時空旅行者の砂時計

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025625

感想・レビュー・書評

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  • 202302

  • 第29回鮎川哲也賞受賞作
    タイムトラベルSFと本格推理の見事な融合、SFとミステリーの融合作品は過去たくさんあるのだが、この作品もその中の名作と並べて遜色なしと思う。

    きちんと推理小説であろうとし、きちんとタイムトラベルSFであろうとすることに全力をあげてしまったからか、それ以外の部分に荒っぽさが目立つのが残念。登場人物が多いのに複数のキャラクターの特色が薄かったり、部屋の配置にキャラクターに屋外での状況に、時間を使ったトリックに…と頭に入れておかなければいけないことが多すぎて、トリックの理解を超えた部分を味わう余裕がなかったりするあたりが残念。まぁ、多くのミステリーはそういう特徴を備えているもんだとも思うが。

    デビューがこれで、こっからどんどん上手くなるんだとしたら、スゲー小説家の誕生かも知れないという予感はする。今後に大いに期待してます。

  • 最近話題になる事が多い特殊設定ミステリ。
    本格ミステリの体裁で屋敷の見取り図あり、家系図あり。このストーリーであそこまで家系を広げる必要があるのか。最後まで巻頭の図を行ったり来たりしてた。
    タイムトラベルの制約もルールとしてきちんと設定してあるのでアンフェアではないよ。「読者への挑戦」も入れるよ。ほらあそこに張った伏線も回収したよ。凄いでしょ。というふうに、考えた設定を成立させるために物語のほうを構築したという印象が強く感じられて馴染めなかった。
    初版のオビに「選考委員絶賛」とあるけど、巻末の選評を読むと必ずしもそうではないような…

  • 鮎川哲也賞受賞作。妻の先祖である竜泉家にまつわる呪いを解くために、2018年から1960年へタイムスリップさせられてしまった主人公。そこでまさに起こりつつある連続殺人「死野の惨劇」を回避することができれば、未来で死に瀕する妻の運命を変えられるかもしれない。必死に捜査し事件を阻止しようとするものの、それを嘲笑うかのように続く事件。しかも本来とは違う形で……いったい何が起こっているのか。スリルも満点の本格ミステリです。
    タイムスリップの技術を使ってしまえば何でもできるんじゃ? と思えそうなのですが。そこはきちんと各種の制約が設けられているため、SFの要素は利用しながらも純然たる本格ミステリとして楽しめます。タイムパラドックスに関しては……考えればきりがないのですが。そのあたりも踏まえ、なぜ彼が「探偵」として選ばれたのか、という部分にも納得。事件そのものの派手さも魅力的です。
    過去を変えると未来も変わってしまう、というのは当然のことなので。主人公が現代に戻ると(まあ戻れるであろうということは最初から予想できますよね)世界がどう変わっているのか、というところもどきどきするポイントでしたが。まさかこうなっていたとは!

  • 本格が性に合わないのか、タイムトラベルもののつじつま合わせが理解できないせいなのか、過去に戻ってる間のこと(つまりほとんど)はよくわからなかった。

  • 妻が瀕死の病に斃れ、その原因である「呪い」を回避するため過去に起きた連続殺人を解決すべくタイムスリップする、という。。。なかなかに思い切った設定。しかし荒唐無稽なトンデモ小説・・・ではなくSFとミステリをうまいこと融合しているのはお見事。というか自分好みです。こういうのホント大好き。
    タイムスリップの設定すらもトリックに盛り込むあたりが素晴らしい。鮎川哲也賞受賞のデビュー作なんですね。次回作もとても楽しみです。受賞の選評にあった「もっとも話題に上った怪作」ってのも読みたかったですねえ。
    おととしの「屍人荘」はヒットした割には自分はイマイチだったんですが、これは・・・映像はちょっと難しそうだなあ・・

  • 普通に面白かったです。
    とにかくタイムトラベルを前提とした本格ミステリで、古典ミステリのような展開ながら新しいミステリを見せている。
    ただSFが苦手なぶん難しいのもありましたね。
    だから絶賛出来ない自分が悔しい。

  • 最近好調の鮎哲賞受賞作。
    ミステリとSF(ファンタジー?)を融合させた意欲作…なのだが、どうも無理やりというか、企画先行というか。現地人(?)の協力者が許せるのは1人までで、いい歳こいたおとなが何人も、「タイムトラベル」なんて話を真面目に受け入れるとは。中盤過ぎにその展開が来るのだが、そこから一気に醒めてしまった。
    ネタ(というか「読者への挑戦状」)のためにタイムトラベルにはあれこれと制約が課せられているのだが、それを言うなら「現地人には知られてはならない」こそ、最も設けられるべき枷だろう。それがあればこそ、トラベラーの孤軍奮闘とか、ただでも疑心暗鬼に陥りがちなクローズド・サークル内でのさらなるいがみ合いとか、そういうとっても面白いことができそうだったのに。
    そう、妙にものわかりがよく冷静沈着なこの人たちからは、クローズド・サークルの醍醐味がまったく味わえないのだ。さらに、このものわかりのよさはまったく過去っぽくなくて、まさしく小前亮評するところの「三国志演義」と同じ陥穽に陥っている――「この作者は、自分が生きた時代の感性で過去を描いてしまっている」。
    本作のウリは「SF」「クローズド・サークル」「過去」の3つだと思うのだが、最初の1つを立てるために、後の2つの良さが毀損されてしまっているのだ。SF小説ならそれでもいいだろうが、ミステリファンとしては腑に落ちないところがあった。

    2020/1/29読了

  • 内容に引かれて購入。
    鮎川哲也賞を受賞されたということで、過去の受賞作品としては、「屍人荘の殺人」や「ジェリーフィッシュは凍らない」などがあります。これらの共通点は、ミステリー+ありえない状況を組み合わせた要素が含まれている点かと思います。今回の作品でも殺人事件にタイムスリップの要素を加えるというありえない状況が含まれていました。
    最初のページから、相関図や登場人物の紹介、家の見取り図があり、綾辻さんの館シリーズを彷彿とさせる演出が施されていました。本格的なミステリーで、最初の部分は、過去にタイムスリップするということで違和感な部分があったのですが、凄惨な事件に巻き込まれていくうちにいつのまにか違和感が薄れていって物語に引き込まれました。
    また、途中で読者に犯人は誰なのかという挑戦状を提示している文章があって、劇場的なミステリーを演出してくれます。
    殺人事件のトリックは、ミステリーの枠を超えた部分もあって、それってちょっと…と思うところもありましたが、これはこれで面白かったです。ただ、文章にしてしまうと、表現が分かりにくいかなと思うところもありましたが、その辺は雰囲気で楽しみました。賛否両論はあるかと思いますが、ミステリーとタイムトラベルを掛け合わせたという意味で考えると、画期的だなと思いました。
    方丈さんの作品としては初めて目にしましたが、本格的なのに個性的でとても面白かったです。今後どんな作品が出てくるのか、楽しみになりました。

  • 鮎川哲也賞受賞作。重病の妻の命を救う為に、過去にタイムトラベルして妻の先祖の一族間に起こった連続殺人の真相を解明する事になった主人公。その連続殺人は閉ざされた館で起こり、しかも不可能犯罪てんこ盛りで・・・という本格ファン垂涎の舞台設定になっている。ご丁寧に読者への挑戦まで付いている。
    面白かったのは確かだけど、タイムパラドックスを成立させる事にページを取り過ぎて、大勢死ぬ連続殺人の一つ一つの描写が若干疎かになっている気がする。トリックもなあ。この設定の割にはフェアではあるけど、アレを使って良いなら何でもありになるよなあ。SFミステリってだから苦手。

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