なぜ会社は変われないのか: 危機突破の風土改革ドラマ

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (468ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532192044

感想・レビュー・書評

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  • まあこの手の小説、実用性はともかくわかりやすい勧善懲悪なので嫌いじゃない。三枝さんのは普通に好きですが。

  • 親会社べったりで業績もじり貧にある自動車部品メーカーが、
    企業文化・風土の変革に取り組む中、突然の経営危機に立ち向かう内容。

    自動車業界のことを勉強した後だと、完成車/部品メーカーの関係、
    経営危機対応の切り札となるエンジンの話には、おぉっ!と引き込まれます。

    企業文化・風土変革の話も、物語調にすることで変化の推移が上手く分かり、
    非常に考えさせられるところの多い本でした。


    ①組織の肥大化と老成化
    ・戦略や組織体制/制度を変えても変えても会社は変わらない。
     それは、それらのベースになる企業文化・風土が変わらないから。

    ・お互いに牽制し合いながら強調する組織になると、企業文化・風土が安定化し、
     その中で不活性化が進むと同時に、人は危険やリスクを回避するようになる。
     (そういうリスクを冒すものは淘汰される会社となるため)
     つまり、決められた枠内で仕事を安定的に処理できる人間や、その枠の中で、
     フルに力を見せられる者が評価されやすい。
     (どうせ言っても無駄、言いだしっぺが損する組織へ)

    ・こうした文化・風土を変えるためには、戦略や組織/体制ではなく、
     インフォーマルな関係が構築される環境を整備し、少なくても誰かに何かを
     相談できる、言いだしっぺが一方的に損しない状況を作り出す必要有。


    ②まじめな雑談
    ・会議の機能は大きく4つ
     A:通達・連絡・伝達(対多数可、要する時間は短)
     B:意思決定・調整(少人数の方がいい、会議でなければ短時間のことが多い)
     C:セレモニー(人数は関係なし、その後を円滑に進めるための手続き/アリバイ作り)
     D:知恵出し(大人数では不可能、信頼関係構築を含め時間を要する)

    ・「知恵出し」は結果を求めるフォーマルな会議には馴染まない為、
     オフサイトでのミーティングが適している(=まじめな雑談)。

    ・「普通の雑談」は、愚痴や評論に終始。前向きな話にはならない。
     「まじめな雑談」は、言いだしっぺが損しない文化・風土の下で、
     衆知を集める場。

    ・「まじめな雑談」実施のポイントは、どういう形で集まるのか(発起人は誰?)、
     席の配置をどうするか、最初の目的をどうするか(いきなり大上段は避ける)。


    ③衆知を引き出し、意思決定のスピードを上げる組織へ
    ・環境変化が激しく、マネジメントに求められる幅も広がる中、
     一人の有能なマネジメントが遂行者として機能するのは限界。
     多くの部下の個性と能力が機能することに価値を置く環境へ変化する必要有。
     (自分の周りにいる人の能力を可能な限り発揮させることがマネジメントの役割)

    ・そのためには、意思決定を細かく分解して現場にまで落とし、
     意思決定を行ったものが、その責任を全うする認識を共有することが必要。

    ・その際、上司は誰に意思決定させるかを「決定」し、その「決定」に対して
     責任を全うする。意思決定を任された担当は、意思決定者として、自分の責任で
     意思決定を行い、最後までその責任を全うする。

    ・意思決定者を増やす中で、意思決定の方向性を統一させるために必要なものが、
     会社レベルでいうと経営ビジョンや行動規範といった、優先すべき価値観の共有。

    ・自分の責任で判断して失敗するのは、最高の教育機会。
     リスクをミニマイズするため、優先すべき価値観を共有する共に、
     進捗状況や個別意思決定の内容を周りとも共有する。


    ④その他
    ・ゆとりがないといい仕事にならないが、ゆとりを作る知恵も働かせられない。

    ・上から降りてくる話は「決まった話」で、何故そうなったかの事情がわらかない。
     お前らは知らなくていいという態度が不信を買うし、部下の主体性を奪う

    ・日本の場合、1つ上のレベルの管理者が、実際の中身を知らないままに、
     形の上での決定権を持っていることが多い。
     (上司(決定者)には、自分が決定した、責任を全うするという意識が希薄に、
      部下には、これは自分の決定ではない、自分の責任ではないという事態に)

  • 話し合える関係が大切。
    そのための場の設定、雰囲気作りが、キモ。

  • 実在の話が元ということで非常にためになった。本書の中で出てくる「気楽にまじめな話」というのが非常に重要だと思う。少しずつ実践しているが、なかなか難しい。

  • ストーリー仕立てで企業変革を描いているということで読みやすかったんだけど、「ザ・ゴール」や「ザ・ファシリテーター」などと違って軸となるような手法や論理があやふやだったため、単なる読み物に近くなってしまっているのが残念。結局「まじめな雑談」と「オフサイトミーティング」すればいいんでしょ、という感じになってしまうが、実際にはもっと細かい仕掛けが色いろあるはずなわけで。まぁもちろん、会社の業務が上手く運ばないのって上司と部下だけなく部署間での対話が足りないってことだったり、個人のメンタリティに依存する部分って大きいからこういう仕掛けをするだけでもだいぶ変わるというのは同感ですが。

  • 小説仕立てで読みやすい。「言い出しっぺが損をする」「社員のモチベーションが上がらない企業風土」等を身にしみて感じている方が読むと面白いと思う。

  • どの会社にもほぼ普遍的に当てはまる企業の「風土」問題を小説スタイルで誰の目にも見える形であぶり出した名著。
    何でこの本と出逢ったのか思い出せないくらい前からの積読ですが、毎回読む度、気付きがある。

    以下ハイライト覚え書き。(抜き書き量多めにつき注意)
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    『何に対しても不信感が根にあると「ばかばかしくてやってられるか」と思ったり「言うだけムダ」だとか「言い出しっぺは損」だとか言う気持ちが先に立って、何かをやろうという気にならない。」

    『そこには「前例を大切にする」「上の顔色を窺い読んで期待に応える」「いつも『頑張るぞ』と言い続けて前向きの発言を繰り返す」「上の移行には直に反応し、下には厳しく取り立てる」というような管理職が次第に増えてくる。
    そういう環境下では、人は問題を見つけても「自分だけが言っても仕方ないからあきらめるか」「解決するために努力をしようか」をてんびんにかけて考え、前者を選択することが多くなる。』

    『「上の人間には、下が変わるのは大いにけっこうだけど、自分たちが変わるのは別問題という守りの意識が強いね』

    『たとえば自分の頭の中で考えないで上の言うことを”何となく”理解して、言われたままに行動している。・・・(中略)・・・つまり責任を持って意思決定しなくても事が運ぶ社会だったわけですね。』

    『・・・自分の思い通りに部下を動かそうとするタイプの管理職はどういう結果をもたらしやすいか。・・・(中略)・・・彼から見たら不十分な部下たちはどう見ても厳しく管理する対象でしかない。・・・(中略)・・・みんな考えることをやめてしまって指示待ち人間になる。それでもそこそこ結果を出せるから、自発的に現状を良くしてゆこうと動きを起こす根本的な改革のエネルギーはそこからは生まれにくい。』
    『なぜなら自分自身はどんな環境の中でもそれなりにやってきたと自負しているし、できないのはそいつの問題だとしか思えないからである。』

    ーーーーーーーーーーーーーーーー
    「やらされでの改革」はあり得なく、「不安定さの上の互いの信頼」と「共有された判断基準」で、『それぞれの個は自律的に動いているが、全体としては秩序がある』状態が望ましい、と柴田先生は説きます。

  • この「協力し合う」という了解事項が、しだいに「強調しあう」ことに変質しやすいのが組織、特に日本的組織の特徴でもある。
    不安定な状態というのは別の面から見れば活性化した状態でもある。
    お互いに牽制しあって「余計なことは言わないほうがいい」と安定している状態を、「お互いに言うべきことはいいながら協力する」という不安定な状態にしていく事が、風土・体質改革の中身なのだ。
    「話し合う」といっても普通と違うのは、むしろ「聞きあう」ことをだいじにするということである。
    「新しい情報はそれがどこから来る情報であっても虚心で耳を傾ける」姿勢をどれくらいもてるかで老化の状態を評価する事が出来るとワタシは考えている。
    二割の社員が変わればよい。
    土壌を無視したそういうセカンド発進は不得意だけど、土壌さえ良ければ本当は仕事が出来るというのは数多くいる。
    P314
    今の時代は特に状況が変わりやすい。だから、間違ったり失敗したときの修正・回復能力というのが実はすごく大事なんだと思います。
    一人にならないことが大切。周りの人も、その人を一人にしないで助ける。
    P319
    本来、下のレベルで判断すべき案件を、上にお伺いを立てるということがいつも行われていると、待ちの姿勢が蔓延し、意思決定の能力を持つ人間がいなくなってしまう。
    322
    「こうなりました」という結果の情報をオープンにするだけでなく、「プロセスがどうなっているのか」という情報も常にまわりに伝えるようにする、という努力が必要である。
    323
    「みんなで議論した上で」責任を持ってフォローする者が最終的に独りで決める。
    326
    「自分の責任で判断して失敗する」というのは教育の中でも最高の教育なのだ。
    327
    これに対して責任の所在のはっきりしない失敗は単なるロス

  • ● 「仕事の目的」「人生の目的」「企業の存在価値」「何を目指して仕事をするのか」という高い志を共有しないと互いに信頼しあえる仲間はできない。

    ● 「気楽にまじめな話をする場」が必要。こういう場を設定するときは、中心となるメンバーにしっかりした準備が必要。その場で何を目標とし、どういうふうにその先を作り上げていくか。

    ● みんな上の人間が悪い、若い連中がだらしないと、「だからどうする」という姿勢がない。評論家ばかりで当事者がいない。

    ● 改革のベクトルを作る前に会社と社員に深い意識の溝がある。トップダウンのやりかただと、社員に押し付けになる。やらされる側は大変だから適当になる。社員の気持ちが離反する。社員には自分のためにやる改革という意識が必要。

    ● トップがどれくらい本気なのかを社員に見せないと改革できない。計画を立てるのは簡単だが、新たな行動として、展開させるのは難しい。

    ● 言っても無駄だとか、よけいなことは言わない方がいいと安定した状態を、お互いに言うべきことは言いながら協力するという不安定な状態にしていくことが風土・体質改革の中身。

    ● ゆとりがないと、いい仕事ができない。(考えられない)

    ● 相談しあえて、問題意識を共有できる仲間がいるということがわかれば、一緒によくしていこうという動きが生まれる。

    ● 総論では賛成でも各論で反対は多い。無理に説得せずに、環境が変われば考え方が変わる人は多い。

    ● オフサイトミーティングでは、まとめることをノルマ化しない。発散させればよい。

    ● オフサイトミーティングの前には自己紹介するなど、心をの枠をほぐす。自分のことをいっぱい話す。

    ● 共通の知識を前提として話し合いをすると議論の質が高まる。例えば、参加者に議論したい内容の本を読んでもらう。

    ● 部下を動かすタイプの管理職は、部下は考えることをやめてしまって指示待ち人間になる。そこそこ結果は出せるから、現状を変えようという動きは生まれにくい。こういう人が上に立つと、組織はその管理職以上のレベルの成果は出せない。

    ● 「責任」という概念が、人が組織の一員になって機能するための中心概念。ただし、一人が抱え込まないように、衆知を集める場を作る。

    ● 判断ミスはあるが、自分の責任で判断して失敗するというのは最高の教育。こういう本気の失敗は若いうちにさせておくのがよい。

    ● 統一的な価値判断の基準を組織全体で共有することが重要。

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著者プロフィール

株式会社スコラ・コンサルト代表
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。大学院在学中にドイツ語語学院を始めた学生起業家のひとり。30代の頃にはNHKテレビ語学番組の講師を務めるなど幅広い経験を持つ。ビジネス教育の会社を設立後、企業風土・体質の改革に独自の手法を考案し実践している。

「2020年 『なぜ、それでも会社は変われないのか 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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