ランボー・クラブ (ミステリ・フロンティア 42)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017484

感想・レビュー・書評

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  • 遺伝子治療にフランス詩人と難しそうなテーマに腰が引けてしまいそうだが、展開もスピーディーでテンポよく読める。一昔前のユーモアミステリーのような凸凹私立探偵が暗くなりがちなテーマをうまく料理していた。どんでん返しも用意されていたが、そこは予想の範疇だったのが残念。ただ提示された謎の全てが最後で綺麗に解決を見せる丁寧さは好感が持てる。ミステリーとはあまり関係ないが癌の辛さの叙述が印象的でどうしても忘れられない。

  • フランス語など習ったこともない不登校中学生の僕が、なぜ、サイト<ランボー・クラブ>のトップページに掲げられたフランス語の詩を読めるのだろうか?
    僕はいったい誰なのか?
    ある日、ランボーの詩が書き換えられ、その詩が暗示する殺人事件が・・・。

    子供のころの記憶との齟齬を感じ、自分に自信のもてない色覚障害の少年サイドと、
    人捜しの依頼をうけ、東奔西走する体育会系の女探偵サイドで話がすすんでいきます。
    重苦しい少年パートと元気な探偵パートといったふうにメリハリがあって、読みやすかったです。

    序盤から、少年に何かがあり、母が何か秘密を抱えているのが明らかで、誰も彼もがあやしくてぐいぐい読まされてしまいました。
    そして少年と探偵が真相に気付くあたりの伏線も巧かったです。
    ただラスト、一番盛り上がるはずの謎解きがやや説明調だったり、犯人がいかにもな行動や告白をしちゃうので萎えてしまったのが残念。
    あと、今回も密室トリックがありましたが、そういうトリックを無理に盛り込まないほうがすっきり楽しめたかな。

    ホワイダニット、ホワットダニット作品としてはじゅうぶん楽しめる作品でした。

  • がんを治す遺伝子。身分すりかえ。

  • 色覚障害の少年と調査員の女性。
    この二人が主人公で、それぞれの目線で描かれた物語。

    少年は両親と妹の4人暮らし。
    父親の稼業はラーメン屋で両親ともに働いている。
    色覚障害の少年は今は学校に行っておらず、「ランボー・クラブ」というサイトにひんぱんにアクセスしている。
    彼には5歳以前の記憶がない。

    一方、調査員の女性は医師の男性から11年前に子供をつれて突然いなくなった妻を捜して欲しいという依頼を受ける。
    どうやらそこにはある占い師の占いが絡んでいるらしい。

    読んでいる内に、少年と調査依頼をした男性は容易に結びつけることができる。
    でもそこにもう一人、少年の父親と名乗る男が現れ、「あれ?」となる。

    そんな折、「ランボー・クラブ」のサイトが勝手に書き換えられるという出来事が起きる。
    それはランボーの詩になぞられた殺人予告。
    そして、実際にその詩の通りに殺人が行われる。

    紳士的な医師の男性と粗野な雰囲気の男性。
    父親らしき二人の男性のどちらが本物なのか?
    それともどちらも偽物?
    さらに、少年の脳は何かものすごい価値があるらしくそれを狙っている人間がいる事。
    それは何故なのか?
    そこに色覚障害という事が関係しているのか?
    「ランボー・クラブ」で殺人予告をする人物は誰?
    謎のキーワードがいくつも散りばめられていて、それをはっきりさせたくて次々読んでしまう・・・そんな話でした。

    引きこもりの少年、調査員の女性、どちらともタイプは違うものの感じのいい人物で好感をもてたのが良かった。
    反対に、少年の母親は何となく読んでいて感じの悪い人だと思っていましたが、読み終えてその印象は全く変わりました。

    ちょっとした密室トリックもあり、ミステリー好きには楽しめる作品だと思います。

  • こう、視点がふたつある話は、なんというか不安定だ。
    左右の目が、別々の方向を向いているような気持ち悪さがある。

    とはいえ、話は面白かったです。
    密室あっさり解けすぎだろうと思ったりもしましたが、メインはそこではないですしね。

    いやあ、人間関係って面倒ですねぇ。

  • 2011/07/27 読了

  • 推理させる気のないトリックと意外性の無い犯人。
    それでも、全体として話は面白く感じた。

  • 自分自身の過去を探るミステリに、さらなる事件が絡んできて読み応えたっぷり。見立てもあるし、要素は充分ですねえ。
    この犯人のしようとしていたことにはぞっとしました。でも人のため、という風に説得されれば、あの人のように手を貸してしまう人もいるんだろうな。善意なのか悪意なのかなんて、見分けがつくはずないし。それが一番悲しくて怖かったなあ。

  •  ランボーの詩篇を象徴的に使ったりと、散りばめられた小道具に謎めいた雰囲気だけは魅力的だったものの、肝心の語りの部分が今一つだった。当事者である菊巳パートと探偵役を務める探偵の麻理美パートの視点とが入り乱れ、もうちょっと上手く行かなかったのかなあと思う。 「自分が何者なのか」菊巳が自分のルーツを探るサスペンスフルな青春小説として、途中まではいい感じだったんだけどなあ。このラストは、あんまりだ。 個人的には「××××、アンタがちゃんと説明さえしていれば、人死になんて出なくて済んだのに!」と、小一時間ぐらい説教したい気分。それにしても、気が長すぎるほど長すぎる話だー(苦笑)。

  • 確かに「腑に落ちる」結末ではあるんです。きっちりと丁寧に作り込んでいるという事も、よくわかります。しかし、です。フィクションがご都合主義の積み重ねである事はわかっているつもりでも、どうにも不自然さが鼻につきます。読後の爽快感がありません。残念です。

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著者プロフィール

1961年、京都市生まれ。パリ第七大学理学部卒。2004年に『密室の鎮魂歌』で、第14回鮎川哲也賞を受賞。著書に『密室の鎮魂歌』『出口のない部屋』『天使の眠り』『めぐり会い』ほか。

「2021年 『味なしクッキー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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