思ったらクローンのように別の母が】/『abさんご』黒田夏子/『なめらかで熱くて甘苦しくて』川上弘美

    巨匠にとって「晩年の様式」とは 【無意識であることを意識的に】
    『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹/『晩年様式集 イン・レイト・スタイル』大江健三郎【家族に否定されても小説という表現に自分の生涯を賭けざるを得なかった人の悲しい話】

    マルクスも驚く「労働疎外」のいま
    『工場』小山田浩子/『スタッキング可能』松田青子

    作家が考える震災前と震災後
    『想像ラジオ』いとうせいこう/『初夏の色』橋本治【弱い父と息子】

    わけがわからない「大作」の中で起きていること
    『南無ロックンロール二十一部経』古川日出男/『未明の闘争』保坂和志

    青春はあんまりだ
    『青春と変態』会田誠/『永山則夫 封印された鑑定記録』堀川惠子/『世界泥棒』桜井晴也

    ●第四章 そしてみんな動物になった⁉
    ブック・オブ・ザ・イヤー2014

    ステキな彼女に洗脳されて
    『死にたくなったら電話して』李龍徳/『吾輩ハ猫ニナル』横山悠太

    家こそラビリンス
    『穴』小山田浩子/『春の庭』柴崎友香【家が主人公。人に興味がない。人と人ではなく、人とモノの関係】

    21世紀の私小説は社会批判に向かう
    『33年後のなんとなく、クリスタル』田中康夫/『未闘病記 膠原病、「混合性結合組織病」の』笙野頼子/『知的生き方教室』中原昌也

    近代の末路を描く「核文学」
    『震災後文学論 あたらしい日本文学のために』木村朗子/『東京自叙伝』奥泉光【東京中私という究極の私小説】/『アトミック・ボックス』池澤夏樹/『聖地Cs』木村友祐

    保存された記憶、または90歳の地図
    『徘徊タクシー』坂口恭平/『ラヴ・レター』小島信夫/『夢十夜 双面神ヤヌスの谷崎・三島変化』宇能鴻一郎

    ●第五章 文学のOSが変わった
    平成の小説を振り返る(2019)

    下り坂の30年

    今から思うと平成を予言していた
    『タイムスリップ・コンビナート』+『なにもしてない』笙野頼子/『親指Pの修業時代』+『犬身』松浦理恵子/『OUT』桐野夏生

    プロレタリア文学とプレカリアート文学
    『中原昌也 作業日誌2004→2007』中原昌也/『ポトスライムの舟』津村記久子

    異化される「私」 【近代的自我からはじまった日本文学はもう終わっている。新しいOSをインストールされている】
    『インストール』綿矢りさ/『コンビニ人間』村田沙耶香/『スタッキング可能』松田青子/『野ブタ。をプロデュース』白岩玄

    地方語と翻訳語の復権 【語り手が人間である必要すらない】
    『先端で、さすわさされるわそらええわ』川上未映子/『告白』+『パンク侍、斬られて候』町田康/『イサの氾濫』木村友祐/『献灯使』多和田葉子/『ベルカ、吠えないのか?』古川日出男

    相対化される昭和 【昔のインテリに相当するのが女子高生で、批評的】
    『ピストルズ』阿部和重/『東京プリズン』赤坂真理/『巡礼』+『草薙の剣』橋本治/『あ・じゃ・ぱん』+『ららら科學の子』矢作俊彦/『残光』+『うるわしき日々』小島信夫

    日常のなかの戦争
    『バトル・ロワイアル』高見広春/『阿修羅ガール』舞城王太郎/『虐殺器官』伊藤計劃/『となり町戦争』三崎亜記/『わたしたちに許された特別な時間の終わり』岡田利規

    当事者として書くこと 【同時代的出来事を描くのには60年? あるいはとりあえず即応?】
    『バナールな現象』+『雪の階』奥泉光/『神様2011』川上弘美

    ●第六章 コロナ禍がやってきた
    令和の小説を読む(2021)

    セクシュアリティをめぐって
    『オーバーヒート』千葉雅也/『ポラリスが降り注ぐ夜』李琴峰

    海外に渡った女性たちの選択
    『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』+『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』ブレイディみかこ/『道行きや』伊藤比呂美

    SNSが身体化した社会で 【SNSが身体機能の拡張になっている】
    『かか』宇佐見りん

    世界に羽ばたく日本文学
    『夏物語』川上未映子/『献灯使』多和田葉子/『密やかな結晶』小川洋子/『JR上野駅公園口』柳美里/『コンビニ人間』村田沙耶香/『おばちゃんたちのいるところ』松田青子

    過去の感染症文学を読む 【言葉が人々を汚染して人々の紐帯を破壊していく。SNS】
    『ペスト』アルベール・カミュ

    コロナ文学は焦って書かなくてもいい
    『ぺストの記憶』ダニエル・デフォー/『感染症文学論序説 文豪たちはいかに書いたか』石井正己

    コロナ禍を描く日本文学最前線
    『旅する練習』乗代雄介/『アンソーシャルディスタンス』金原ひとみ/『貝に続く場所にて』石沢麻依

    記録を残すことの意義
    『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』/『コロナ黙示録』海堂尊/『臨床の砦』夏川草介

    おわりに
    特別収録 ブック・オブ・ザ・イヤー2003~2010 全106作品選書一覧

  • 小説もノンフィクションも映画も、
    作られたものは社会を反映している。
    初めて読んだときには理解できなかった本も
    唐突に理解できる瞬間があったりする。
    好きな本もたくさん取り上げられていて、
    読みたい本も増えた。

  • 紹介した本を褒めていないのが面白い。
    欠点のある作品も含めて
    時代の産物であり、大量に、
    かつ、“考えながら”読むことで
    時代が見えてくる、ということが
    感じられる本

  • この30年って、バブルが崩壊して、東日本大震災があって、コロナ禍の渦中なわけです。
    ざっくり言うと、ほぼ平成。
    思えば、私は昭和生まれなので、昭和の女と思っていましたが、人生の中での比重で言えば、ギリ平成が長くなっていました。
    でも、昭和に思春期を過ごしたので、やっぱり昭和なんだなあ、とこの本で30年を振り返って思いました。

    ”私たちが子どもの頃は、「戦争は昔の話だと思っているけど、今でもどこかでやってるんだよ」って言わなきゃいけなかった。ところが湾岸戦争以降は常に戦争は世界の中で起こっていて、自分の身近にあって。そして9・11があって。(中略)だから私たちよりもっと戦争世代だと思います、若い方々は。”

    本当の戦争だけではなく、学校ではいじめと戦い、家では家庭内暴力や育児放棄などと戦う現在の若い人たちは、日常がすでに非常事態というか、戦時中。
    油断すると傷つけられたり命を喪ったりをするわけです。

    あと、この二人がチョイスするのは圧倒的に純文学が多いわけです。
    一つの作品をいろんな視点から評論するのは、エンタメ作品よりも純文学のほうが絶対面白いと思うのです。
    だって、一般的にエンタメ作品というのは、感動ポイントが決まっていて、あまり読後の意見が分かれないでしょう?
    だけど純文学っていうのは難しくて、ある程度解説を読んで作品を理解しつつ「私はそうは思わない」って思ったりするのもまた醍醐味なわけで。
    そういった意味では、自力で完全読解ができない人は、純文学のほうが読後の広がりが大きいのです。

    毎年、『本の雑誌』や『ダ・ヴィンチ』や今は亡き『ダ・カーポ』の書評欄である程度の人気作品は押さえていたつもりの私ですが、知ってる作家の知らない作品が次々紹介されていて、30年の出版状況、侮れんなと思った次第。
    で、この本で紹介された『ポトスライムの舟』を図書館で借りてきました。
    読むべき本はまだまだ尽きない。

  • 朝日新聞2022115掲載
    産經新聞2022116掲載

  • 自分で読むだけでは思いもよらない観点を提供してくれる点で、文学に関する書評はやっぱり読んでいて面白い。ただ、高橋小説を全然楽しめなかった記憶から、どうしても、氏と同じように作品を味わう自信がない。斎藤さんの合いの手も的を射ていて、読み物としてはとても楽しませてもらったんだけど、じゃあ読みたいかとなると話は別で、ピックアップしたのは下記の2点のみ。平成の総括ってことで、比較的有名どころというか、既知の作品が多かったということもあるのだけれど。

    ”むかし原発いま炭鉱”
    ”工場”小山田浩子

  • 高橋源一郎さんと斎藤美奈子さんが、平成からの約30年間に読んだ本について、その年の時事に絡めての対談をまとめたもの。面白かった。
    「あー、こういう時相だとこのような文学が生まれるんだ」と興味深く読みました。読みたい本が増え、読書の幅が広がりそうです。

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著者プロフィール

作家・元明治学院大学教授

「2020年 『弱さの研究ー弱さで読み解くコロナの時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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