同姓同名

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344036789

感想・レビュー・書評

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  • ある日、女児惨殺事件が発生。犯人は少年法により、名前が伏せられていたが、週刊誌により世間に「大山正紀」と名前が拡がってしまった。SNSやメディアでは炎上状態。同姓同名の人たちは、その名前に苦しめられる日々を送ることに。そんな時、「大山正紀」だけで被害者の会を立ち上げることになった。

    普通、小説を読むときは名前でその人物を特定し、頭の中で想像しながら判断できるのですが、今回はみんな「大山正紀」。一人一人をどうやって判断できるか不安でもあり、楽しみでしたが、所々迷うものの、大丈夫でした。

    「〇〇の大山正紀」だけでなく、主要な人物は背景のエピソードも加えながら、徐々に特定できたので、このエピソードではこの人だなと判断できました。
    変わるがわる「大山正紀」のエピソードが登場するのですが、見事に騙されました。安心したのも束の間、最後の最後まで色んな罠・ドンデン返しが仕掛けられていて、面白かったです。

    仕掛けも面白かったですが、同姓同名や少年法としての問題も扱っていて、考えさせられる部分もありました。

    他人は他人、自分は自分とは言いますが、現実に同姓同名で苦しめられている人がいると思うと、なかなか複雑だなと思いました。情報を過熱させているのは、事件に無関係の人たちです。正義だと思って発信・拡散したつもりが、やがて大きな問題に発展するかもしれません。そう考えると、安易な気持ちではなく、責任を持つことが大切であると感じました。
    難しい問題ですが、名前や外見だけで判断しないことが大切だなと思いました。

    ありそうでなかった同姓同名を使った物語に意外な所から攻めてきたので、新鮮味がありました。

  • 登場人物がほぼ大山正紀しか出さないのは大山正紀を光らせる為なのか、大山正紀だけで話を完結させたのは天晴れだと思う。
    しかも不思議と大山正紀を混乱させない書き方は素晴らしい。

    構想だけでなく、伏線回収が多く読み返したくなる一冊。

    他にはない作品に私は面白かった。

  • 最初から最後まで出てくるのは大山正紀だらけ。
    本の中では漢字の名前だけで、いろんなエピソードの時代も顔も年齢も性別さえもわからないからこその話。映像化したらネタバレだらけですもんね。
    新聞やネットで報道されるのはほんの一部の情報だけ。そんな一部だけしか知らない人たちが匿名で正義を振りかざす。イヤな世の中です。
    その中でも言い訳せずに努力するサッカー部だった彼だけが救い…
    ラストは、どういうこと?になりました。自分の偏見にもメスが入れられた感じ。

  • 新聞記事で紹介されていたので手に取った。
    単純に話が面白い。最初から最後まで引き込まれた。その中にも作者からのメッセージが込められていたように思う。特に人々の「無自覚な悪意」について考えさせられた。自分も最近、伊東純也選手と週刊新潮の件をTwitterで追っていたので、自分の中にも「無自覚な悪意」があることに気がついた。物語の中の出来事だが、他人事とは言いきれない怖さに自分を含めた人間の弱さと愚かさを思い知る。「無自覚な悪意」に囚われずに、前を向いて自分の人生を歩みたい。
    エピローグでの結末は「無自覚な悪意」とは少し違い、ため息が出たが、それもまたこの世のやるせなさを物語っているような気がした。

    【以下本文より刺さった言葉メモ】

    「ずっと“被害者意識”をもっていたら、全てを“悪意”出みるようになる。」「普通の友人知人が周りから去った時、残るのは“怒れる人たち”です。怒れる人の周りには怒れる人しか集まってきません。」

    「いちばん怖いのは、自分は誹謗中傷していい人間を決める権利がある、と信じている人間たちです。言葉の暴力の残酷さを訴えていた人間も、自分が許せない罪を犯したと感じた相手には、いとも簡単に暴力的な言葉を吐きます。誰なら誹謗中傷に追い込んでいいんですか?自殺に追い込んでいるわけじゃない、ってみんな言うけど、それは、大勢から批判されている人間がたまたま自殺しないでいてくれただけです。」
    「俺たちは、そんな人々の“悪意”から抜け出すべきだと思うんです。人を死に追いやる言葉に正義なんてないです。」

    「母親は、妊娠したとき、赤ん坊が生まれてくることをどれほど楽しみにしていたかを語ってくれた。名前は1ヶ月以上、考え抜いたという。そう、同じ名前でもそこに込められた想いはきっとそれぞれ違う。そういう意味では、同姓同名でも唯一無二なのだ。」

  • 脳内が…大山正紀…一色になりました。
    登場人物ほぼ大山正紀。
    こんがらがる脳内を整理しながら何とか読了。
    犯人は大山正紀。

  • サクサクとはよめなかったが内容の濃い話で集中力があれば1日で読めてしまう。ネットで広まる誹謗中傷、不特定多数の攻撃などそして犯罪者と同姓同名であるために最悪な人生を歩んだ、人らが被害者の会を発足。

    考えさせられる言葉
    1番怖いのは自分には誹謗中傷していい人間を決める権利があると考えている人がいるということ。

    名前に囚われた人生より前向きに悪名を自分らで取り除く

  • 登場人物全員が「大山正紀」という斬新な試みと、内容紹介の「大胆不敵ミステリ」に期待して手に取るも、乱れ飛ぶ口汚い言葉や、SNS上で繰り広げられる根拠のない罵詈雑言に次第に気分が悪くなり、何度も挫折しかけた。

    それでもこの物語がどう着地するのか気になり読み進めたが、終盤での二転三転には翻弄された物の決して心地良い読書時間ではなかった。

    事件そのものより作者のメッセージ性の方が心に響く。

    両親が生まれた子に一番初めに贈る「名前」というプレゼント。
    その大切な名前を悪用され傷つき苦しむ事になるなんて本当にやり切れない。

  • 【レビュー】
    これはどんでん返しだ!と思いながら、さらに二度三度騙される究極の叙述トリック小説。
    同じ名前なので、読んでて難しいかな?と思っていたけれど、サラサラ読めて、どんどんページも進んで。すごい小説に出会った。
    人って名前から受ける印象がすごく大きくて、それが同じ名前で一緒になった時に、今まで人の印象を形から決めていたのかな?と思ったし、SNSのきつさを感じられた小説でした。

    【下村敦史さんコメント】
    僕の持っている全てを注ぎ込んだ作品で、手応えはあります。
    内容を度外視して、面白そうなキャッチコピーを考えた時に、その中のひとつに「登場人物全員同姓同名」というのがあって、それが元になりました。
    名前をめぐる物語でもあるし、今のSNSの問題を扱った社会派でもあります。四転五転するミステリーなので、全てを注目してもらいたいです。
    SNSでの誹謗中傷は社会問題になっています。ポジティブな内容で共感を集めている分には良いけれど、誰かを批判したりとか、何かを批判することで共感を集めようとしている人が増えているような気がしています。
    そういうのを見ていると、エスカレートしていくだろうし、扱うべき社会問題だと思いました。

    【作品内容】
    なんと10人以上の登場人物が全員"大山正紀"。大山正紀が殺されたーその犯人は“大山正紀”
    誰もが持つ名前をテーマにした驚愕のミステリー。

    登場する”大山正紀”のうちの一人は、将来プロサッカー選手を夢見る高校生。
    ある朝、起きてすぐいつものようにSNSをチェックすると…自分の名前”大山正紀”がトレンド1位になっていた。
    なぜなら、幼い女の子が犠牲となり日本中を騒がせていた事件の容疑者が遂に逮捕され…ある週刊誌が未成年にも関わらず容疑者を実名で報道。
    その名前が””大山正紀”だったのだ。
    SNS上では、[大山正紀を許すな。八つ裂きにしてやりたい][大山正紀。お前は二度と社会復帰するな!]など、罵倒する声が後を絶たず、犯人と同姓同名というだけで、まるで自分が日本中から非難を受けている感覚に陥るのだった。
    その影響で、ほぼ決まっていた大学のスポーツ推薦が取り消され、人生の歯車が狂い始める。
    そしてこれは、彼だけの話ではなかった。

    ある別の”大山正紀”は、これまで親しくしていた女性から突然関係を絶たれてしまうなど…日本全国の”大山正紀”が名前を理由にこれまで味わったことのない理不尽な想いをしていたのだ。

    事件から7年が経ち、物語は再び動き出すー
    事件の犯人”大山正紀”が刑期を終え、社会復帰を果たすと報じられたのだ。すると…
    [あの大山正紀が社会に戻ってくるらしいぞ][今からでも大山正紀を死刑にしろよ!]と世間が再び敵視し始める。

    そして、同姓同名というだけで人生が狂わされると心配したひとりの”大山正紀”がSNSでの呼びかけにより、これまで辛い想いをしてきた”大山正紀”たちが集まり「同姓同名被害者の会」を結成。
    彼らは協力して犯人の”大山正紀”を見つけだし、その素顔を世間に晒してしまおうと計画する。
    しかしいつになっても犯人の”大山正紀”が見つからない…するとこの被害者の会の中に紛れ込んでいるのでは?と疑いが生まれる。
    さらには”大山正紀”が”大山正紀”を殺してしまう最悪の事件が起きてしまうのだった。

    最後まで何度も何度も読者の予想を裏切りながら、現代社会の闇を問うミステリー小説。

    著者は『闇に香る嘘』で江戸川乱歩賞を受賞した下村敦史さん。
    本格ミステリーから医療をテーマにした社会派作品まで、鮮やかなどんでん返しが常に読者を驚かせてきました。
    書店員の声でも「よくぞここまでどんでん返しにつぐどんでん返しを考えつくものだと感動いたしました」「タイトルから想像していた内容を上回る驚きの仕掛けに脱帽です」と絶賛の声が寄せられています。

  • 「大山正紀」がたくさん登場するって、どういうこと?と気になり手に取りました。本当に出て来る人、みんな大山正紀。こっちの大山正紀と思い込みながら読んでると、それはあっちの大山正紀だったのか…という感じに上手く騙されたりと、ちょっとこんなに偶然が重なるか?というツッコミは置いといても楽しめました。このコロナ禍で、自粛警察なる物も出てきましたが、自分が正義だ、正しいと思い発言してる裏で傷ついてる人がいるかもという事を、もっと想像しなければと。特にSNSでの発言は難しいし、気をつけなくてはと改めて思いました。

  • 序盤読みやすく、すいすい読んだが、中盤から大山正紀だらけで混乱した笑
    映像で見たほうがはまりそうな題材。

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著者プロフィール

1981年、京都府生まれ。2014年に『闇に香る噓』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。著書に『生還者』『難民調査官』『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』『法の雨』『黙過』『同姓同名』『ヴィクトリアン・ホテル』『悲願花』『白医』『刑事の慟哭』『アルテミスの涙』『絶声』『情熱の砂を踏む女』『コープス・ハント』『ロスト・スピーシーズ』などがある。

「2023年 『ガウディの遺言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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