- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488027513
作品紹介・あらすじ
『さよなら妖精』から十年のときを経て、高校生だった太刀洗万智は、異邦でふたたび大事件に遭遇する。絶賛を浴びた『満願』をも超える、現在最注目の著者の最新最高傑作!
感想・レビュー・書評
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ずっと読みたいと思ってて、タイミングを見計らっていた本。
主人公の太刀洗万智さんがでてくる本で、ベルーフシリーズと呼ばれるらしい。知らなかった。ベルーフとは天職、職業という意味らしく、確かにジャーナリズムをすごく感じる作品。
太刀洗さんの話を時系列で読みたいと思ったら
『さよなら妖精』→『王とサーカス』→『真実の10メートル手前』
で読むと良いらしい。
完全に逆に読んでしまっているけど、きっと誰から読んでもとてもおもしろく、彼女の強烈な個性に魅力を感じると思う。
積読しながら次回は「さよなら妖精」も読みたい。
一介のフリージャーナリストなのに、話がどんどん大きくなるやん〜と盛り上がっておいて、二転三転していくストーリー展開に夢中になった。最後のオチも投稿することの大変さ、危うさを考えさせられるもので勉強になった。 -
舞台設定がすごい!
ネパール、カトマンズ。王族殺人事件。
最初は創作の世界のお話だと思っていたら、実際にこんな事件があったなんて。それだけでも驚き。
目の付けどころが違うな~。
外国の王族殺人事件を題材にするなんて大風呂敷広げちゃって大丈夫?なんてのは全くの杞憂だった。
当たり前と言えば当たり前なんだけれど、それはあくまでも本筋へのトリガーであって王族事件の真相を解明するわけではないのね(^_^;)
ミステリーとしては割とシンプルなストーリーでオチも想像がつく。しかし舞台設定も面白いし、日本人にはなじみのない国の世界情勢、ジャーナリズムのあり方など色んな角度から考えさせられて奥の深い作品になっている。
初読みの作家さんだったけれど、面白かった!
話題作となった「満願」をはじめ他の作品も是非読んでみたい。 -
報道する側とされる側。
ミステリーでありながら、ジャーナリズムの在り方について深く考えさせられた。大きな事件ばかりを大々的に報道しているが、もっと目を向けるべき事はたくさんある。だけど安易にサーカスにしてはいけない。
初読みの米澤穂信さん。
難しそうな本を書いている印象で敬遠していたが、語彙力と情景描写に長けていてとても読みやすい。是非他の著書も読んでみたい◎
【2016年 本屋大賞6位】 -
買う前に、Amazonで書評をつらつらと読んだら、イマイチみたいな書き込みをしている方が意外に多くて心配だったけれど、読み始めればそんなの吹っ飛んだ。
個人的にはとても面白くて、好きな作品だ。
カトマンズの街並みや喧騒、時々出てくるチヤの味まで、読み手となるこちら側にリアリティがあって本当に現地にいるような錯覚になれた。
史実とフィクションの掛け合いがとっても素晴らしく、結末はビター。でもこの物語の本筋はフリーのジャーナリスト 太刀洗 万智が遭遇する出来事を通して、報道する側とそれを受け取る大衆へのアンチテーゼなんだと感じる(詳細はネタばれになるので、ここでは伏せておく)
私はこの本の14章"ハゲワシと少女"に、その全てが集約されているように思えた。
特にここ数年、スマホの普及率やSNSの躍進によってファストフード感覚で情報を手にできて、何なら 自分から発信することも、いとも簡単に出来るようになった。
それが当たり前になって麻痺しかけている今、物語の内容が持つ本当の意味は大きい。 -
「このミステリーがすごい」2016年度第1位。前年「満願」に続く2連覇は日本人作家として初。米澤氏を名実ともにトップミステリ作家へ押し上げた記念作と言えよう。
結論から言えば大傑作であり、氏の創作の歴史の現時点での集大成とも感じられた。このミス1位に文句はつけれれない。
読み始める前に、ある情報を得ていた。今作の主人公フリージャーナリストの太刀洗万智が初めて世に出た「さよなら妖精」が、wikiによると氏の知名度を上げた「古典部シリーズ」の完結編として構想されていた、ということ。これには驚くとともに納得もしたのだ。
「古典部」で描かれる青春の煌きと「さよなら妖精」の青春の挫折は、相容れないながらも、その存在は表裏一体であり反転しうるモノであると考える。奉太郎の進化形とも、千反田の進化形とも思える「太刀洗」が10年以上の時を経て、どのような存在感を持って読者の前に現われたのか?個人的注視ポイントである。
物語の背景には「ネパール王族殺害事件」というセンセーショナル直下の、2001年のカトマンズが選ばれた。フリージャーナリストとして「取材」という行為を通して事件に臨む太刀洗の前に、新たな殺人事件が発生し・・・
多くの登場人物がいるわけでもなく、適切な個性と適切な伏線が微妙に絡まり、読了してから「散らされたヒント」にも気づく。ミステリとしての構成は米澤氏が守り続けている本格派と言える。僅かな時間の中で太刀洗が辿り着いた真相は、読者をも唸らせ、ヒロイン太刀洗にとっても痛切なものであった。
今作が優れていると思える点は、より一層洗練されたミステリ構造や伏線等でなく、ジャーナリスト太刀洗が苦悩し、何度も反芻する「ジャーナリズム」について、大きくページを割き、彼女の行動と心象を常に「ジャーナリストとしての自分の行動原理」に照らし合わせて、読者に語りかけている点である。と思う。
米澤氏の今まで見られなかった社会派としての側面が、異邦の地での物語と融合し開花したと思える。ヒロイン太刀洗の人物造詣が、古典部の発展形として生まれた「さよなら妖精」を出自としていることからも、米澤氏の中で、どのような紆余曲折を経て編み出されたのか?興味深く思う。
太刀洗万智は米澤氏の新たなシリーズの主人公であり、次作短編集「真実の10メートル手前」は上梓されている。これも非常に楽しみである。
ますます活動が幅広くなる米澤氏であるが「小市民シリーズ」の完結を最も待ち望んでいる。 -
面白くて一気に読み終わった!舞台はネパール カトマンズ、行ったことも見たこともないけれどまるで自分も居るような臨場感を味わいながら楽しめた。新聞社を退いた女性記者が縁あってとある雑誌社の企画で出向いたネパールで王族の悲惨と殺人事件に遭遇し記者魂が湧き起こる。事件は思わぬ展開となり目が離せなくなる。終盤はちょっと弱いかなぁと感じたけれども、面白さに引き込まれて止まること無く読了した。ラストの二転三転 毎度 うまい!
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'21年4月21日、読了。
面白くて、楽しんで読みました。でも、以外と時間がかかったかな。じっくり読んだ、という感じです。
「さよなら妖精」の大刀洗さんの物語だけど、著者も「あとがき」で言っているように、あまり繋がりは無かったです。でも、これはこれで、とても良い小説と思いました。
記者として、というのは僕にはわからないけど…自分の立ち位置、自分という存在の意味を、ネパール王室の事件を取材しながら探っていく大刀洗さんに、「共感」できました。
「共感」に振り返らされて…僕自身も、ずっとそれをしながら、自分の再発見、再認識を繰り返しながら生きてきたんだな…そんなふうに、読後、改めて意識しました。「梵天勧請」のエピソードのところ、唸らされました。
でも重い感じではなく、ちゃんとミステリー小説としての醍醐味もあって…ますます米澤穂信さんが好きになりました。次は、何を読んでみようかな…。 -
ベルーフ(大刀洗)シリーズ
新聞社を辞めた太刀洗万智はフリーとなり、海外旅行特集の取材のためネパールに。まもなく、ネパール王族殺人事件(ナラヤヒンティ王宮事件)が起こる。情報を集めようと取材を開始するが、彼女と会った王宮警備の軍人が何者かに殺害される・・・
実際に起こった事件が舞台となっていることに途中まで気付かず、当初は真相を暴くミステリーかと思っていた。ジャーナリズムの正義とは何なのか?マスコミは誰のために何を伝えるのか?ミステリー仕立てに進むが、オチというか動機はいい意味で裏切られた。 -
小説家というのは職業名であろうか?
または、想像の翼を持ち、実像の追求を怠らず、読者へサービスしてくれる人をそう呼ぶのだろうか?
この作品の主人公「大刀洗万智」は、「記者」であり、それを「わたし」と作者は書く。
そして、読者も「作者=わたし=記者=読者」という気持ちにさせられる。
2001年6月のナラヤンヒティ王宮事件と、関係有りや無しやの殺人事件。
読み応えたっぷりです。