- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488011024
感想・レビュー・書評
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一冊の本を巡り暗躍した女性たちを東、西それぞれの軸からかわるがわる描く方法が面白い。実話を土台にしているがゆえに、フィクションながらリアルに時代背景を感じとれる。登場する女性たちが実にいきいきと描かれており、魅力的で愛おしい。特にサリーの愛の描写は印象的で、胸を掴まれたように忘れられない。
「兵器」とされた『ドクトル・ジバゴ』が愛の物語だったように、「ペンは剣よりも強し」と評されるこの作品も、愛の物語だったように感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ラストが粋でちょっと好き。ドクトル・ジバゴやノーベル賞のエピソードが本当だと知って驚いた
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題材になっている『ドクトル・ジバゴ』のことをタイトル聞いたことがあるくらいで内容をまったく知らなかったので、ざくっとググってから読みましたが、ある程度予備知識があったほうがちゃんと楽しめそうな作品ですね…。
CIAの実際の作戦を元にした話だそうですが、本で人々の意識を変えようっていうのは、わからないでもないですがなかなか即効性もなさそうだし本気でコレやったというならずいぶん回りくどい作戦だなと思いますが…まぁそもそもスパイのお仕事というのは地味に目立たず実行するのが本来なのでしょう…
というわけで、アクションとか派手な展開もなく、ミステリーとも言えない感じの作品で、ちょっと拍子抜けしました。普通に人間ドラマかな。
スパイ活動より女性たちの生き様を描くことに重きを置いてる感じ。 -
かつてCIAが実際に行ったミッションの公開された書類をもとに、黒塗り部分をフィクションで補完して創り出されたスパイもの。映像化の話があるとのことなので、恐らくいずれ実現するだろう。
フィクションとはいえ、フランク・シナトラが楽屋で開けっ広げに女優と楽しんでいたところとかは大丈夫なのかと心配になった(実際にそういうことがあったかどうかはともかく)。
作中に58年のブリュッセル万博が登場し、各パビリオンをググってみたところ作中で描写されている通りのものが出てきて感動した。ソビエトパビリオンは本当に巨大! -
これぞまさに「ペンは剣よりも強し」。
CIAがソ連を崩壊させるために使ったのが一冊の本「ドクトルジバゴ」だったというアイデアが面白いと思って読み始めたけれど、
まさかそれが実話だったなんて!
よくあるスパイものとは違った作戦に惹きつけられた。
だからこそ、具体的にその作戦がどのような結果を引き起こしたのか、
それを読んだ東側の国民はどうなったのかまでを描き切って欲しかった。
「ドクトルジバゴ」の作者ボリスとその愛人の最後をみると、果たして作戦が成功したと言えるのか、、、
アメリカ側の女性タイピスト達がとても生き生きとしていて、とにかく長いこの小説の中で唯一気楽に楽しく読めた。
女性としては、(CIAのタイピスト達のように)与えられた環境の中でいかにうまくやっていくか、その能力も大事だと思うけれど、
その環境を変えるための努力や能力も必要だよなぁと改めて感じさせられた。 -
史実を元にしたフィクションとのこと。CIAが一冊の本をソ連に送り届けて、文学の力でソ連の体制を崩そうとする工作の物語。CIAのタイピストの女性がスパイの素質を見込まれたり、受付嬢が立派なスパイだったりと、西側諸国の物語はスパイものそのものである。一方で東側のソ連では、CIAが送り込もうとした書籍「ドクトル・ジバゴ」の著者ボリス・パステルナークと愛人の物語である。ソ連の厳しい内情を描きつつ、死ぬまで人を愛し続けるラブストーリーである。むしろ愛の物語として読後は切なくも人間の存在をきっちりと感じられる。
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共産主義下で禁書になった小説にまつわる物語。
小説自体は実際にあったものなので、冷戦下では出版に際してこのようなことがあったのでしょうね。
個性的な女性たちの活躍が光っている。 -
ドクトル・ジバゴ作戦が実在していたものとは思わず読み進めていたので驚いた。映画今度みてみよう。
苦しみながら、軽んじられながら、それでも自分たちのために前に進み続ける女たちが描かれ、読むごとに惹き付けられていった。
冷戦下のアメリカとソ連(ロシア)をいったりきたりしながら本書は進む。どちらもひどい社会だった。
東では作家の愛人が投獄され、西では性的マイノリティをリストラ。
現代だって最高の時代ではないけど、この時代に比べたら格段にマシだ。
そう思えるようになったのは、本の力や言葉の力を信じて戦ってきた人々が積み重ねたものがあったからこそなのかと思う。
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『ドクトル・ジバコ』の著者ボリス・パステルナークの愛人オリガと、CIAの諜報員としてソ連国民に出版禁止のジバコを読ませる特殊作戦に従事するイリーナの物語。モデルとなった人物は実在するようだが、二人の主役がマイナーでジバコに精通していなければ退屈な一冊だ。ボリスがノーベル文学賞を授与された歴史のワキ役にすぎず、まして長々と綴られる彼女らの心理的葛藤はフィクションなのだから。かつてソ連では非道な言論統制があり、アメリカはそれを打破せんとこんな作戦まで実行していた、その事実を伝えるうえでは貴重だと思うのだけど。
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図書館で。
アメリカの情報開示面白いなぁ。実際のCIAの作戦も読んでみたいなぁなんて思いました。政府が政策として何をしたのか何をしなかったのかの記録をきちんと取って、ある程度の期間を置いた後に公に公表することは、今後の選択のためにも必要なことだと思います。責められたら資料をすぐにシュレッダーにかけちゃうような自国にも見習っていただきたいところです…
という訳でお話はCIAの作戦に関わる人と関わらない人のお話というか。
大戦後の女性の扱いは、アメリカでもまだまだこんな感じだったんだなぁなんて思いました。面白かったのですが途中からなんかメロドラマみたいになってしまったのが…ちょっと、ん?という感じ。まぁ「女の子」扱いの時代に性的マイノリティはさらに肩身が狭かっただろうとは思いますが…
対するロシアの方はよくまぁそんな思いまでして愛人はパステルナークに尽くすなぁという一言に尽きるというか。情が深いなぁと読んでいてしみじみ思いました。オルガさんの本があるみたいなのでそれは読んでみたいなぁ。
ドクトル・ジバゴが読みたくなりましたが…長編読み切れるだろうか…映画にしておこうかな、なんて思いながら読み終えました。