腕貫探偵 (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408550626

感想・レビュー・書評

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  • 安楽椅子探偵ならぬパイプ椅子探偵ですね。お役所仕事に徹する名前すらない探偵という設定が面白いです。探偵に名前がない代わりに登場人物が難読な名前ばかり。最初は何度か戻っていましたが読みを確認するために流れを中断されるのが惜しくなり、途中からは我流の読みで一気に行ってしまいました。ですが、登場人物が微妙にリンクしているのも楽しいですし、探偵ではなく相談者が自分で解答を見つけだし、それが必ずしも爽やかではないところもこの作者らしくていい感じです。続編も楽しみです。

  • 初作家さんでしたがとにかく人物の名前、地名、お店の名前に至るまで全部難しい‼何回も戻って読み返しました。 腕抜きをした市役所職員⁇があらゆるところに現れ、あらゆる悩みをズバリ解決…なんですが、犯人がどうなったか、などは書かれていません。 短編ですが微妙に繋がりもあり、なかなかやるなという印象。続編は…いつか機会があったら…って感じですね。きっとハマる人はハマるかも。

  • 腕貫を嵌めた謎の公務員が探偵役となり、お悩み相談を解決する連作ミステリ。特異なキャラクターが探偵役となって解決するという当初抱いたイメージとは違い、腕貫探偵という記号は強烈ではあるものの、キャラクター性には非常に乏しい。その人間性の無さや記号的な探偵を行き詰めた結果、逆に特異な存在となっているのは面白く、腕貫探偵の登場シーンは異世界に迷い込んだような趣がある。解決に乗り出すというアクティブさもなく、常時受け身の安楽椅子探偵ではあるのだが、本作はそれをさらに行き詰めた、謂わば「装置」としての探偵である。完全に答えを出すわけではなく、あえて謎に対する解法、道筋をつけるだけで、推理や真相にたどり着くのは相談者というのが斬新で面白かった。他の探偵小説と比べると特異に映るが、あくまでお客様の私生活に必要以上には立ち入らないという、公務員という領分を越えない振る舞いが徹底しているため、違和感はまったくなかった。

    7つの短篇から成る本作ではあるが、事件として一番面白かったのは最初の「腕貫探偵登場」であろう。あとがきにも書いてある通り、死体発見、死体消失、死体移動という3つのアイデアがねじ込まれた異様な作品ながら、解決は鮮やかで示された手がかりを一つも残らず回収する様は脱帽である。導入としては完璧で惚れ惚れしてしまった。

    一番インパクトがあったのは「喪失の扉」で、プライドの高い面倒なおじさんの家から発掘された履修届という忘れ物、それを持ってきた理由の喪失という、一見するとつまらない悩み事が、殺人事件へと飛躍する様は予想外でゾッとしてしまった。ささやかな日常の話が、一気に殺人者の隠蔽という暗い記憶を封印した話になる手腕は素晴らしい。冒頭の面倒なウザいおじさんの振る舞いも真相に直結しており、平凡な人間が殺人者になるという話に説得力を持たせている。

    「スクランブル・カンパニィ」は部屋の入れ替えという古典的なトリックが最初からあけっぴろげになっており、それが事件を変容させたというのがミソ。余談だが、美人上司に風邪の介抱をされるというのはくっそ羨ましくて、別の意味で美人上司が犯人じゃないことを願ってしまった。オチとしては、美人上司も一枚噛んではいたのだが、倫理的には問題を起こす直前で踏みとどまったのでホッとしている。風邪を引いて無理やり駆り出された主人公という例外がいたおかげで、犯罪を犯さずに済んだというのがいい。美人上司の、惚れた男に尽くす、弱っている男を見ると放っておけない、というのは方便ではなく真実であったというのもスパイスが効いており、あえて小説内でくどくど説明してないのが良かった。なるようにしてなる、というのがこの作者の作品の持ち味なのだろう。「喪失の扉」を読んだ時に思ったことだが、作者は善人に対しては優しく、報われる話を描くので、そこは読んでて安心する部分である。

    ただ、難点もちょっとあって『七回死んだ男』を途中で挫折した身であるのだが、その理由が本作を読んではっきりとした。どうにも、この三人称の中に浮ついた一人称が入り交じる文体が読みにくく感じる。他にも似たような文体の作品はたくさんあるのだが、この作者の文体はとりわけそこが鼻についてしまい、描写が頭に入らず何度もページを繰る羽目になってしまった。これはもう好みの問題で、合わないものは仕方がない。ただ、腕貫探偵の正体は気になるため、気が向けば続刊も手に取ってみようと思う。非常に論理的なミステリ短編集で、出来としては文句のつけようがないぐらい面白かったです。

  • 公務員で探偵というシュールな設定だが、メインが探偵に相談を持ちかける大学生などなど。
    それぞれのストーリーが面白かった。

  • 登場人物の名前が難しすぎて話に集中できない。
    なんか意図があるのかと思ったけど解説によるとそういう癖なだけみたいね。

  • そんなに癖があるわけでもないと思うんだけど何でか
    文体?に慣れるのに少し時間がかかった。
    一話限りと思った人がちょくちょく出てくるのが面白い。
    クロハさんが好きかな。

  • アームチェアディティクティブもの。
    謎の設定が面白い分、結末がそんなんかーというギャップがある。
    それでもバランスよく読みやすい。

  • 手抜きでなく腕抜き
    話には聞くけれど実物を見たことのない腕利き探偵
    ミステリ舞台展開装置探偵で
    キャラクタの面白みは周囲がつくるが
    名探偵登場時に説明優秀すぎるのが構成の難
    キャラクタ魅力が肌合い合うかが面白みという点で
    好み分かれる

  • 昔読んでいたのですが、続編を見たら
    読み返したくなった

  • ◆ お風呂でミステリ ◆ 第十回

    ・・・ 第十回 「腕抜き探偵」 ・・・


    高知出身ミステリー作家、西澤さんのアームチェアデティクティヴものです。
    高知出身のクリエイター、というのは変わった人が多いです。
    なんというか、そのジャンルのまんなかではなく、離れたところにいる孤高の巨星みたいな感じで、他の誰にもないテイスト、を持っているかたが多いのです。
    はらたいら、しかり、西原理恵子、しかり、やなせたかし、しかり……。
    西澤さんも一風変わったミステリー作家でSFとミステリーを融合させたり、普通のミステリーだと思っているとええええっ?
    という展開だったり……。
    そのなかではこの“腕抜き探偵”シリーズは王道です。
    事務の人が昔使ってた、古くさい黒い腕抜き(手首からひじまでの腕カバーですね)をはめ、市内のあちこちに机と椅子を並べて出没する
    “市民のためのご相談係”……。
    名前もわからないので通称“腕抜きさん”……。
    でも市民が日常生活のなかの不可思議なことを相談すると、とんでもない正解を即答……してくれる役に立つ人なのです。
    最近は美女の大学生になつかれてるよ (ワライマーク)
    早く新しい本が出ないかな。

    2017年08月08日

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著者プロフィール

1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修卒業。
『聯殺』が第1回鮎川哲也賞の最終候補となり、1995年に『解体諸因』でデビュー。同年、『七回死んだ男』を上梓。
本格ミステリとSFの融合をはじめ、多彩な作風で次々に話題作を発表する。
近著に『夢の迷い路』、『沈黙の目撃者』、『逢魔が刻 腕貫探偵リブート』などがある。

「2023年 『夢魔の牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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