賢者の石 (創元推理文庫 641-1)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488641016

作品紹介・あらすじ

死の問題にとりつかれた一人の青年が永生を夢みて不老長寿の研究を始める。研究は前頭前部葉の秘密に逢着し、彼は意識をほとんど無限に拡大し、過去を透視できるようになる。パラドックスを伴わない真の時間旅行がここに初めて実現する。だが意外な妨害が……。『アウトサイダー』の著者が描く、壮大な人間進化のヴィジョン。訳者あとがき=中村保男

感想・レビュー・書評

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  • 丸善の150周年の帯が目に付いたので購入

    圧倒的な文字量!
    通常の小説よりも小さい文字と、ほぼ改行無しのページが捲る度に読み手を襲って来る!
    生半可な気持ちで読むと大変な目に遭います!


    SFという括りになるのでしょうが
    文学、音楽、歴史学、神秘学、考古学そして哲学など幅広いジャンルを巧妙に一冊に纏め上げる!!!

    主人公達が時間旅行により人類の謎に触れようとする時・・・
    謎の力が蠢く!

  • ラヴクラフト批判に対するオーガスト・ダーレスの言
    ――「だったら自分で書いてみたら」を受けてコリン・ウィルソンが執筆した、
    クトゥルー神話に則った空想科学怪奇小説。
    原題は The Philosopher's Stone で、
    敢えて直訳風な邦題にしたが、正確には化金石を指す――と、
    訳者あとがきにあり。
    化金石とは、
    錬金術に用いられる、卑金属を金に変ずると信じられた想像上の物質。

    Ⅰ.絶対の探求
     学究の徒ハワード・レスターと地元の名士アラステア・ライエル卿の交遊。
     ライエル卿の死後、ハワードは時の流れと長命の関係について思索。
     心理学者ヘンリー・リトルウェイの屋敷へ招かれたハワードは、
     生理学者が発見した合金を脳に埋め込む手術を受ける。

    Ⅱ.夜の涯への旅
     ハワードは合金が前頭葉にもたらす刺激をコントロールし、
     「時間透視」の術を体得。
     リトルウェイ邸に保管されていた玄武岩の小立像から
     邪悪な気配を読み取ったハワードは、
     背後に横たわる「大いなる秘密」の存在を察知し、超古代史の解読に挑む……。

    縄張りに引き籠もって、
    ただひたすら自分にとってオモロイことだけを追究しようとするオタク青年の話。
    外科手術と精神の鍛錬によって、時空間を超越した「透視」能力を獲得し、
    見てはいけないものを見てしまうわけだが、
    上手い具合にラヴクラフトのパスティーシュとして成立している、と言えるかも。
    読んでいて一番驚いたのは、
    そんな朴念仁な主人公が意外にちゃっかり恋愛まで成就させてしまうことだったが、
    個人的に最も強烈な笑いのツボとなったのは、序盤、
    ツングースカ大爆発の現場を訪れ、

     どこか別の銀河系から飛来した宇宙船が爆発したのであろう〔p.26〕

    などと考えるくだり。
    vivaコズミックホラー(笑)!

  • 読者を選ぶ作品だと思うし、これを単純に小説と呼んで
    良いのかという問題はあるが、私は嫌いではない。劇的な
    展開があるわけではないが、史実と虚構とをない交ぜにして
    衒学的に進められる内容はとても興味深く、最終的に実に
    壮大な人類史を展開してみせる一級のエンターテインメント
    だと言っていいと思う。前から聞いていた通り、荒俣先生を
    思わせる内容だったな。

    しかし白状しておくと、読後に最初に思ったのは「この内容
    ブライアン・ラムレイなら数ページで終えてとっとと戦いに
    向かうな」だった(苦笑)。

  • 脳外科手術で精神能力を拡大し真実を理解する、今だど怪しさを感じる展開
    映画『スペースヴァンパイア』原作者とは驚き

  • 非常に面白い本です。SF小説ではありながら、ストーリーの中身は哲学的思想的な内容であり、人類発祥となる太古の時代にまで遡ぼります。少し宗教チックなストーリーとなっていますが、時間旅行と著者は言っておりますが、意識を無意識層にまで広げ、そこから過去の時代まで内的鑑賞を行い、太古の時代の文明、あるいは人類の先祖の発祥の元となる太古の人類にまで無意識層の中で実際に見ていき、その内容について論じると言うものです。この本は人類が未来になさねばならない尊い崇高な目的や方向性、あるいは進化していく方向を示唆している本であり、小説の面白さもありながら哲学的思想的に考えさせられる内容ともなり、読み応えがある本ではありますが、内容が面白いために一気に読むことができます。

  • アウトサイダーの著者によるSF。(再読)

  • ハリー・ポッターでもなければハガレンでもない。ドラクエ3でもなければMSXのカシオゲームでもない。1969年刊、コリン・ウィルソンのSF小説。
    長寿の秘訣に興味をいだいたインテリ青年が、仲間を得て大脳生理学の研究へと事を進め、とある発見により無限に広がる意識の拡大を体験する。そこから過去への幻視が始まり、人類より前から存在していた肉体を持たない知的生命の存在に気づき、その秘密に迫っていく……。
    470ページに小さな文字がギッシリの文庫本にたじろいでいたが、一人称の文体は読みやすく、筋書きにも興味が途切れず一気に読めた。ラヴクラフトの「ネクロノミコン」や都市伝説界隈で有名な「ヴォイニッチ手稿」からムー大陸文明へと話がつながっていき、オカルト好きにはたまらないと思う。人類の意識の進化というテーマにおいてスピリチュアル性も高く、たくさん読書メモをとった。きっと何度も読み返す本。

  • 伊藤政則氏のおススメ小説だったが絶版。ブックオフ新宿東口にて購入。

    氏も書かれていたが、難解な小説。どこまでが真実でどこからが創作なのか分からない。解説には思想小説とあったが、主人公の手記の形式を取っているので、小説とも言いづらい。

    脳の外科手術、ネクロノミコンとラブクラフト、ムー大陸のほか、その手の話がいろいろ詰め込まれている。

    今の自分の知識では楽しむというよりも読み通すのがやっとだった。

  • 品切れだったコリン・ウィルソンの長編が、丸善150周年記念事業の一環として復刊。記念事業のラインナップにコリン・ウィルソンというのが面白い。
    クトゥルー神話に基づいた長編として知られるが、読んでみると、ラヴクラフトよりアレイスター・クロウリーに近い気がした。

  • SFだと思って読んだんです。
    けど序文があって、同じ文体で本文に続いているので、しばらく小説がはじまっているのに気が付かなかった。
    いつSFになるのかな~、って思って。

    だって主人公、絶対作者だって。
    小説だったって気が付いてからも、ちょいちょい作者と主人公がだぶる。
    とにかく本を読んで思索にふける。本を読んで思索にふける。本を読んで思索にふける。
    折々に出てくる考察は、ほぼ作者の声にしか聞こえない。

    「小僧の神さま」における志賀直哉の神さまっぷりと同じくらい、天の声としての作者が神なので、今後コリン・ウィルソンのことを「賢者の神さま」と呼んでもいいくらい。

    とにかく文体がSFじゃあないんです。
    血沸かないし肉踊りません。
    翻訳も古いです。
    アズテック人→アステカ人
    クソロー→クトゥルー   など

    けれども知識がの広がりを感じさせること、思索の深さを感じさせること、それらがなんと喜びに充ちたことであるか。
    歴史や地理、文学、音楽、美術、数学、物理学、生物、天文学、博覧強記の作者だから書ける、あらゆる学問への志向。
    わくわくします。

    しかしどうでしょう。
    全てが脳の働き=論理的思考になるのなら、感情すらも脳の電気的反応に過ぎないのなら、真実とか善きこととか美というものは、いったい何?
    脳の反応の結果?計算の結果?
    反応が計算できるものならば、機械にそれをやらせることもいつかは可能なわけで、では人間が人間である意味は?
    なんてことを考えながら読んでいました。

    人間が神様や絶対君主を求めるのは、基本的に精神的奴隷体質だからという考え方に思わず納得。
    誰かに指図してほしい。従いたいというのは、分かりますね。
    ドレスローザの人たちみたいに。

    テーマは面白かったけど、今の訳なら無理に読まなくてもいいかも。
    少し冗漫な気がしました。

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著者プロフィール

"コリン・ウィルソン
1931-2013
英国、レスター生まれ。
16歳で経済的事情により学校を離れ、
様々な仕事に就きながら執筆を続ける。
1956年、評論『アウトサイダー』を発表。
これが大きな反響を呼び、作家としての地位を確立。
主な著書に『殺人百科』(61)、『オカルト』(71)など。




"

「2019年 『必須の疑念』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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