あの本は読まれているか

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488011024

感想・レビュー・書評

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  • 2021このミス海外編9位、2020週間文春ミステリー海外部門3位、とのことだけど、ミステリというより事実に基づくフィクションという印象。『ドクトル・ジバゴ』については、国家の妨害でノーベル文学賞を本人が受け取れず一方的に授与された程度のエピソードは知っていたが、この本を読んでミューズのオルガにとても魅かれた。当初パステルナークを太ったひげもじゃの初老に差し掛かった男性ぐらいに思っていたので、なぜこの人が持てるんだろうと思って調べたら細身の知的な風貌で、これはモテルわ、と(苦笑)。
    それにしても思想が国家の脅威となるのだな。本の評判で国民に欺瞞を示す、なんて情報戦として面白いと思うけど、これを逆の宣伝パターンでされたら怖い。いや、実際にされているのかもしれない。真実を見極められるよう、読書で知力、感覚を磨かねば。
    原題に沿えば西側が主となるだろうけど、東側(ソ連)のエピソードの方が読みごたえがあった。西側のタイピストの関係は今の時代の小説や映画に設定としてほぼ入ってくるようになったけど、入れなくてはいけないんだろうか。映画化には向いている素材だと思う。

  • 東西冷戦時代、アメリカCIAがソ連打倒の武器として選んだのは、共産主義に批判的なためにソ連国内で発行を認められなかったソビエト人作家による1冊の本。兵器ではなく本で戦いを挑むさまは本好きにはたまらない、事実を基にした物語。面白かった!

  • 内容は面白いのだが、冗長に感じてしまった。

  • 出版契約金200万ドル(約2億円)のデビュー作。
    ミステリー仕立てだけど、
    冷戦下の米ソに生きる女たちを生き生きと描いていると思う。
    ボリス・パステルナークの小説『ドクトル・ジバゴ』の出版が
    CIAの「ドクトル・ジバゴ」作戦だったということを初めて知った。
    CIAのスパイ、イリーナよりもサリーが好きになったかな。

  • 著者のロシアに対するステレオタイプ(ビーフストロガノフ?)やちょっと理解不足な訳註が散見される(スーシュカはパンではなく、聖愚者は称号ではない)ことを除けば楽しめる作品

  • 1950年代冷戦真っ只中のアメリカとソ連が舞台。ソ連では作家パステルナークが反体制的ということで愛人のイリーナが収容所に送られる。数年後生きて戻ってきたイリーナはパステルナークを励まし「ドクトル・ジバゴ」を完成させるが出版できる目処はたたなかった。作品を海外に持ち出し出版したら、逮捕されるに違いない。分かっていてもやらざるを得ない作家の苦悩がよく描かれている。そして最終的に逮捕され再び収容所送りになるのは、またしてもイリーナと彼女の娘というのがショックだった。何故いつも女なのか。一方アメリカでは、設立されたばかりのCIAでスパイとして使われる女性たちの話。いくら懸命に仕事に尽くしても男たちから道具のように扱われる彼女たちがどれほど傷ついていたか。読みながら怒ってばかりいる作品だった。

  • おもしろかった。フィクションなのか史実なのか、最後まで迷いながら読んでいたけど、訳者あとがきで史実にフィクションを織り込んだ作品だとわかり、感銘を受けました。

    大戦前後にCIAとその前身で働いていた女性たち、というテーマのひとつはとてもツボ。でも、もうひとつのテーマであるソ連の作家とその愛人の話は最後まで入り込めず…。作家が自分勝手すぎて、愛人本人やその子供たちに迫る危険や恐怖をまったく意に介していないので、共感できなかった。

    時間が前後するだけでなく、語り手も章ごとに変わっていったけど、語り手ごとの話し方や言葉の選び方の違いがはっきりしていて、ここまで書き分けられる(訳し分けられる)ことがすばらしいと思った。

    これがデビュー作とのこと。もっと彼女の作品を読みたい!

  • スパイ物に「ドクトルジバゴ」とボリス・パステルナーク,オリガの人生をオーバーラップさせ,タイピストのイリーナの恋愛にジェンダー問題まで含ませて見事に一つの物語に仕上げている.「ドクトルジバゴ」が世に出た秘話としてももちろん面白いが,たくさんの愛の形が描かれていて心に沁みた.

  • 1950年代冷戦下、ソ連において出版されず禁書になって埋もれようとしていたパステルナークの『ドクトル・ジバゴ』をCIAのプロパガンダ戦略の一つとして、ソ連国内に密かに広めるという「ドクトル・ジバゴ作戦」があった。

    この物語は、その実話を下敷きにしたフィクションであり、西側=CIAのタイピストの女性達、その中でも諜報員としての才能を見出された女性達と、東側=パステルナークとその愛人がたどった人生が交互に描かれていく。

    私は『ドクトル・ジバゴ』を読んだことはない。映画も有名だが見ていない。学生時代に映画の中で流れる曲「ラーラのテーマ」の美しさを同級生だか先輩が熱く語っていた記憶があるだけだ。単純に、ロシアを舞台にした壮大な恋愛小説と思っていた本の裏に、まさかこんな凄い物語があろうとは、想像もしなかった。

    原題の「The Secrets We Kept」…「私達は秘密を守った」の「秘密」は、読んでみると二重三重の意味が込められていると思う。そして、この小説はミステリーと言うよりも、女達の物語だと私は感じた。

    西側であれ、東側であれ、女達が愛するもののために守った秘密の話だ。共産主義、社会主義国の監視の恐怖の中で、資本主義・自由主義国の西側にあっても露骨に存在する女への差別や偏見の中で、愛と誇りを持って生きた女達の活躍と勇気と苦悩を描いた小説だと思った。

    自分の知識不足と読解力不足のために正直、絶賛されるほどのめり込んで読めなかったのだが、優れた文学作品が政治的な打撃を大国に与えるほどの力を持つことを再認識し、何より「ドクトル・ジバゴ作戦」なるものの存在と、それが達成されるまでのいきさつに惹きつけられ、ロシアの歴史を改めて確認しようとするきっかけになった。

  • 一冊の小説が世界を変える。それを、証明しなければ。冷戦下、CIAの女性たちがある小説を武器に超大国ソ連と戦う!

    どこまでが事実で、どこからがフィクションなのかは分からないが、そんなことはどうでもよくなるぐらい、読ませます。

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