土漠の花 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344425125

感想・レビュー・書評

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  • 友軍の哨戒ヘリが墜落。氏族間紛争が続くソマリアとジブチの国境地帯付近に捜索のために出動した陸上自衛隊第1空挺団の野営地に、他氏族による虐殺を逃れた一人の女性アスキラがたどり着く。
    そして彼女を保護した瞬間から隊員たちもまた虐殺の標的となった。
    問答無用で襲い来るソマリア民兵とイスラム武装勢力。執拗に狙われるアスキラの持つ秘密とは。
    武器もなく、土地鑑もなく、通信手段も移動手段も奪われたなか、アスキラを守りつつ孤立無援の撤退戦を強いられる空挺団。白昼の炎熱、道を閉ざす泥流、そして熱砂の嵐が帰路を奪う。
    自衛隊随一の戦闘力を持ちながら、未だ実戦で敵を殺したことのない自衛官たちは、撃てるのか。人を。果たして――。

    今現在、PKO活動の一環で紛争地帯に派遣されている日本の自衛隊。彼らは決して、現地の反政府勢力やゲリラ、ましてや住民たちとの戦闘行為を目的として派遣されているわけではない。
    しかし、現実的にいえば、紛争地帯の人々から見れば日本さえ西側諸国の一員であり、時として標的にさえなり得るはずである。
    日本は戦争をしない、国際貢献のためにきた。
    そんな主張は、長い時間紛争を繰り返し、敵は殺さなければ、自分の命だけでなく自分の家族も仲間も、氏族も、国さえ丸ごと奪われていく泥沼の現実のなかで、戦い抜いてしか生を勝ち取るすべのない人々に通じはしない。
    理想の活動に、現実の憲法が追い付かない現状のなかで、紛争地帯のただなかに放り込まれた自衛隊が武器を向けられたとき、そして武器を向けるとき、彼らはいったいどう行動するだろう。
    そして日本政府は――。
    本書は日本の、自衛隊の眼前に迫る危機を活写するフィクション。
    人物描写が薄めですが、約350ページを一気に読み進めてしまうスピーディーな展開に重点を置いたアクション小説。

  • ソマリアに派遣された自衛隊員が紛争に巻き込まれる物語。
    武器使用や殉職など、これまでに経験したことがない事態に遭遇します。
    政治的なことを考えずに読み楽しむの良いと思いますが、自衛隊員の家族にとってはシャレにならない物語ではないでしょうか。
    読み手の思想や生活環境によって、感想は大きく変わる作品です。

  • 期待を裏切らない面白さ。

  • ソマリアで活動する自衛隊が地域の部族の抗争に巻き込まれる。戦闘シーンの連続は凄まじいものがあり、平和な日本では想像もできない。これを警鐘の物語と読むのか、スリリングな冒険と読むのか、現実を知らない自分には到底判断はできない。小説としては人間関係の描き方が今ひとつかも。

  • ソマリア・ジブチ国境付近で、国連派遣部隊として活動する自衛隊が、墜落した有志連合のヘリコプター捜索隊として派遣された。墜落現場で突如現れた現地部族の女性を保護したことから、部族間紛争に巻き込まれる。
    自衛隊は、法規の範疇で効果的に交戦できるのか。眼前にいる銃を構えた男に銃弾を撃ち込むことができるのか。本書では保護した女性を絶対的な正義とし、その女性を守るという大義を眼の前にちらつかせることで、引き金を引くことが可能として書かれている。
    エンターテイメントとして面白く読めるが、昨今の自衛隊の置かれた状況とだぶり、現実的なシミュレーションとして、いらぬ事を考えてしまう。

  • 海外派遣された自衛隊員が現地の紛争に巻き込まれ、小氏族の姫を連れ拠点への帰還を目指す話。
    読んでいるとついつい力んでいることもしばしば。読むスピードもどんどん上がります。映像向きだな、と思ってYouTubeで検索かけたら、幻冬舎さんの宣伝動画を発見!それもなかなか面白かった。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    ソマリアの国境付近で活動する陸上自衛隊第一空挺団の精鋭達。そこに命を狙われている女性が駆け込んだ時、自衛官達の命を賭けた戦闘が始まった。一人の女性を守ることは自分達の誇りを取り戻すことでもあった。極限状況での男達の確執と友情。次々と試練が降りかかる中、生きて帰ることはできるか?一気読み必至の日本推理作家協会賞受賞作!

    表紙がいい!!何よりも表紙のカッコよさに惹かれました。本って重要ですよね見た目。こういう素敵でかっこいい表紙は読む前からワクワクします。
    かなり話題にもなったようなので、新刊に疎い僕も知っていました。こういう本も好きな僕として是非読んで見たいと思った次第です。
    さて、内容はともかく相当な力作なのでぐいぐい押してくる文章の圧力が高くて、先へ先へと読ます力に溢れていると思います。男の友情とアクション、武器満載、肉弾戦、確執と和解、仄かな恋情。必要な物が全部そろっているという感じです。
    さてそれならば高評価でもいいではないかという向きもあるかと思いますが、この手の本ではもうちょっと裏切りや確執の部分や悲しみがもうちょっと必要なのではないかと思いました。先駆者として今は無き船戸与一先生がいらっしゃるので分が悪いですがそういう慟哭の部分が薄いのが少し惜しいかなと思いました。
    これは好みになってしまうので、充分読むに値する作品です。

  • 途方もなく疲れた。。。

  • 一気読みでした!
    彼女が逃げ込んで来てから怒涛の衝撃で、最後までずっとドキドキしっぱなしでしたよー!

    日本の自衛隊は、訓練は受けているけれども、人に向けて銃を撃ったことなどない。
    それが、目の前で仲間を射殺され、自分たちもまた銃弾の雨にさらされることになった時、どうするか…

    それはもう戦うしかないだろう。
    「殺人を犯す」なんて考えてはいられない。
    殺らなければ殺られるのだ。

    今なお戦争をしている一部の国。そこに派遣された自衛隊に起こりうる現実。

    日本の精鋭部隊の活躍と葛藤を描く中に、自衛隊の在り方についても問われる作品であると思う。

  • ジブチでの自衛隊の任務が、墜落したヘリコプターからの救助活動というのは、ありそうな設定だと思った。そこからが、とんでもない方向に話が進んでいく。部族のお姫様が助けを求め、そのせいで銃撃戦に巻き込まれる。次々と命を落とす自衛隊員。ストーリーの殆どが、その内容である。しかも、アメリカのミスによるものが発覚したりと、あり得ない出来事が続く。でも、アフリカの現状はリアルだし、自衛隊の苦悩も理解する事ができた。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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